あの味がまた食べられる!

外観 写真:お店から

和食店として麻布十番に昭和48年にオープンし、次第にくじらを専門に扱うようになり、平成20年に白金に移転。長い間、多くの人に親しまれてきた「うずら」。仲の良いご夫婦二人で切り盛りしていたのだが、昨年、ご主人が急逝。しばらく店を閉めていたものの、やはりお客さんの笑顔が見たいとお母さんが奮起、同じ白金の地でたくさんのスタッフに支えられてリニューアルオープンした。メインメニューはもちろんまったく同じ、50年かけて磨き上げてきた味は、完成されたものだから。

人気メニューの「尾の身」

東京ではくじら料理専門店というと多くはなく、それだけに、仕入れから一つ一つのメニューを完成させるまで、相当の研究をされたそうだ。その味が受け継がれてまた食べられるというのだから、なんともうれしい。アラカルトメニューもあるが、初めてなら「うずら」の魅力が全部詰まったくじら尽くしのコースメニュー(12,000円)を頼みたいものだ。ここではコース料理を最初から紹介しよう。

変わらない、コースの料理

さらし

さっぱりとして食べやすい

まずはお通し。「さらし」というくじらの尾羽 (おば、尾の部分)を塩蔵したものを薄切りにして、塩分 や脂分を抜き、 冷水 にさらしたもの。甘酸っぱい特製の酢味噌をつけていただくが、網目状の身がしゃりしゃりとした独特の食感で、食べたことがないという人も多いのではないだろうか。

くじらベーコン

脂の甘さがたまらない

続いてくじらベーコン。こちらはニタリクジラという品種を使用。部位は、畝須(ウネス)と呼ばれるくじらのアゴ部分で、これを塩漬けしたもの。こちらは懐かしいと感じる人もいるだろう。やみつきになるつまみだ。

尾の身

柔らかい肉質におどろく

刺身は「尾の身」。生姜と特製のにんにくたまり漬けで食べると、脂ののった濃厚な旨みのある身質を引き立て、なんとも美味。尾の身は高級部位だが、うずらではナガスクジラやイワシクジラなどその時に良いものだけを使うそうだ。この尾の身でくじら好きになるという人も多い。

ここでは、高知の名高い日本酒「酔鯨」を合わせたが、酒類は、日本酒と焼酎に特に力を入れているので、ぜひ、おすすめを聞いてみてほしい。

竜田揚げ

ビールとの相性が良い

そしてミンククジラの竜田揚げ。年配の人の中には懐かしく感じる人も多いのではないだろうか。丁寧に下味をつけて衣をはたき、揚げたての熱々をはふはふとかじると、なんともお酒が進む。

はりはり鍋

具材はこれだけ。なんともシンプルな鍋

そしていよいよメインディッシュの「はりはり鍋」。はりはり鍋というのは本来大阪のくじら料理で、水菜をたっぷり入れて、そのしゃきしゃき感をはりはりと表した粋な鍋だ。それを「うずら」では、すっぽんの丸鍋を参考に、生姜を驚くほどたっぷり入れて、酒と昆布だしで仕上げている。

生姜が利いただしとくじらは完璧な組み合わせ

そのだしの中で、生姜と醤油で下味をつけ、片栗粉をまぶしたくじらの身を煮ていただく。生姜が効いただしに、くじら肉の旨みがとけこんで、なんとも胃の腑にしみる。

水菜はたっぷりでもペロッと食べられる

油揚げとしゃきしゃきの水菜も相まって、いくらでも箸が進む。

疲労回復に◎

暑いのに鍋?と思うなかれ。実は、くじら肉には、バレニンという成分が群を抜いて多く含まれていて、抗酸化作用が高く、抗疲労効果に抜群に効くのだという。生姜との相乗効果で夏バテ対策に完璧なのだ。

くじらの旨みがたっぷりのだしはこれだけでご馳走

鍋の締めは、雑炊、ラーメンから選べる。これは好みだからなんともいえないが、旨みがたっぷり出ただしを含んだ締めをいただくころには、満足感でいっぱいだ。

わいわい食べて元気をもらおう

1階席 写真:お店から

席は1階がカウンター。間近にお母さんの元気をもらえる席だ。人数が少なければぜひ、おすすめ。2階は4人掛けのテーブル席が基本。わいわいと鍋を囲むのにふさわしい。

2階席 写真:お店から

アラカルトにはくじらのユッケ(1,600円)やくじらのなめろう(1,600円)などもあり、どの一品もおいしく、くじらの種類の使い分けなど、長年の経験があってこそできるものと、感心させられる。お母さんが元気に頑張っているのもくじらパワーのおかげかもしれない。なんだか、最近バテ気味だなと感じたら、ぜひ、試してみてほしい。

外観とスタッフ 写真:お店から

※価格は全て税込。

文:小松宏子
撮影:片桐 圭