【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

今回登場するのは、“肉学校”を称する店。食べごろの肉を美味しく提供するだけではなく、部位や調理法の違いにより、味的好奇心まで満たしてくれる新星だ。

Vol.15 食べて識る牛肉学!肉と学校編

希少部位を出す焼肉店が“希少”ではなくなりつつあるが、これほど肉の部位の選択肢が増えたのは、ごく最近のことだ。

 

かつての焼肉メニューの王道といえば、カルビにロース、そしてタン。内臓系に関して言えば、レバーやミノなどをあつかう焼肉店はあったものの、シマチョウ、マルチョウ、コブクロの類は“ホルモン”のひと言で括られることも多かった。

 

それがいまは若い女子も「一番好きな部位はハラミ」と言う時代。牛を一頭買いし、さまざまな部位を提供する焼肉店が人気を集めたこともあり、肉の部位の認知度はどんどん高まってきている。

六本木に新たにオープンした「格之進肉学校 六本木分校」は、いわて南牛を中心とした黒毛和牛の熟成肉にはじまり、次々に牛肉の新たな魅力を広めてきた「格之進」の最新店。

 

これまで焼肉店を中心に展開してきたが、新店は“楽しく、美味しく肉を識る”ことをコンセプトにしており、3階建てのビルの1階には、和食出身の料理人が腕を揮う「格之進82」と牛肉の販売を行う「格之進B」が入る(Bは肉屋を意味する“ブッチャー”の頭文字)。気になるのは“82”という数字だが、これは牛肉の主たる部位の数。

前菜(内ももの焼き、湯引き、昆布締め、漬け)

焼きしゃぶ(サーロイン、肩ロース、シキンボウ、トモサンカク)

割烹スタイルで牛肉のさまざまな部位を堪能することができる店も増えているが、ここでは10種前後の食べごろの部位を厳選して提供。

 

例えばコース序盤に登場する内ももは、焼き、湯引き、昆布締め、漬けなど異なる調理法の食べ比べ、焼きしゃぶはサーロイン、肩ロース、トモ三角、シキンボウといった部位を1枚ずつ味わうことができる。

串揚げ(リブロース、アマミスジ、赤身肉の薄切り)

 

牛肉の旨みを封じ込めた串揚げや、サーロインと雲丹を合わせた贅沢なユッケ(今後取り扱い予定)なども織り交ぜつつ、さまざまな部位を堪能できる幸せ。

 

同じ部位でも、調理法によってまるで違う食感や風味になるという発見や、調理法が同じでも部位によって個性が異なるという驚きがあり、料理が運ばれるごとに食欲がそそられ、知的好奇心がくすぐられる。

雲丹とサーロインのユッケ(今後取り扱い予定)

 

コースのなかに登場する部位は10種前後だが、そのときどきで提供される部位や調理法は変わるので通い続ける楽しみもある。淡白、濃厚、ミルキー、野性味…。ここでさまざまな部位の味を知ることで、牛肉愛がいっそう深まるはずだ。

写真:富澤 元
取材・執筆:小寺慶子