ローカル人気が加速中の小さな食堂は水曜限定営業

最近飲食店の営業形態として増えつつある「シェアスタイル」や「間借り食堂」。それは営業するお店側だけでなく、お客の方も同じ店舗で様々な料理が楽しめるため双方にとってメリットが多い営業形態なのかもしれません。代々木公園の線路沿いで営む「わたる食堂」は、カウンターテーブルにスツールが7席のみの小さな食堂。ひとり店を切り盛りするのは店主の山﨑渉さん。実はこちらの店舗、曜日ごとに異なるオーナーが営業するシステムで、山﨑さんが店主を務めるのは毎週水曜日のみ。

「母方の実家が越後湯沢でスキー民宿を営んでいたこともあり、小さい頃からお客様に振る舞う料理が身近にありました」と山﨑さん。食べるのも作るのも大好きで、会社の先輩の結婚パーティーや友人のホームパーティーなどで手料理を披露していたそう。「やっぱり料理がやりたい!」と一念発起し、お店を始めたのが昨年6月のこと。全くの異業種からの転職で、料理はほぼ独学。ところがその手作りの味が評判を呼び、水曜ごとに店は常連客で賑わうまでに。

「もともと他の日にオーナーをしている方のお店によく通っていて、その方にこういう場があると教えてもらって、お店を始めることに」と山﨑さん。いわゆる脱サラ組で、夢を叶える形で食堂の店主に。

お酒がどんどん進む、旬食材の小皿料理

メニューは週替わりで、その都度旬の素材を使った小皿料理がそろいます。週1日の営業だからこそ、その時しか味わえない一品を求めて毎週通うお客様も多いそう。(※メニューは都度変更します)

ロシア風ペリメニ300円(3個)

 

こちらは唯一の定番メニューのロシア風水餃子。ロシア系アメリカ人の知人に教えてもらった料理をアレンジ。ラム肉の代わりに豚挽肉を使い、セロリとディル、オイスターソースとナンプラーを加えるのが山﨑流。


お通し(テーブルチャージ一人500円)の菜の花とうどの梅ナムル。

 

叩いた梅にごま油をプラスしてこくをアップ。菜の花とうどの食感が絶妙にマッチ。


〆鯖とデコポンのサラダ700円

 

デコポンの果汁と穀物酢を使い〆鯖に。「柑橘と青魚って合うんですよ」と言う通り、鯖とデコポンの意外な相性に驚き。

ブリとパセリのカルパッチョ700円

 

ブリに軽く塩茹でしてレモン汁・塩・胡椒・オリーブオイルを加え、パセリをたっぷりとのせたオリジナルカルパッチョ。

鴨ミンチの麻婆豆腐700円

 

鴨の脂と八丁味噌でこくを出し、ホワジャオをアクセントにプラス。「軽めの赤ワインと一緒にどうぞ!」(山﨑さん)

牡蠣とちぢみほうれん草のスパゲティ800円

 

ホワイトソースではなく生クリームとゴルゴンゾーラチーズで味付け。仕上げに黒胡椒を山ほどふって味を引き締めて。

豚肉のシチリア風煮込み700円

 

豚肉を赤ワインでじっくり煮込んだ手間暇かけた一品。別添えのマッシュポテトと共に提供。

現在はケータリングやホームパーティーの出張料理人としても活躍する山﨑さん。「場所柄編集などマスコミで働くお客様が多く、撮影現場用のお弁当作ってくれない? と言われて始めました」。山﨑さんの作るお弁当は見た目にも美しく、SNSでも評判に。


「小さい店なので、自然とお客さん同士交流が生まれてますね」。混みあってくると椅子を取り払い、スタンディングになることも。

 

料理はどれもお酒に合うものばかりで、飽きの来ないやさしい味わいが大きな魅力。「僕自身お酒が好きなので、お酒を飲みながらずっと食べていられるような、食べていて負担にならないような味付けを心がけています」と山﨑さん。今度の水曜は、代々木公園の小さな食堂へ。温もりあふれる料理を肴に、春の宵を過ごしてみては?

 

※価格は税込

 

わたる食堂
住所:東京都渋谷区代々木5-65-4 スマイルダイナー内
営業時間:毎週水曜、19:00〜23:00(L.O.22:00)※変更あり。インスタグラムで確認を。

 

取材・文/小野寺悦子
撮影/森山佑子