【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレー#152】「ラナンクルス 」
2月18日に、東京メトロ副都心線・東新宿駅から徒歩5分程の場所にあるビルのバーで、間借りカレーのお店が誕生しました。その名も「ラナンクルス」。
間借りカレーのお店も本当に増えてきていて、おいしいお店もあれば正直これはどうかと思うお店もあります。しかし、面白ければ良いと僕は思っています。間借りだからこその冒険ができる部分もありますし、おいしいかどうかよりも面白さを追求するカレーがあっても良いと思うのです。
ではこちらのお店はどうかというと、おいしいのです。そして面白さもあります。それもそのはず。こちらの店主は、埼玉・大宮にある知る人ぞ知る名店「紅茶屋さん」でスリランカ料理を修業。そして大阪カレー界を代表するお店のひとつといえる名店「虹の仏」で出汁カレーを習得してきたという経歴の持ち主。
さらに言えば学生時代からカレー専門店でアルバイトをし、激戦区高円寺の某人気店でも働いていたという方。色々なお店で色々なカレーを味わい、すぐ近くで作るところを見てきたということも味に活かされているのでしょう。
一見ふわっとした印象の方ですが、大学卒業後、カレーと同様に好きだったファッションの仕事をしたいということでアパレル企業に就職したものの身体を壊し、その後IT系の企業に就職。その間に「やっぱりもう一度やりたいことを貫きたい!」と一念発起。遂に間借りカレーのお店の開店に漕ぎ着けたという根性のある方なのです。
「Curryプレート」980円にトッピングを全部つけていただきました。トッピングは「味玉」100円、「パクチー増量」100円、「ヨーグルト&キトゥルハニー」100円と、すべて100円なのが分かりやすいです。ヨーグルトはトッピングというよりデザート的な形でした。
カレーは虹の仏のテイストを受け継ぐ、だしのうま味とスパイスの香りが融合した大阪出汁カレー。豆カレーも牛豚キーマも、どちらにもだしをたっぷりと使い、深味とパンチの利いたおいしさに仕上がっています。
このまわりを彩るのが紅茶屋さんのテイストを受け継ぐスリランカ家庭料理の数々。副菜も手書きで可愛らしくホワイトボードにまとめられてあり、紫だいこんのテルダーラ(少し辛い)、にんじんカレー(甘)、りんご酢リンゴ(シャキシャキ)、みつ葉のポルサンボール(さっぱり)と、甘さ、辛さ、食感をそれぞれ違うベクトルに持っていき、トータルで全体の調和をはかる構成になっていて、昨今のスパイスカレーにしばしば見受けられる、とりあえず見た目が良いのでこれをのせておく的な副菜ではなく、しっかりと意味を感じる副菜だったのが好印象。
実際食べてみたらどれも単体では薄目の味付けでありつつ、混ぜるとおいしさが花開くような計算された味付けになっていました。
花といえばご飯の上にラディッシュで作った花飾りもあり、この見た目の美しさも元アパレル業界にいた店主ならではのセンスだなと感じます。特にりんご酢リンゴはシャキシャキの食感のみならず、程良い酸味と、粒胡椒が隠されていて心地良い刺激もあり、気に入りました。
虹の仏、紅茶屋さん、それぞれの味のポイントとなる部分をしっかりと受け継ぎつつ、独自のセンスも感じられるのが楽しいです。そのままの味であればそのお店に行けば良いわけですが、ラナンクルスの味になっているからこそ、これが食べたくなったらラナンクルスに行かねばならなくなるのです。
食後に紅茶屋さんから仕入れているという紅茶もいただきました。ボンボンティーという、ボンボンキャンディーと一緒にいただく紅茶です。「ボンボンティーココナッツミルク」500円はポットに入った紅茶に選べるボンボンキャンディー、そしてココナッツミルクがついてきます。
それぞれ単体で飲んでみたり、混ぜ合わせて飲んでみたりと、こちらのお店のカレーのように混ぜていくことによって変化する楽しさを紅茶でも味わえてとても良いです。「これも紅茶屋さんで習ったのですか?」と聞くと、「これは私のアイディアなんです!」と。今も紅茶屋さんに通い、一部のメニューは師匠と一緒に考えたりしているそうです。スリランカ料理も色々と作れるそうで、今後はスリランカプレートにも挑戦したいと語ってくれました。
僕が行ったのが開店日だったということもあってか、虹の仏のオーナーシェフも食べに来ていました。「教え子のカレー、どうでした?」と聞いてみると「開店初日でこのクオリティならなかなか。これからもっと伸びていくと思いますよ」と笑顔。その後さらなるアドバイスもしていたようです。
素晴らしい師匠に恵まれた店主の新しいお店。これからも期待できそうです。現在は広いお店を一人で回しているということもあり、時間に余裕を持って行きたいところ。その際にはゆっくりとカレーも紅茶も楽しみたいですね。
※価格はすべて税込