〈2020 食通が惚れた店〉

新型コロナウイルスの流行により、飲食店にとっては大きな危機を迎えた2020年。でも、外食シーンの火は消えない! こんなときこそ、おいしいものを食べて元気になり、飲食店を応援したいものです。

そこで、グルメ情報を熟知した有識者に、2020年に惚れ込んだお店や料理についてアンケートを実施。「最も印象に残った店」「2,000円以下のお手軽グルメ」「おすすめお取り寄せ」をうかがいました。

今回は、食べロググルメ著名人の浜田岳文さんにお答えいただきます。

教えてくれる人

浜田岳文
1974年兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。大学在学中、学生寮のまずい食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するためフランス・パリに留学。外資系投資銀行と投資ファンドにてM&A・資金調達業務とプライベート・エクイティ投資に約10年間携わった後、約2年間の世界一周の旅へ。帰国後、資産管理会社(ファミリー・オフィス)社長を経て株式会社アクセス・オール・エリアを設立、代表取締役に就任。南極から北朝鮮まで、世界約120カ国・地域を踏破。

今年のベストレストラン

Q. 2020年、最も印象に残った飲食店を教えてください

A. 「波濤」です

中トロ 撮影:浜田岳文

寿司の握りには、持って生まれた天性のセンスに加えて、反復練習を通じて型を作るプロセスも大事だと思っています。

一般的に、独立したばかりの寿司職人さんは、反復練習が足りない未完成な状態でスタートすることがほとんどですが、神楽坂「波濤(はとう)」のご主人の握りは2020年2月にオープンしたとは思えないくらいに完成度が高い。握りの姿が美しいので、写真を見るだけでもその片鱗は伝わると思いますが、ブレが少なくバランス感覚に優れています。

まだお店としては始まったばかりですが、ご主人が自分自身の寿司を作り上げていく過程を継続して見守りたいと思っています。

アンダー2,000円のお手軽グルメ

Q. 今年食べた〈2,000円以内の感動の味〉を教えてください

A. 「銀座 八五」の「中華そば」(税込850円)です

中華そば 撮影:浜田岳文

「銀座 八五(はちごう)」は、ラーメン好きの方にとっては今更感があるくらいの名店ですが、おいしいものは好きだけどラーメンは普段あまり食べない、という方に強くおすすめしたい一軒です。

割烹を思わせる凛とした空気が流れる店内や美しいテーブルセッティング、腰が低く誠実さが伝わってくるご主人、きびきびしたサービスなど、食べる前から期待が高まります。

一般的なラーメンは、一口目のインパクトを大事にしているので、旨味と塩味が強いことが多いという印象です。やもすれば、一口目がピークで、二口目以降は徐々に印象が薄くなりがち。当店は対照的に、食べ進めるごとにどんどんおいしく感じられ、食べ終わるまで飽きることがありません。

一流の割烹の椀物を味わっているかのよう、と言うと大げさかもしれませんが、ラーメンというジャンルを進化させ、堂々たるファインダイニングとして位置付けている画期的な店だと思います。

2020年のお取り寄せ

Q. 今年出会った、人におすすめしたいお取り寄せを教えてください

A. 「TAKU円山」の「北海道 海藻入り 発酵バター」です

海藻入り発酵バター 撮影:浜田岳文

日本のバターは、良く言えば繊細、悪く言えば風味が弱くてコクがないと感じるものがほとんどです。そんななかこちらは、日本では珍しい発酵バターに海藻が練り込まれているので、発酵の酸味と海藻の旨味が味わい深いです。プロデュースしたのはパリで人気の寿司店「仁 JIN」の渡邉卓也氏。本場のおいしいバターを知っているからこその、素晴らしい一品だと思います。

※アンケート内容と「食べログ」に掲載されている情報をもとに、料理名・金額を掲載しています。最新の情報はお店にご確認ください。
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

文:浜田岳文・食べログマガジン編集部