日本でも新年のお菓子として浸透中! ガレット・デ・ロワってどんなお菓子?

ガレット・デ・ロワとは、直訳すると「王様の(丸く平たい)お菓子」の意味。フランスでは、1月6日の公現節(エピファニー)にこのお菓子を食べる。

聖書によれば、東方に住む3人の博士(占星術師)が、救世主(イエス・キリスト)が誕生したことを示す赤い星が空に輝いているのを見つけた。その星のあとをラクダで追うこと12日間、エルサレムに近いベツレヘムという場所にある馬小屋に辿り着いた(キリストの誕生12月25日+12日間=1月6日)。

写真:gettyimages

3人はそこで生まれたばかりのイエス・キリストに会い、宝物を捧げた。これにより救世主が公に現れたことが知られ、公現節と呼ばれるようになる。3人の博士はのちに3人の王様と解釈されるようになる。

ガレット・デ・ロワは、基本的にはアーモンドクリームをパイ生地で包んで、丸く焼いたお菓子だ。表面には、「渦巻き模様」(太陽=生命力)、「4枚の葉模様」(月桂樹=栄光)、「矢羽根模様」(麦の穂=五穀豊穣)などの切り込み模様が施される。

写真:gettyimages

フランスでは、クリームの中にはフェーヴと呼ばれる小さな陶器製の飾りが入れられ、自分のピースにこれが入っていれば、王冠をかぶり、王様になれるというゲームが行われる(日本では、クリームの中にアーモンド等を1粒入れ、陶器の飾りは別添えされることが多い)。

新年の幕開けを盛り上げる、2023年におすすめの「ガレット・デ・ロワ」3選

【1】「ラウンジ ORIGAMI」

写真:お店から

ザ・キャピトルホテル 東急は、東京・永田町にある、溜池山王駅・国会議事堂前駅地下直結のラグジュアリーホテル。3Fにある「ラウンジ ORIGAMI」では、2022年12月30日~2023年1月13日の間、数量限定でガレット・デ・ロワが販売される。

こちらの「ガレット・デ・ロワ」は、シェフパティシエ・安里哲也氏がパイ生地の粉から吟味し、芳醇な香りの国産バター、杏仁のように香り高く、ややビターで力強い味わいのイタリア・シチリア産アーモンドを選び、オーク樽での長期熟成による品格ある芳香をもつ最高級のディロンラムのフレーバーをマリアージュさせて作り上げた逸品。

「ガレット・デ・ロワ」4,320円

まず箱を開けたときの香りがとんでもなく素晴らしい。しっかりと焼かれたパイ生地の香ばしさ、バターの豊かな香り、アーモンドとラム酒が放つ甘い香りなどが一体となって鼻腔をくすぐり、期待感がMAXに高まる。

大胆に切り込みを入れ、しっかりと模様を浮き立たせた表面はしっかりと焼かれ、仕上げに一度キャラメル化させて細かく粉砕した砂糖を振りかけ溶かして美しく輝きのある照りを出している。底生地にもしっかりと火が通されている。

もちろん味わいも食感も期待を裏切らない。パイ生地はフィユタージュ・アンヴェルセ※ で、軽く口溶けがよい。アーモンドクリームはしっとりとしてアーモンドの旨味が強く、ラム酒の奥深さと相まってエレガントな味わいが口いっぱいに広がる。

こちらでは、フェーヴの代わりに栗が1粒、アーモンドクリームの中に入れられている。通常アーモンドを1粒入れることが多いが、切りやすいようにと柔らかく煮た自家製の栗のコンポートを使うのだという。その栗もほっくりとした食感で優しい甘味と旨味を添える。

※ 通常の仕込みのパイは「生地」で「バター」を包んで折り込んでいくが、フィユタージュ・アンヴェルセ(逆さ仕込み)では、逆に小麦粉を含む「バター」で「生地」を折り込んでいく。後者の方がグルテンの形成が少なく、軽やかな食感となる。

