TOKYO HIP BAR vol.38

恵比寿のモダン横丁で愛される、氷なしハイボールの正体

戦後からの流れを引く渋谷のんべい横丁や新宿のゴールデン街から、テーマパークのような恵比寿横丁まで、世代を問わずに人気のある日本の横丁。リア充の女性とローカルのおじさん客、そして外国人観光客までもがゆるく交流できる場所として“横丁ルネサンス”という言葉が生まれるほど、その人気は定番化しています。

出典:はるぽん9さん

 

レトロな雰囲気が魅力の横丁ですが、新たな流れとしてでてきた“モダン横丁”のなかで、象徴的なのが恵比寿ガーデンプレイスにあるBRICK END(ブリックエンド)です。

 

ガーデンプレイスと同じくレンガの設えのお洒落な横丁には、恵比寿にゆかりある名店が中心に集められており、和食屋さんからスナックまで、4店舗が軒を連ねます。BRICK ENDのENDには恵比寿ガーデンプレイスの端の意味と、1日の最後に楽しみに来てほしいという意味がかけられているそうで、このブリックエンドの中でもっとも奥に位置するのが「MUSIC BAR berkana」です。

窓ガラスに設置されたバックバーから見えるのは山手線の線路。慌ただしく行き交う車両を見下ろしながら、現実からしばし離れて一杯を味わうことができます。店内はバーマスターの森山裕之さんがセレクトするボサノヴァやジャズがレコードからいい音で響きます。「berkana」の語源は古代ルーン文字で「再生と成長」を暗示する言葉。新しくも懐かしい雰囲気あるこちらには、横丁らしさを背負ったあるカクテルが用意されています。

老舗バー発祥の飲み方を

独自のアレンジで軽めの仕上がりに

 

そのお酒というのが“氷なしのハイボール”です。なぜ氷なしにするかというと、氷で味が薄まらないから。その代わりにボトルやソーダを冷やすことで冷たさを出し、ウイスキー本来の味わいを楽しむという極めて男らしいハイボールです。

 

この飲み方は今年で創業100年を迎える神戸で創業した老舗バー「サンボア」に端を発するといわれています。氷が貴重だった当時は氷を使えなかったからという理由もあったようですが、ウイスキーがダブルで入り、最後まで薄まらないハイボールは昭和のおじさまたちを支える存在だったようです。今も「神戸ハイボール」と呼ばれ神戸エリアでは多くのバーで親しまれている飲み方ですが、東京でこのスタイルで出しているのは銀座の「サンボア」をはじめ数店舗のみというとても貴重な存在です。サンボアではサントリーの角を使うのが伝統ですが、「MUSIC BAR berkana」ではスコッチウイスキーが使用され、今時の軽い口当たりに仕上げられています。

 

平成が終わろうとするなかで、昭和の遺産的なハイボールをモダンな横丁の中で味わうのは、時代が倒錯するような不思議な感覚に。レトロとモダンが融合する新型横丁で、ジャパニーズスタイルのハイボールをどうぞお楽しみください。