【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#44】「Epice舞」
昔から中央線沿線にはカレーの名店が多い印象があります。御茶ノ水は日本一のカレー激戦区神保町に隣接するエリアであり、荻窪にはミシュランビブグルマン店や大行列店が複数あり、その他にも西荻窪、八王子、高円寺と、それぞれ独自のカレー文化が形成されています。そんな中央線の立川駅がここのところカレーで盛り上がっているのをご存じでしょうか?
立川でカレーと言えば「レインボウスパイス」が有名ですが、そちらと逆サイドの北側に、新進気鋭のカレーの名店が立ち並ぶ「立川新カレー通り」があるのです。今回ご紹介するお店はその立川新カレー通りで間借りカレー店を営み、2021年末にひとつ隣の通りで独立リニューアル移転という形で開店した「Epice舞」です。
見た目からして華やかなスパイスカレーかなと思いきや、食べてみるとまるで違うことに気づくでしょう。カレーとしてのベースはネパール料理。しかし、素朴である意味地味とも言えるネパール料理とはまるで違う華やかさを感じさせる料理の数々。
実はこちらのシェフ、大阪のミシュラン三つ星店として知られる「HAJIME」出身。さらには大阪でもカレーの人気店である「ダルバート食堂」にも一時期いらしたというのですから凄い経歴です。元々はHAJIMEでフレンチやイノベーティブフュージョンを修業していた中でスパイスに魅せられ、ダルバート食堂を経て立川で間借りカレー「野菜と創作Curry舞」を開店。2年弱の営業を経て、この度の開店となったとのこと。
看板メニューの「舞プレート」1,300円~1,500円※に「追加カレー」300円~500円をプラス。「ダルバートプレート」1,000円~1,200円※には「スパイシー半熟玉子」150円をトッピングしてオーダーしました。
※ いずれのプレートも選ぶカレーによって価格が変動します。
見るからに華やかな舞プレート。この日のメニューから、スパイシーチキンカレー、下仁田ねぎと里芋のベジタブルカレーをチョイス。ご飯の周りを彩る副菜が非常に個性的で、手が込んでいます。一番目を引くのが17種野菜の炊き合わせ。なかなかカレーやエスニックでは使われないロマネスコや紅芯大根など、それぞれ素材の食感や味が一番引き立つ形に仕込みを変えたものを合わせた料理です。
さらにはスパイスを使用したきんぴらごぼうもあり、この副菜だけでも満足できるレベル。チキンカレーはネパール料理のククラコマスをベースとしたオーセンティックなスタイル。ベジタブルカレーは、ねぎと里芋の食感がたまりません。ダル(豆のスープ)も一緒についてきます。ひとつひとつは引き算の味なのですが、混ぜながら食べて行くとこれが合わさってどんどんおいしさと幸せが重なっていく形。
引き算と言ってもひとつを食べただけで十分成立するギリギリのバランスが保たれている素晴らしさ。感動的です。デザートには、黒豆がのった自家製ヨーグルトもついてきて放心状態。凄い!
ダルバートには赤みそキーマカレーをチョイス。これがまたおいしい! 赤みその旨みと奥深さがキーマと完璧に調和しています。副菜はダルバート(ネパールの定食)らしくタルカリ(野菜のスパイス炒め煮)、サグ(青菜炒め)、アチャール(スパイス漬物)にダル。これにスパイスカレー的なカレーを合わせるという形は都内でも珍しいです。スパイシー半熟玉子の火入れも完璧でうっとり。
完全にノックアウトされました。ノックアウトのされ方にも色々あるのですが、重いパンチで殴られまくってノックアウトではなく、いつの間にか綺麗に投げ飛ばされ、そのまま流れるように絞め技を喰らって気づいたら落ちていたというようなノックアウトです。スパイスによる力技ではなく、素材を活かした技術と惜しみなくかけた手間暇の勝利。そんな料理でした。夜にはコース料理も準備中とのことでとても気になります。
地元野菜を使うことにもこだわり「スパイスというフィルターを通して地域の食材や文化を発信したい」と語ってくれたシェフ。その姿勢も素晴らしいです。新たに盛り上がりを見せている立川の中でも、代表的と言える名店の誕生。わざわざ行く価値のあるお店ですよ!