【2】「パティシエ シマ」

「パティシエ シマ」は「マキシム・ド・パリ銀座店」のシェフパティシエや「A.ルコント」の総製菓長も務められた島田進氏が1998年に麹町にオープンしたお店。島田進氏は、日本のトップパティシエ・ブーランジェがメンバーを成す「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」の初代会長(現名誉会長)も務め、2018年には、フランス政府より農事功労章オフィシエを受勲。

現在は、ご子息の島田徹氏がお店を牽引。徹氏は、A.ルコントで修業後渡仏され「ピエール・エルメ」、超一流ホテル「ル・ブリストル」などで修業。2009年に「パティシエ シマ」エグゼクティブ・シェフに就任。伝統を大切にしつつ、表現方法とおいしさの調和を考えながら、新たな価値の創造を追求している。

「ガレット・デ・ロワ クラシック」3,456円

箱を開けると、見事な切り込み模様が施された美しい表面が現れる。太い線はナイフの背で、細かな線はナイフの刃の部分を使って描くのだという。 ガレット・デ・ロワは、前述のとおり公現節のお菓子で、キリスト教徒であれば、富める者だけでなく貧しき者も等しく祝うことができるように薄く作られるのが伝統だ。しかし近時は、パイ生地の味わいや食感の側面が重視され、厚めに作られることが多くなった。シマではパイ生地を浮かせながらも、伝統を重んじて一定の高さで止めている。

パイ生地は香ばしく焼かれ、フィユタージュ・アンヴェルセで作られているため、軽やかな食感でほろほろと崩れ、口どけがよい。また中身は、通常のアーモンドクリームにカスタードクリームを加えた、クレーム・フランジパーヌとなっていて、しっとりとまろやかな味わいとなっている。

従来、シマでは食後のデザートとしても食べられるように、やや軽めの味わいに仕上げていたが、最近は一切れでも満足できるようなアーモンドの旨味強めの重厚な味わいに仕上げている。 ガレット・デ・ロワは「クラシック」のほか「ピスタチオ」も販売予定。店舗でのガレット・デ・ロワの販売期間は、2022年12月27日〜2023年1月31日(1月1日〜4日は休業)。

【3】「パティスリー パクタージュ」

撮影:外山温子

齋藤由季シェフは、日本のパティスリーで修行後、渡仏。フランス南部モンペリエの二つ星レストランやリヨンの老舗パティスリー・ショコラトリーで研鑽を積み、帰国後は「パリ・セヴェイユ」などを経て、南品川「レ・サンク・エピス」のシェフパティシエールに。2013年に独立し「パティスリー パクタージュ」をオープン。齋藤シェフのご主人・久保雅彦氏もパティシエで、2人でお店を運営している。

こちらのパイ生地は、チャーン製法※ で作られた香り高く濃厚な味わいの国産の特選発酵バターを特殊な折数で幾重にも織り込み、しっかりと濃い色に焼き込むことで、香ばしくさっくりとした食感を実現している。

※ 現在バターは、撹拌→バターミルクの除去→練圧などの工程を効率よく一気に短時間で行うことができる連続式バターマシンで製造するのが主流。チャーン製法も原理は同じだが、ヨーロッパの伝統的な製法にのっとり、時間をかけて作られ、香り高く深い味わいのバターに仕上がる。

「ガレット・デ・ロワ」 写真:お店から

中に入れられたクリームの味わいがくっきりと感じられるよう、パイ生地は、やや塩味のある味わいに仕上げられている。中のクリームには、2種類のスペイン産アーモンドパウダーがブレンドして使われている。甘味のある「マルコナ種」と野性味のある「バレンシア種」だ。

これに卵、発酵バターをたっぷりと合わせて、カスタードクリームを加え、旨味があるこっくりとした味わいのクレーム・フランジパーヌに仕上げられている。全体として力強く、素朴でありながらも贅沢感の感じられる逸品だ。

ガレット・デ・ロワの販売期間は、2022年12月31日~2023年1月21日(途中正月休業あり)。サイズと価格は「4号(12cm)」2,700円(限定40台)、「5号(15cm)」3,300円(限定30台)、「6号(18cm)」4,200円(限定20台)となっている。

※価格はすべて税込です。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・撮影:猫井登

文:猫井登、食べログマガジン編集部