飲食業界にとっても色々あった2020年。それでもやっぱり食への欲求は止まらないし、食のトレンドは生まれ続けるものだ! ということで、今年話題となった食トレンドをおさらいしようというこの企画。ことスイーツにおいて今年のトレンドと言えば、外せないのが日本茶を使ったお菓子やドリンク。

そこで、連載「スイーツ探訪」でお馴染みのお菓子の歴史研究家・猫井登さんに、甘味ファンを夢中にする、抹茶&ほうじ茶スイーツのおいしいお店を前後編に渡って解説していただきましょう! ということで、銀座・日比谷エリアのお店を中心に紹介した前編に続き、後編では青山・渋谷・新橋エリアの抹茶&ほうじ茶スイーツのおいしいお店の情報をお届けします。

抹茶濃度を選べるアイスにヴィーガン対応のスイーツセットも! 抹茶&ほうじ茶スイーツスポット3店(後編)

4.「ななや 青山店

「ななや」は、「丸七製茶」が運営する静岡抹茶スイーツファクトリー。丸七製茶は、明治40年(1907年)創業、113年の歴史を誇る静岡の製茶会社です。100軒以上の茶農家と契約し、日本茶全般の製造を行っています。

実は静岡における抹茶の歴史はまだ浅く、1988年に丸七製茶が本格的な抹茶作りに着手したのが始まりとされています。そのため、知名度は京都の宇治抹茶には及ばないものの、グレードは高く、生産量も全国の約15%*を占めるに至っています。

*全国茶生産団体連合会 平成30年茶種別生産実績「てん茶」より算出

モンチッチ
出典:モンチッチさん

こちらのお店を訪れたらまず味わってほしいのが、7段階の濃さに分けられた「抹茶のジェラート」! 中でも一番濃いNo.7は、「世界で一番濃い抹茶のジェラート」(同社調べ)とされていて、人気商品となっています。

No.1〜No.7の中間のNO.3がこちらのお店でレギュラーとしている基準の抹茶の濃さですが、No.1でも市販のリッチタイプの抹茶アイスと同等の濃さで、No.5になると、抹茶の風味、苦味ともに、かなりガツンとくる濃さになります。

「No.7」(シングルカップ)580円

No.7は、No.6の3倍量の抹茶を使用しているとされ、前述のとおり世界最高峰の濃さを誇ります。実際にNo.7を食してみると、まずはしっかりとした抹茶の深い香りが鼻腔をくすぐり、一口食べると、苦味だけでなくまろやかな旨味が広がり、かすかな甘みさえ感じられ、あっさりとした後口です。

濃度を上げるほどに原料の品質の良し悪しが如実に表れるという抹茶。ここまで濃くして旨味を感じさせるのは、相当高品質の抹茶を使用していることがうかがい知れます。お店の方に聞くと、農林水産大臣賞を受賞した茶園の抹茶を使用しているとのことでした。

今回は、NO.7の味わいを堪能するため、NO.7のシングルにしましたが、濃度の違いを楽しみたいならばNO.5とNO.7など、2つ以上間隔をあけて2種類味わってみるのがおすすめです。

「プレミアム抹茶セブン」1,944円

ジェラートを堪能したら、お土産に是非買って帰りたいのが、抹茶のチョコレート! その名も「プレミアム抹茶セブン」!

最高級の抹茶で作られた、抹茶の濃さが違う7種類の「抹茶チョコレート」と濃い「ほうじ茶チョコレート」の合計8種類、各2本ずつ16本のセットです。まるで美しいパステルのグラデーションのようなチョコレートです。

カカオバターから自社製造し、カカオバター、糖、お茶(抹茶、ほうじ茶)、少量の乳のみ使用。香料やレシチン不使用で甘さも控えめなので、抹茶やほうじ茶の香りや味わいをダイレクトに感じることができます。

抹茶チョコレートは濃度の違いによる味わいの変化を楽しむことができますが、特に抹茶の最高濃度のレベル7は、抹茶が濃すぎて型崩れし商品にならない限界まで挑戦したといわれ、抹茶好きの方には是非味わっていただきたい逸品です。

※価格はすべて税込

5. 「伊右衛門サロン ヒカリエ渋谷店

伊右衛門は、サントリーのグループ会社と福寿園のコラボにより開発・販売されているペットボトル入り緑茶飲料の名称。「伊右衛門サロン」も同様にサントリーと福寿園により運営されています。

福寿園は、寛政2年(1790年)に現在の京都府木津川市において、福井伊右衛門により茶商として創業。230年の歴史を誇ります。2004年にサントリーとのコラボで初代の名を冠した「伊右衛門」ブランドによる商品の開発販売を開始しました。

2008年には、「伊右衛門サロン」1号店が京都でオープン。京都の「お茶」の伝統を受け継ぎながら、お茶の新しい楽しみ方を提案しています。

伊右衛門サロン ヒカリエ渋谷店の和洋菓子はすべて、ヴィーガンパティシエによるもので、卵や牛乳など動物性食材を使わない100%植物性のヴィーガンデザートとなっています。まずは、シンプルに、香り高い宇治抹茶をストレートに楽しみたい方におすすめなのが、抹茶と小菓子がセットで出てくる「小さなおやつと抹茶SET」!

