TOKYO HIP BAR

 

Vol.3  香りからお酒を選ぶ粋。

 

カクテルと香水の素敵な共通点

 

多くの人を魅了する、カクテルと香水。実は二つには共通点があって、どちらも使われているのはアルコール。香水によい香りを閉じ込めるにはアルコールが不可欠で、そしてアルコールが含まれるカクテルも、香りを楽しめるものです。このことに気づいたのはある初夏の日。ご一緒した方から「今日は暑いから、ジントニックから飲もうと思って、ジンの香りの香水(ペンハリガンのジュニパー スリング)をつけてきました」と言われたことがあり、ドキッとしました。それまでお酒の香りには無自覚だったのですが、確かにジンにはジュニパーベリー(セイヨウネズ)の少しスパイシーな香り、ラムにはサトウキビの甘い香りがあるもの。カクテルの香りを邪魔せず、補強するような香水をさりげなく纏ってバーに行くのは、大人の遊び方だなぁと感じたのでした。

 

さて、香りをキーにお酒を選ぶとき、欠かせない存在として最近気になっているのが、フルーツブランデーです。その代表格がドイツの蒸留所、スティーレミューレです。

 

元アートブックの経営者だったというオーナーのクリストフ・ケラーさんは、お酒業界でも有名な方で、「モンキー47」という近年人気のジンも生み出した敏腕プロデューサー。彼が営むスティーレミューレ蒸留所はシュヴァルツヴァルト(黒い森)の近く、コンスタンス湖の辺りに広がる丘陵地にあり、その豊かな自然を生かして、辺りで収穫できるフルーツを使用したブランデーを生み出しています。ラズベリーやアプリコット、チェリーなどのブランデーは、まさにフルーツの香りと味わいの一番よい部分を昇華させた凝縮感が味わえます。

 

 

 

フルーツブランデーの世界を

堪能するならここで

 

このフルーツブランデーの世界に入るのに最適なお店が、新宿にある「Bar B&F」。ブランデー&フルーツから「B&F」と名付けられたこのお店は、フルーツブランデーの専門店。オーナーはご自身でも農場を持ち、ハーブなどの収穫も行う技巧派のバーテンダー、鹿山博康さん。鹿山さんの一号店「Ben Fiddich」で共に腕を振るった松沢 健さんがこちらでは店長としてご活躍。17世紀に誕生したというフルーツブランデーの世界を丁寧に案内してくれます。

 

 

 

その果実の育った背景まで

想像することで、より味わい深く

 

120種を超える世界のフルーツブランデーが揃うBar B&Fで、まず試してほしいのが、スティーレミューレ No.129「オールドアプリコット」。アプリコットを蒸留し、シェリー樽で熟成させたというこちらは、美しいオレンジの液体の下にドライのアプリコットが沈んだ、情緒的な色合いも素敵なフルーツブランデーです。スティーレミューレのウェブサイトにはこんなことが書いてあります植物の成長、開花、結実、そして成熟。「(フルーツブランデーを味わうということは)一本の木の下で起こる自然の循環、その全てを体験すること」。育った果実の背景を考えると、味わいにもより深みが出てくるものです。フルーツの味わいが詰まったスピリッツは、ストレートやロックでいただくのがオススメ。“飲む香水”とも呼べる奥深きフルーツブランデーの世界を、ぜひ堪能してみてください。