アメリカ統治下で花開いた、ステーキ文化

酒をたらふく飲んで遅い時間に店を出ると、どうにもお腹がすいて、最後にもう一軒立ち寄りたくなる。アルコールで満腹中枢が麻痺して空腹を覚えるからだが、腹が空いては家に帰っても寝れない。それでは困る、と帰宅前にしっかり食事で〆る文化がいつの間にやら日本全国に定着した。

 

〆の代表メニューといえばラーメンで、酔っていてもつるつると食べやすいのと、酔うと欲する温かい汁感を兼ね備えていて不動の地位を築いている。しかし日本全国には、どうやらラーメン以外にもいろんな〆が存在するらしい。

 

なかでもショッキングなのが、アメリカ文化をたっぷり吸収して育った沖縄県の「〆ステーキ」。炭水化物or汁で〆るのが当たり前だと思っていた東京の人間からすると、いろいろと想像を絶している。

 

地元沖縄でも、「飲んだあとは絶対ステーキ」とか、「そんなの聞いたこともない」など、賛否両論があるようだが、満足感という意味では、確かに最強の〆メニューかもしれない。

 

実際、沖縄には戦後のアメリカ統治下でステーキ店が多く誕生。牛肉を愛する米国人の腹を満たす、ボリューム満点でさっぱりとした赤身肉を出す店が繁盛した。とくに那覇市内はステーキ店の激戦区となり、老舗をはじめ、現在も多くのステーキ店が営業を続けている。

 

深夜までやっている店が多く、遅い夕飯としてステーキを食べる人や、飲んだあとの〆にステーキを食べる人など、さまざまな需要がある。深夜に仕事を終えた運転手が、遅い夕飯にステーキを食べる事が多いため、ステーキを「運転手メシ」なんて呼ぶ風習もあるらしい。和牛よりもオーストラリアやニュージーランドなどの外国牛が好まれるため、値段も手頃で〆にはちょうどよい。日常的な食べ物であることは間違いないのだ。

創業60年の老舗ステーキ文化の先駆け店いまだ健在

ジャッキー ステーキハウス

出典:Churaさん

で、そのステーキ文化のパイオニアともいえるのが、いまも絶大な人気を誇る「ジャッキーステーキハウス」。ゆいレールの旭橋駅から10分ほどの場所にあり、深夜1:30まで営業している。

 

戦後間もない1953 年にオープンした老舗で、当時から文句なしの味、ボリュームと手頃な価格で、地元の人や観光客に愛されてきた。占領下時代、米国レストラン基準を満たした店にだけ与えられた「Aサイン」の認定書が、いまも店内に飾られている。

出典:ピンころ地蔵さん

特に人気なのが、ミディアムレアで焼き上げたテンダーロイン。いわゆるフィレ肉だ。ボリュームは、一番少ないSサイズで150g、2100円。スープとサラダ、パンかライスがつく。フィレなだけあってかなり柔らかく、脂身も控えめ。

 

ナイフでカットすると芳醇な血の香りを含んだたっぷりの肉汁が溢れてくる。想像に反して軽い食べ応えで、深夜でも150gならぺろりと食べられる。〆ステーキが不思議ではなくなった。

好みに合わせて20種類以上から選べる多彩なメニューが人気

ステーキ・ハウス88

出典:Sean☆さん

1955年、アメリカの有名キャバレー「88」の名をとって那覇市に開業したステーキ店。こちらも「Aサイン」認定書を持つ名店だ。現在は、チェーン展開で沖縄本島に5店舗を構えるほどの人気を誇る。

 

テンダーロインやリブロースに加え、石垣牛や厳選和牛のヒレステーキ、サーロインステーキなど、外国牛から和牛、県産牛まで20種類以上のメニューが揃う多彩なステーキが魅力。価格帯も幅広く、気軽さは抜群だ。

出典:堺のまもちゃんさん

最近では、ヒレとサーロインを両方食べられる500g のTボーンステーキが人気。迫力満点で、88らしい。

出典:にゃぐちゃんさん

ほかにも、ワンランク上の上質な牛肉を提供する「ステーキダイニング88」や、200gを1000円前後で食べられる手頃な「ステーキ・ハウス88Jr.」など、価格帯の異なるグループ展も展開しており、〆の気分に合わせて値段や肉質で選ぶもよし。気軽に足を踏み入れてみてはどうだろう。