目次
〈食べログ3.5以下のうまい店〉
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので「3.5以下のうまい店」にこそ注目し、今のうちにと楽しんでいる人も多いらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、美食家としても知られる放送作家、塩沢航さんが移転前から通うアットホームなイタリアンをご紹介。
教えてくれる人
塩沢航
小山薫堂事務所「N35」の放送作家。1975年生まれ。師匠・小山薫堂の一番弟子にして、師匠譲りのグルメ作家としておなじみ。主な担当番組は「アナザースカイ」「オモウマい店」「有吉くんの正直さんぽ」など。「パレ・ド・Z」「リモートシェフ」など食にまつわるコンテンツも多数担当している。
都内屈指の美食エリアに佇む明るい店舗
白金といえば和洋中の名店が散らばる東京屈指の美食エリア。新しくオープンする注目店が絶えない反面、10年、20年とこの地に根を張る実力店も健在だ。白金高輪の古くからある商店街にひっそりと店を構える「アルチェッポ」も、白金で20年以上も愛されるイタリアン。控えめなエントランスはいかにも地元の食通が通う店という雰囲気を醸し出している。
以前はもっと白金高輪の駅寄りにあったという「アルチェッポ」だが、2021年にこちらに移転した。2階にある店は、オープンキッチンのカウンターとゆったり配置したテーブル席というこぢんまりした空間だ。シンプルだが温かみのある内装はほどよく肩の力が抜けていて、息の長い店ならではのゆとりを感じさせる。
塩沢さん
こちらはまだ移転される前に、知り合いのシェフに教わりました。白金というとハイソでハードルが高い感じがしますが「アルチェッポ」があるのは昔ながらの店も多い四の橋商店街(今は白金商店街?)のど真ん中。気張らず、サービスもフレンドリーなので、若い人がレストランでの経験値を積むのにもピッタリですよ。
ベテランシェフとサービスの最強タッグが活躍する
シェフの今井雅博さんとサービスの神田直さんは、かつて同じ店で働いていたシェフとチーフカメリエーレ。そんな縁から二人で店を立ち上げたのが、今から22年前だという。リストランテとして人気を博したが、2年前に二人で目の届く店にしたいとこの場所に移ってきた。
「リストランテのようなサービスとはいきませんが、できることはやってあげたい」という神田さんは気取らず親しみやすい人柄。洗練されたサービスがキャリアの長さを物語る。今井シェフの料理はとてもシンプルだが、味わってみると美しく研ぎ澄まされている。食感や香りを引き出す調理は計算し尽くされ、食材の持ち味を鮮やかに感じさせてくれるのだ。
流行りの食材や調理法に走らない、地に足の着いたおいしさとは? 塩沢さんがおすすめする4品
そんなベテランコンビによる「アルチェッポ」において、美食家でもある塩沢さんが「一口目から最後の一口までおいしい!」と絶賛するおすすめメニューを、アンティパストから順にご紹介。
シェフの思いの詰まった逸品「ポロ葱のクリームゴルゴンゾーラグラタン」
「イタリアにもどこにもない料理です」と今井シェフが胸を張るこの店のスペシャリテがこちらのグラタン。ポロねぎをイタリアの青カビチーズ・ゴルゴンゾーラのソースで焼き上げたものだ。
イタリア時代、今井シェフが祭りで出会って感動した料理をヒントに作り上げたメニューだという。20年以上も前に店で出したところ大好評で「またあれが食べたい」「あれはないの?」という声が多く、夏でもメニューから外せない定番になってしまったとか。
塩沢さん
アンティパストであればまずはこれ。他にトリッパもおすすめです。ソースを余すところなく味わいたいので、パーネ(パン)はおかわり。あとは、季節に合わせて白いんげん豆やアスパラなどをチョイスすることが多いです。
季節を感じる一皿「真ダコと白いんげん豆、じゃがいものカラスミ風味」
驚くほど柔らかなタコがメインのこの料理は、白いんげん豆とじゃがいもの他は、その日にある季節の野菜がたっぷりと入る。どの野菜も香りや食感がきちんと表現され、カラスミの塩気と旨味がそれを持ち上げてくれる。
魚介料理を得意とする今井シェフだが、実は釣り好きと聞いてそれも納得。時には自身で釣った魚がメニューに登場することもあるという。この日のタコも実はシェフが釣り上げたという大きな真ダコを使っていた。