TOKYO HIP BAR vol.40
日本とポルトガルをつなぐ“鼠色カクテル”とは?
日本に初めて訪れたヨーロッパの国であるポルトガル。かつての日本にとって、数少ない親交のある外国であり、豊臣秀吉も南蛮から渡ってきたきらびやかな刺繍のビロードのマント等を愛用したなど、室町・安土桃山時代にはポルトガルブームが起きていたとも言われています。
時は巡り、現在の日本にとってはどこか遠いイメージとなっているポルトガルですが、「絆」を意味する「リアン」という名のバーが、いまもポルトガルと日本の掛け橋のひとつを担っています。
「バー リアン」が取り扱うのは、ポルトガル領・マデイラ島の名産である酒精強化ワインのマデイラワイン。オーナーの関川洋介さんがマデイラワインに出会ったのはソムリエ試験の時でした。「酸化熟成という方法を使って作るマデイラは長期保存ができます。100年前のボトルが普通に飲めてしまうというのが、時代を旅できる感覚だと思い興味を持ちました」と関川さんは語ります。
以来大宮に拠点を構え、マデイラワインのバーとして知られた「バー リアン」が、今回7周年を機に東京に進出しました。
時代を超えるというコンセプトから、象徴的な存在となっているのが店内にある盆栽です。大宮に店舗を構えていた縁から繋がった盆栽師・平尾成志氏の作品で、時代の流れを感じさせる大型のものから、これから刻む時間を感じさせる小型のものまで、盆栽が随所に置かれています。
また、ポルトガルと日本を繋ぐ意味から、入口は障子に見立てたヴィンテージのタイルと暖簾という和の要素が飾られ、バックバーにはポルトガルの古城のセラーのようなフェンスや、ポルトガルのタイル、アズレージョがはめ込まれています。
ポルトガル生まれのワインに
江戸時代の流行色をミックス
そしてカクテルでこのコンセプトを継ぐのが、マデイラワインに狭山茶を合わせた「利休鼠(りきゅうねず)」です。甘口のマデイラワインに狭山茶の粉茶を溶き入れ、メイプルシロップを加えてシェイクして完成します。
「マデイラにお茶が合わさると“利休鼠”という日本の伝統色になります。江戸時代後期の流行色で、緑色がかった灰色の侘びた色が千利休好みの色と想像されたもの。利休にちなみこのカクテルはマデイラの複雑な味わいにお茶を合わせたものです。マデイラは日本の食材とは馴染みがいいんですよ」(関川さん)
マデイラワインの良さは、甘みや渋み、苦みなどすべての味覚があるようなところ。そこにお茶が加わることで複雑さが増し、きっと利休も愛したであろうシンプルで完全な味覚の世界が器の中で完成します。
古い年号のボトルを眺め、その時代を想像するのもまたバーらしいお酒の楽しみ方です。熟成したマデイラワインとともに悠久の時を「バー リアン」でお過ごしください。