「小さなおやつと抹茶SET」880円
「小さなおやつと抹茶SET」880円   写真:お店から

「小さなおやつ」は、苺こはぎ、紫芋こはぎ、Soy生チョコレートケーキ、大納言あずきの抹茶ケーキ、うぐいす鹿の子のほうじ茶ケーキ、モンブランタルト、煎茶シロップみつ豆、豆乳アイス最中の中からひとつ選ぶことができますので、食後のお茶にも最適です。

しっかりとスイーツを堪能したいという方には、箱に詰められた季節の和洋菓子やベジタルトから、好きなおやつを5種類選ぶ「伊右衛門サロンのビーガンおやつワゴン」や、12種類の小さなおやつを一気に楽しめてしまう「伊右衛門サロンのビーガンおやつの宝石箱」もおすすめですが、抹茶スイーツ、ほうじ茶スイーツ、洋菓子をバランスよく楽しみたいという方におすすめなのが、「ガトーショコラとほうじ茶アイス最中プレート」!

「ガトーショコラとほうじ茶アイス最中プレート」1,250円 撮影:食べログマガジン編集部

抹茶鹿の子ケーキ、ほうじ茶アイス最中、ガトーショコラの3点セットです。動物性食材を使用していないので、ほうじ茶アイスは軽やかな味わいでしたが、抹茶鹿の子ケーキはしっかりとした味わい、ガトーショコラも濃厚でしっかりとカカオの味わいが楽しめます。

※価格はすべて税抜

6.「CHAYA 1899 TOKYO

さて、今回最後にご紹介するのは……「身も心もどっぷりとお茶で癒やされたい」。そんな方に最適のカフェです!

「CHAYA 1899 TOKYO」は、「ホテル1899東京」の1階部分にあるカフェ。こちらは、お茶の水に本店がある1899年創業の「ホテル龍名館」が改装にあたり、「お茶と共に過ごすゆるやかな時間」をコンセプトに始めた「RESTAURANT 1899 OCHANOMIZU」が始まり。

その後、2018年に国内外のより多くの人たちにお茶のあるライフスタイルと出会っていただきたいという思いを持ってホテル1899東京を開業。1階につくられたのが、今回ご紹介するカフェというわけです。明るく、開放感あふれる店内では、全国のお茶どころから厳選した上質なお茶や、さまざまな“お茶メニュー”を味わうことができます。

写真左奥から時計回りに、抹茶パンホワイトチョコ&シリアル330円、抹茶パンあんバター380円、ほうじ茶パン和栗430円、抹茶パンプレーン300円、ほうじ茶パンプレーン300円(各税込)

おすすめは、可愛らしく工夫を凝らした「抹茶パン」と「ほうじ茶パン」!

スイーツ系では、酒茶ケーキ(抹茶、ほうじ茶、紅茶)、ジェラート(抹茶、ほうじ茶、ほか)、米粉のブラウニー(黒きなこと抹茶、ほうじ茶、ほか)、宇治どら焼き……と、お茶スイーツが目白押し!

「抹茶ソーダ」600円、「ほうじ茶ラテ」500円(各税抜)

飲み物も、定番の日本茶のほか、「濃茶ラテ」、「ほうじ茶ラテ」などのラテ系、「抹茶ソーダ」「ほうじ茶ソーダ」といったソーダ系、「1899抹茶ビール」といった珍しいものもあります。

ちなみにフードメニューでは、「お茶ソーセージ3種盛り合わせ」などというものもあり、お食事、スイーツ、飲み物、お酒、すべてで「お茶」を楽しむことができます。

1階のカフェでお茶を堪能したら、是非お店から直結のエレベーターで2階のホテル1899東京のフロントへどうぞ! 日本の伝統やお茶文化に触れられる庵のような趣のホテルでは、心と体のバランスを取り戻す特別なひとときを過ごすことができるでしょう。「茶バリエ」によるホスピタリティ溢れるおもてなしも楽しんでください。

※時節柄、メニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年10月1日)時点の情報をもとに作成しています。

撮影・文:猫井登