〈食を制す者、ビジネスを制す〉

みんなが好きなカツカレー

先日のテニス全米オープンで優勝した大坂なおみ選手の表彰式でのスピーチには感動した。会場での激しいブーイングの中、「みんなセリーナを応援していたのはわかっている。こんな試合の終わり方で残念です(訳が物議を醸しているが、こちらにさせていただく)。試合を見てくれてありがとう」。憧れのセリーナ・ウィリアムズ選手を気遣った謙虚な言葉は、こちらもテレビで観ていて自然と涙がこぼれてきた。

そんな感動とともに、試合後の記者会見での言葉も印象に残った。「今朝もサーモンベーグルだったけれど、もし好きなものを何でも食べていいなら、トンカツ、カツ丼、カツカレー、抹茶アイスクリームが食べたい」。大坂選手は大阪生まれだが、3歳のころにアメリカに移住している。それだけに食生活もアメリカナイズされていると思うのだが、一番食べたいものに「トンカツ、カツ丼、カツカレー」を挙げてくれるなんて! こちらも日本人らしさを感じさせるもので、なんだかうれしくなってしまったのである。

そういえばと思い出したのが、今年9月2日(日)の日経新聞に載った坂本龍一さんのインタビュー記事だ。坂本さんは、記事中、がんの治療中に食事を満足に取れなかったことが特につらかったとして、いつも食べ物のことばかり考えていたという。そのとき、心の支えにしたのが、大好きなカツカレーの写真だったという。治療後、4カ月ほどして、やっとカツカレーを食べることができたときは本当に感動したと語っている。

商社マンのカツカレーを食べる速度に驚く

カツカレー。そう書くだけで、なんだか食べたくなってくる。しかも、食べると、力がみなぎり、勇気が湧いてくる。私もこれまで何回カツカレーを食べたことだろう。最初に記憶に残っているのは、小学生のころ、母親にデパートに連れて行ってもらって、最上階の大衆食堂でカツカレーを食べたときだ。学生時代には学食などで、ときどきカツカレーを食べるのが何よりの楽しみだったし、社会人になってからも、ランチで気合を入れるときはカツカレーにすることが多かった。皆さんもカツカレーを食べた記憶をたどっていくと、自分の歴史を振り返るように、様々なエピソードが思い出されるだろう。

 

男性でも女性でもカツカレーをペロリと食べる人を見ると、私はついつい尊敬してしまうクセがある。ついつい良い人だと思ってしまうのである。例えば、仕事で、ある大手総合商社の方々とランチ会食することになったときのこと。連れて行かれたのは、お客様向けの社内レストランだった。そこでみんなが注文したのがカツカレー。確か全員で5人くらいだったと思うのだが、大の大人が全員でカツカレーを頬張る姿は、なんだか微笑ましかった。しかも、そこはさすがに商社マン。こちらがカレーとトンカツをもぐもぐしながら味わって、やっと二切れ目を口に入れようとしたときに、目の前の商社マンたちはすでに食べ終わっていたのである。早食いが信条なのか。3口くらいでペロリと平らげてしまった感覚である。そこから会話をリードしつつ、様々な話題を提供し、ポイントを押さえた解説もしてくれる。目の前の人を緊張させないし、飽きさせない。すごい方々だなと素直に思ったことを覚えている。

カツカレーが食べたい!

カツカレーを食べるなら、やはりランチ時だろう。食べる時間もかからないし、お腹に溜まる。午後の仕事も元気に取り組むことができる。そこでお薦めしたいのが、神保町にあるカツカレーの老舗「まんてん」だ。「まんてん」のカツカレーの特徴は、何と言ってもボリュームがあって、おいしくて、安いことだ。カツカレーがなんと650円。ほかにもシュウマイカレーやウィンナーカレーもあって男の子が好きそうなメニューばかり。ランチ時は、学生やビジネスパーソンを中心に行列ができている。それでもカレーだから長時間並ぶことはない。待てば出てくるボリューム満点のカツカレーは必ず皆さんを満足させることだろう。

出典:サプレマシーさん

ちなみに「まんてん」から独立された方がやっているカレー店もある。中目黒にある「ぺろり」だ。中目黒駅から山手通りを五反田方面に10〜15分くらい歩いていくと通り沿いにある。小さな店だが、こちらもボリューム満点でおいしいことは言うまでもない。

出典:akiraokawaさん

そして忘れてはならないのは、カツカレーのあとのコーヒー。激しくカツカレーを食べたあとにはコーヒーで口を落ち着かせるのが一番。カツカレーを食べてコーヒーで〆る。そうすると、何とも言えない幸福感を感じることができる。日本人ならカツカレー。ああ、そう書くと、また食べたくなってきたぞ!