小池さんおすすめの「オーダー必須」のメニューとは?

上質な黒タンの3種盛りは、上から上タン(厚)、すじ(中)、並(薄)がラインアップ。極限希少部位であるタンを、部位の違いによって厚みを微調整し、奥深きバリエーションを楽しめる。小池さんが一口食して、思わず「むふふ」と笑みがこぼれる納得のクオリティがここにある。

「黒タン3種盛り」1,500円×2人前
たっぷりの牛脂を鉄板の両サイドに置いて、肉を焼く前に下準備するのが店のスタイル。鉄板の渇きを防ぐために、こまめに牛脂でしっとりとさせ中華鍋の感覚で
 

小池さん

塩の塩梅もちょうどよくて、厚みにも驚きます。厚みのある上タンは、弱火でじっくり焼きすれば失敗しないです。断面を均等に焼きたいならこまめにひっくり返して。グラデーションをつけて火入れしたい時はじっくり焼いてひっくり返すのがいい。それはもうお好みで。僕は、単調につまらなくならないよう、その日の肉の状態を見て焼き加減を見極めて変えています(笑)。食感が強く薄い並はレモンを添えていただきます。

筋肉質で引き締まった超希少な横隔膜ハラミ&サガリを「こんな分厚さで、なかなか出すところないです!」とうっとり見つめる小池さん。この分厚さをすべての客に提供するのは、とんでもない努力の賜物。まずはそのままの肉の素材の旨みと味わいを楽しみ、2切れ目は醤油をつけて。柑橘強めのさっぱりとしたタレや、好みでワサビをつけるのがこの店での流儀だ。

「ハラミサガリ」1,800円×2人前
分厚いハラミに食べ慣れていない客には店主が丁寧に焼いて提供するので、最高の状態でいただけるのがうれしい
 

小池さん

火力が強い鉄板の真ん中あたりにきっちり並べて、じっくりと火入れ。カリッとするところがある方が好みです。ハラミはウェルダン気味に火入れし、サガリは少し中をレアにするグラデ焼きが好きです。ハラミにおいては、最近どれを僕が焼いたかわかると言われる“小池焼き”です。臭みがなく、ぷりっとしていて、太い繊維質。噛みしめるほどに甘みが広がり、噛みちぎった時の肉の旨さったら! 飲みこむのがもったいないほど。

噛むほどに旨みが広がる、筋肉質な頬肉ツラミ。焼肉に合うねぎとにんにくというツートップを交えて食するスタイルだ。オーダーが入ってから千切りするねぎは、氷水にさらすひと手間で、しんなりしないシャキッとした食感を実現。胡麻油、ほんの少しのすりおろしたにんにくのアクセントが病みつきに。

「ツラミ」500円×2人前
 

小池さん

ツラミはすじにしっかりと火を通したいので、片面約20秒。サッとではなく、わりとしっかりめに焼きを入れていく感覚で。シャキッとしたねぎをくるっと巻いて、がぶっと大胆に食べるのがおすすめ。にんにくのアクセントが香り、白米が進みます。

一度に半頭分仕入れている新鮮なレバー。「ホルモンはまずいものと思っている人がまだ多いので、新鮮なレバーのおいしさをぜひ試してほしい」と、五十嵐さんは自信たっぷりに語る。店で推奨しているのが、胡麻油にたっぷり浸してまとわせコーティングしてから焼く“コロコロ焼き”。レバーをサッと回し転がしながら焼き、火をまとうように炙り焼く。この工程を何度も繰り返すことで、程よく火が入り、ふわっと甘い香りが湧き立つ。肉のポテンシャルを最大限に引き上げる、焼き方にも妥協しない姿勢がうかがえる。

「厚切りレバー焼き」500円×2人前
 

小池さん

胡麻油の香りだけでお腹が減りますね(笑)。おいしくないレバーは焼くとパサパサになるけれど、上質ないいレバーは焼いてもおいしい。その好例がこちらのレバーだと感じます。食べる順番的には、一通り焼肉を堪能した最後に楽しむ部位です。五十嵐さん推奨の“コロコロ焼き”、気に入ってしまったのでしばらく真似しようかな。

どこか似ている……と、肉へのただならぬ追求と深き情熱を語り、共鳴し合う2人。「今度焼肉ご一緒しましょう!」と、肉談義は止まらない

五十嵐さんのこだわりの強さや情熱、内臓系のインパクトの強さに共感し、勝手にファンになったという小池さんが今回取材して「しみじみといい店だなと感じずにはいられない」とさらに思いを募らせた。値段に関係なくおいしく、いざお会計をすると想像外に安くて、何でこんな値段が実現できるのか!?と驚く店は、町田界隈だけでなく焼肉界での内臓系の価値を高めている。「内臓系だけじゃなく正肉にも真摯に向き合ったら、さらにすごいことになりそうと妄想してしまう」と、小池さんが期待してやまない店の今後の進化にも注目したい。

少し遠くても、街になじみがなくても、わざわざ町田という場所に遠征したくなる、今回の「うしの絵」。内臓系焼肉の概念を覆す、和牛のおいしさの真髄を破格で堪能できる聖地は、予約困難になる前にぜひ訪れておきたい。

※価格はすべて税込

取材・文:濱口眞夕子(SEASTARS Inc.) 撮影:八木竜馬