TOKYO HIP BAR

Vol.5 カクテルで広がる、シングルモルトの世界。

 

結婚できない男と

ウイスキーは似ている!?

 

「ウイスキーは自分への依存度が高すぎて、結婚するムードもない、なんとなく古めかしい冴えない男性のようなものです。穏やかになるのを拒否するかのような佇まいでもあります」

 

これは1948年に発行された本、「The Fine Art of Mixing Drinks」(David A Embury著)にある文言。この言葉は、ウイスキー好きな人のみならず、結婚できない(また結婚する気のない)男性にもドキッとする言葉かもしれません。“結婚するムード”がないとモテないというのは古今東西同じのようですが、それはさておき。「ウイスキーが古めかしい」、というのはウイスキーをそのまま飲んだときの話だそうで、この言葉は次のように続きます。

 

「ただほかのお酒を加えた時、2つの個性が拮抗するような深い味わいが現れるでしょう」

 

個性あるウイスキー、とくにシングルモルトはロックで飲むべしという観念があるものですが、実はこれは、ここ数十年にわたってつづいてきたトレンドのようです。それを裏付けるかのように、1890年頃のウイスキー広告を紐解いてみると、たいてい何かと混ぜて飲まれているのです。

 

 

 

 

確かな技術をもったバーテンダーが

ロック以上の深みを引き出す

 

スモーキーで個性が強いイメージのシングルモルトですが、すべてがスモーキーなわけではなく、シトラスが強いもの、野菜のような香り、スパイシーな香りなど、さまざまに香るシングルモルトは、上手なバーテンダーの手にかかれば、ロックで飲む以上の味わいを発揮できるポテンシャルの高いお酒なのです。

 

 

そんなシングルモルトカクテルを楽しむのにおすすめなのが、清崎雄二郎バーテンダー率いる、池袋の「バーリブレ」。液体窒素やスモーキーマシーンなどを使い、シェフのようにカクテルを“調理する”、いわゆる「ミクソロジスト」と呼ばれるバーテンダーです。「バーリブレ」での定番のシングルモルトカクテルは、「スモーキーアレクサンダー」。通常はブランデーベースに生クリームやカシスで作るカクテルのベースを、クリーミーでフルーティな味わいのあるシングルモルト「アバフェルディ」でアレンジしたもの。仕上げにスモークガンで桜のチップの燻製香を漂わせる「スモーキーアレクサンダー」は、飲むたびに何層もの香りと味わいが現れ、はっとさせられます。

 

これはベースに個性をもつシングルモルトならではの効果。ウイスキー=ロックという固定観念を外すと、そこには自由でクリエイティブなお酒の世界が広がっています。まずは、カクテルに応じてさまざまなシングルモルトを使い分ける清崎バーテンダーの技でその世界を開いてみてはいかがでしょう?  ひと口飲めば、結婚したくない男性にも、“結婚するムード”がさり気なく漂うかもしれません。