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【第3週のカレーとスパイス】インド料理マニア感動! 正統かつモダンな味わいを堪能できる横浜・元町の南インド料理店「INDU」
昔ながらの港町、横浜・元町にインド料理マニアを感動させる高級南インド料理店があります。その名は「INDU」。2019年の年末に開店。話題になりそうなところでコロナ禍が襲ってきてしまったというタイミング。しかしながら力強くコロナ禍の大波を乗り越えようとしています。
元町らしく高級感と気さくさが共存するようなお店の雰囲気。南インド料理と言っても色々ありますが、こちらはミールスやビリヤニをワンプレートでいただいてお腹一杯になるタイプのお店ではなく、単品それぞれのクオリティが高く、基本はオーセンティックな南インド料理でありながら所々に洗練されたセンスでなされた工夫を感じるモダンテイストの料理もあります。
まず最初は「フレッシュオーガニックビーツのブラックペッパースープ」990円からスタート。一口飲んでみて最初に頭に浮かんだのは「?」の文字。二口飲んでみて次に浮かんだのが「!」の文字でした。
最初に感じたのは塩味の薄さなのです。「あれ? 味薄い?」と考えながらゆっくりと二口目を味わってみると「いや、これは狙ってやっている! 塩味が薄いからこそ素材の味がめちゃめちゃ立っている!」という意味です。ビーツ自体が持つほのかな甘味が優しく柔らかく引き立てられています。ブラックペッパーの刺激が変化を出して心地よく、あくまで主役はビーツなのだということを徹頭徹尾感じさせるスープでした。
続いて頼んだのは「アーンドラグッティヴァンカヤクラマサラ」1,980円。南インドのアーンドラプラデシュ地方の料理で、茄子に切り込みを入れ、そこに豆やスパイス、カレーリーフなどを詰め込んで蒸し焼きにした料理です。こちらも食べてみるとやはり塩味が控えめ。そしてスパイス使いは華やか。豆のほくほくした食感と、茄子のみずみずしさがスパイスを仲介して手を取り合い、野菜だけで作られた料理でありながら肉にも負けない派手さと存在感がある絶品でした。
メインに頼んだのは「やわらかラムドーサ」2,970円。お店としてもドーサを推しているようでおすすめされました。ドーサは南インドの軽食で、米や豆が原料のクレープのような料理です。
このドーサの中には文字通りやわらかく、ほろほろになったラム肉のドライカレー的なものがたっぷりと入っているごちそうドーサ。ドーサの生地だけ食べてみれば上品な酸味が印象的。外はパリっと、中はふんわりしっとりとした焼き具合も絶妙です。ラム肉は噛めば噛むほどラムのうま味が出てくるのですが、いわゆる臭味は全く感じないというバランス。これは素材自体相当良いものを使っている証拠でしょう。
一緒につけるココナッツチャトニも品が良く、サンバル(南インドの野菜カレー)もこだわりのモリンガ入り。モリンガとはドラムスティックとも呼ばれ、アーユルヴェーダの世界でもひときわ薬効があると言われているスーパーフード。滋味深いおいしさが身体の芯まで流れ込んで染みわたるような感覚を受けました。
今回いただいたすべての料理が塩味控えめで、だからこそ素材の味がしっかりと立ち、味が濃すぎると感じない素材自体の持つおいしさをしっかりと理解できるという組み立て。これはシェフに相当な知識と技術と思い切りが無いとできない料理です。実はこちらのシェフ、インド屈指の最高級ホテル「オベロイ」の出身と聞いて納得。その腕も経歴も立派なものでした。
感動の締めくくりに「インドのチャイ」660円。インド人や、インド在住歴のある人と話しているとよく「チャイは甘いのが本物。スプーンに最低3杯は砂糖を入れて飲むのが正しい」なんてことを言われます。確かに油も辛さも強いインド料理の後には甘いチャイが良く合うと僕自身も考えているのですが、こちらのチャイを飲んでまたびっくり。砂糖が入っていないのです。さらには、砂糖を入れさせないというスタイル。
しかしだからこそ、今まで食べた料理の締めくくりとして完璧なのです。これでもし甘かったらその印象ばかり強くなってしまうでしょう。しかし甘さが無く、生姜の風味と茶葉の香りが牛乳と混ざりあったこのチャイを飲んでいると、ひとつひとつの料理が思い出されてくるような感覚。素晴らしい!
値段的には平均的な南インド料理店よりも確実に上ですが、食べればわかるその意味と凄まじさ。食べ終わった後にはとにかく余韻に浸ってしまい、幸せな気分でぼんやり「おいしかったなぁ」と何度も口に出してしまいました。
そして食べ終わってしばらくたって気づいたのは、結構な量を食べたのに胃が重くないということ。使用している油が上質な証拠です。そこでまた幸せのため息。帰宅して寝るまでこの幸せが続きました。
ちなみにランチメニューはありません。昼も夜も同じアラカルト。この潔さがカッコ良い。変にサービスしてクオリティを落とすより、この価格の意味がわかる人にこそ来てほしいということでしょうか。もしかしたらジャンクフードばかり食べている方にはこのおいしさが理解できないかもしれません。違いのわかる方にのみおすすめの、とっておきの名店ですよ。
※本記事は取材日(2021年10月12日)時点の情報をもとに作成しています。