【映画のあの味が食べたい】
『ロスト・イン・パリ』夏のパリで食べる“ふるさとの味”はカスレ
新しい街を歩くときは、ワクワク、エキサイティングな一方、不安に駆られるものだ。『ロスト・イン・パリ』のヒロイン、フィオナの場合はなおさら。
雪深いカナダの小さな村で図書館司書をしている彼女は、生真面目でちょっと臆病。けれど、パリに住む高齢のおばから「助けてちょうだい!」の手紙が届き、覚悟を決めて憧れのパリへ旅立つ。
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なのに、パリに着いたら、叔母は行方不明。さらには、セーヌ川に落ちて、バックパックごと持ち物すべてを失ってしまった! 挙げ句の果てに、風変わりなホームレスの男ドムが行く先々に現れ……。
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ちょっと不器用なフィオナのひと夏のパリ珍道中を描いたハートフルなコメディ。主演&監督は、『ルンバ!』(08年)でも話題となった現役の道化師のカップル、フィオナ・ゴードンとドミニク・アベル。カナダ人のゴードンとベルギー人のアベルがくり広げる笑いは、オフビートで独特の味わいがある。
完全に“おのぼり”状態でパリの街に翻弄されるフィオナが巡るパリは、いつものスノッブなパリとは違って、どこか庶民的。一文無しとなった彼女が警察から「食事券」をもらって向かうのは、セーヌ川に浮かぶ船上レストラン「マキシム」。こちらもかつてのグラマラスな印象はなく、親しみやすく、安心感が漂う。
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そんなフィオナが、夜、ベッドでアルバムをめくりながら食べるのが、缶詰の「カスレ」。
カスレとは、肉やソーセージ、白いんげん豆などの煮込み料理。ボリュームがあってお腹も心も温かくしてくれるフランスのおふくろの味。パリでも地元の人からも愛されるビストロの定番メニュー。
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寒い国から来たフィオナにとっても、こうした煮込み料理は、まさに懐かしい“故郷の味”なのでしょう。
“パリのカナダ人”もホッとさせるカスレを日本で食べるなら、フランスの伝統料理を食せることで知る人ぞ知るビストロ「ヌガ」。巴里祭をお祝いするなど、エスプリ溢れる普段着のパリに触れられ、温かい気持ちになります。フィオナがもしトーキョーで迷子になったら、ぜひ連れて行ってあげたい!
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【作品紹介】
雪深いカナダの小さな村、さえない日々を送る図書館司書フィオナ。ある日、パリに住むおばマーサから助けを求める手紙が届き、臆病者のフィオナは勇気をふり絞って旅に出る。ところがアパートにマーサの姿は見当たらず、セーヌ川に落ち所持品全てを失くす大ピンチ! おまけに風変わりなホームレスのドムにつきまとわれて…。いったいマーサはどこに?!
『ロスト・イン・パリ』 渋谷・ユーロスペースで公開中。ほか全国順次公開。