定食王が今日も行く!Vol.37

行列してでも全メニュー制覇したい、5代続く老舗定食店!

暗闇の中、定食に大行列!

東大生、外国人、地元民が集う

 

定食といえばランチのイメージだが、夜に一杯やりながら定食を食べるというのも、なんとも贅沢な休日の癒やしである。今回紹介する「菱田屋」は東京大学の仕出し屋として創業して100年以上だそうだ。今も駒場東大前にあり、平日は地元の学生たちを中心に常に賑わっている。土曜日は残念ながら夜の営業のみだが、ディナータイムになると、暗闇の中細い路地に多くの人が定食をめがけ行列している。

奥のテーブルでは団体客、カウンターでは一人定食を堪能するぼっち飯マスターたちやカップル、最近では外国人も多く見かける。

そのメニューの数は果てしなく。刺身に肉、揚げ物や、プルコギや豚キムチなど韓国風、中華料理店で修行したという5代目ならではの海老チリなどもあり、とにかく毎回メニュー選びに迷ってしまう。

店内には4代目のおじいちゃん、5代目のお父さんと、フロアを仕切る娘さんであろう3人のこけしが飾られている。淡々と黙々とハイスピードで、60種類以上ものメニューを作り上げる「阿吽の呼吸」、家族ならではのオペレーションは、もはや超絶技巧だ。100年以上続く老舗ならではの伝統がうかがえる。

 

これぞお手本!肉の厚さ

味の濃さまで理想の生姜焼き

 

60種類、小鉢まで含めたら80種類以上あるメニューの中で、毎回頼んでしまうのが、日本一との呼び声高い菱田屋の「生姜焼き」だ。この生姜焼き、その肉の厚さや味付けの濃さ、玉ねぎの太さや分量のバランスに至るまで、すべてが完璧だ。これぞお手本! 模範的な生姜焼きなのだ。

サシが多い豚肩ロース肉を使い、柔らかくジューシー。ニンニク、生姜がしっかりと効いており、甘辛いしっかりとした味付けが後を引かず、ご飯がガンガン進む! 甘く濃厚なのに、爽やかなのだ。

真珠のようにツヤツヤ輝くご飯、副菜のマカロニサラダにプチトマト、お新香、シンプルなネギとワカメのお味噌汁。この組み合わせ全てが、理想的な定食の形でもある。

 

中華で修行した5代目の

実力派!油淋鶏と点心

 

先述したように100年以上続く菱田屋。魚料理を得意とする4代目とは異なり、5代目は名店「文」で修行し、中華のバックグラウンドをもつ。菱田屋の味は『行列のできる定食屋「菱田屋の男メシ!」』というレシピ本としても発売されている。そこでも豚の生姜焼きに次ぐ人気メニューとして紹介されているのが油淋鶏。そして中華メニューと、餃子、焼売などの点心だ。

サクサクに揚がったボリューミーな油淋鶏は噛むと、肉汁がジュワッとこぼれ出す。自家製の唐揚げねぎソースがほどよく効いて、これまたご飯が進む。

シンプルな焼き餃子にも丁寧な仕事と実力が感じられる。ほどよいひき肉と野菜のバランスと、シャキシャキとした歯ごたえ。家庭で食べる餃子の最高峰のような一皿だ。

飲める定食屋には外せないポテサラ。こんがり炒めたベーコンがアクセントになり、これひとつだけでビール一杯いけるほどの満足感だ。

 

中華だけでなく、ハンバーグなどの洋食メニューも絶品だ。毎日通ってすべてのメニューを食べ尽したくなるほどだ。豚の生姜焼き、油淋鶏、中華、点心、そして洋食と、おすすめしたいメニューにキリがない。

 

レシピ本にも「がっつりおかずこそ、飽きずに食べられる工夫が必要」と語っている。一見ボリューム勝負に見えるシンプルな家庭料理だが、そこには100年の細かい調理の技巧が込められている。季節や日によってメニューも異なるため、どれだけ通っても飽きることがない。

 

100年、進化し続ける味をぜひ堪能してほしい。