出世ごはん

デキるビジネスパーソンはこんなお店で食べている! 元銀座のホステス&開運アドバイザーの藤島佑雪が、かつての同伴その他の経験から見極めた「出世する店」を「おいしい理由」とともにご紹介!

No.43 デキる部下を育てるメンターを目指して、食べ方指導が入る店へ!

あーどうして? ひょっとして昔の自分もこんなにできなかった? まったく今の若者は……。聞こえます、聞こえますよ〜。デキるビジネスパーソンのみなさま方の、デキない部下への嘆きの声が。

 

デキない部下にはざっくり言うだけじゃダメなんですよ。1言われて、1をきちんと遂行すること自体が彼らには難しいんです。で、わたくし思うんです。そんな彼らがデキない責任の多くは、実は上司である側の指導力にあるんじゃないかって。

 

ちなみに、デキるレストランって、お客さまを育てるのが上手なんですよね。まず、料理を「おいしい」と言えるお客さまに仕立てるのがうまい! お客さま側からすると「おいしい」からこそ、お店への敬意が芽生えて、いってこいのいい関係が築けるようになるわけですから。

ブラックでキメた内装がいかにも六本木! 串を刺さない焼き方で、地鶏の希少部位をちょっとずつ出してくれるのが嬉しい。より濃厚な指導を受けたいときは、お酒のペアリングと合わせて! 出典:bottanさん

たとえば、六本木にできた焼鳥の「炭火焼処 ひらこ」さん。宮崎で養鶏場を営む方が店主をされていますから、鶏肉のクオリティは言わずもがな。通常、約50日で出荷するところを1年かけて育てた名古屋コーチンの純血種は、噛むほどに旨みが増すような鶏肉なんですね。これを熟練のテクニックで焼くと。多くの焼鳥屋さんではそこからは、お好きに召し上がれという感じになるのですが、こちらでは細やかな食べ方指導が入ります。「わさびをたっぷりつけて」なんかは序の口、ペアリングで出すお酒と一緒に「このお肉は、このお酒を噛むように飲んだ後に」みたいな調子がずーっと続くんです。

 

この手の、メンター系レストランを嫌う向きがあるのも承知しております。でも、ですね。そのお店の料理を誰よりも知っているひとの言うことに従えば、同じ料理がさらにおいしく感じられるわけですし、また、お店のほうも理想の状態で自分の料理を食べてもらうには、細やか指導のメンターにならざるを得ないってことも、わたくしはすごく理解できるんです。わたくしも苦労しましたから。後輩のヘルプホステスの教育もそうですが、それ以上に銀座のクラブのしきたりをご存じないお客さまに、もっとお店を楽しんでいただきながら、マナーと支払いのいい紳士に育てるって、かなり根気が要りましたからね〜。ともあれ、客商売では自分の、お店のファンをつくるためにお客さまを指導し、ビジネスの場面では、自分が楽できるように部下を育てることが重要なわけです。

大阪発祥、串揚げ×ワインの草分け的なお店。初回は串が指し示す調味料でいただくのが吉。オリジナルのソース類もおいしくて、むしろソースを味わうために串揚げを食べているというひとは、きっとわたくしだけではないはず! 写真:お店から

昔、大阪発祥の高級串揚げ店「銀座 六覺燈(ろくかくてい)」さんに伺ったとき、うまいシステムだなぁと感心したのが、串の置き方。シェフが揚げたての串をお皿に置くとき、ソースや塩など特定の調味料の方向に串を向けて出すんですね。これはレモン汁に、こっちは塩に合いますよ〜というサジェスチョンを出してくれるわけです。いや、これ、ありがたいんですよ。何度も来て、慣れていればいいですが、初めてだったりすると、レンコンの挟み揚げは一体、何をつければいいの? って迷いますから。たかが串揚げ、されど串揚げで、1本の串揚げをベストの状態でいただきたいときに、道筋を示してくれるって、ホッとするんです。初見のお客さまとか、デキないひとって、赤ちゃんと一緒だと思うんです。まっさらな状態で、どうしていいかわからないんです。上司から見たら、なんで? と思うことでもわからないし、自分に自信がないんです。だから、最初くらいはきちんと方向を示して導いてあげるって大切なんですよね。

1893年に創業。第二次世界大戦の東京大空襲で、井戸に隠して損壊を逃れたお皿が現役で活躍してたりもします。現在の中治勝さんで四代目という歴史が、数々の指導に説得力を与えてもいます。 出典:ぴーたんたんさん

蒲田の名店「初音鮨」さんは、もしかしたら食べ方指導を、エンターテインメントにまで昇華させたことで評価される稀有なお店かもしれません。まず、最初にできたて、ホカホカのシャリが一口出され、店主から温度が下がり、時間経過で味が変化するというシャリ講義があり、一品一品、ネタの説明もされます。そして、なんと全握り、手渡し。ハンド・トゥ・ハンドなんですよ。で、5秒待たないと口に入れちゃいけない。これ、すごい指導なんですよね、実は。世の中のお寿司屋さんは「お客さん、特に接待のお客さんは、握りをすぐに食べてくれないから、パサパサに乾いちゃうし、そんなの食べてうちを評価して欲しくない」ってことで心を痛めてらっしゃる方が多いですから、そこを思いっきり解消する指導なんですよね。「5秒待たなきゃダメ!」って言われると、すぐに食べたくなるのが人情ってもの。そこをうまく利用して、放置されがちな握りを5秒後に口に運ばせるという、難易度の高い技を見事にキメていらっしゃるわけです。この技、ビジネスの人材育成でもぜひ、活用していただきたい! 少しでもご自身が楽できるよう、かわいい部下にお導きを!

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文:藤島佑雪