老舗酒蔵が提案する、極上の日本酒エクスペリエンス

兵庫県で日本酒を醸すヤヱガキ酒造による、テイスティングならびに販売を行う直営ショップ「長谷川栄雅 六本木」が、昨年12月にオープンした。テイスティング体験では、有名シェフによるメニューを導入するなど、これまでにはない斬新な試みで日本酒の魅力を発信する。4月より新たなアテメニューを手がけるのは、所在地非公開で完全紹介制のレストラン「été(エテ)」のオーナーシェフである庄司夏子さん。その内容と共に楽しみ方をご紹介する。

まるでミュージアムのような優美な空間「長谷川栄雅 六本木」

昨年12月、六本木の「国立新美術館」近くの龍土町美術館通りに、寛文6年(1666年)創業の兵庫県姫路市のヤヱガキ酒造が手掛ける「長谷川栄雅 六本木」が誕生した。日本酒を味わうための酒器、肴、空間などすべてにおいて、日本の職人技を感じる美意識によって統一されているこちら。体験型のテイスティングが人気を集めている。

暖簾をくぐり中へと進むと、まるでミュージアムのような空間が広がる。六角形の台に並ぶのは、店舗のオープンと同日に発売された日本酒「長谷川栄雅」全5種類。最高級の山田錦と名勝「鹿ヶ壺」を源流とする揖保川水系林田川の伏流水を使用し、伝統の酒造技法「蓋麹法」で醸造した最高級の日本酒ブランドだ。酒袋にもろみを詰め、吊るし、袋から染み出した、したたり落ちる一滴一滴を集めていく「袋搾り」という手法で、3年の歳月を経て誕生した。

 

こちら「長谷川栄雅 六本木」と直販オンラインストア(http://www.hasegawaeiga.com)でしか購入できない限定品。購入価格は、「栄雅 純米大吟醸」30,000円、「栄雅 特別純米」25,000円、「長谷川 純米大吟醸 三割五分」15,000円、「長谷川 純米大吟醸 五割」10,000円、「長谷川 特別純米」5,000円。それぞれ家紋が施された立派な木箱またはスタイリッシュな紙箱に入れられているので、ギフトにも最適だ。

 

真っ白な壁には本物の水が流れており、空間のBGMとなっているのもまた風情がある。その壁をスクリーンにして、ヤヱガキ酒造の酒蔵での酒造りの様子や、原材料となるお米の田んぼの映像が写されているので、ぜひご覧いただきたい。

「長谷川栄雅」の5種類それぞれの味わいを最大限に楽しむため、形状を追求した酒器を用意。陶芸家の保立 剛さんと岩崎龍二さんに依頼したオリジナルの作品は、実際に試飲体験で使用され、ゲストから好評を得ている。今後、販売予定だそう。

日本酒、肴、空間、贅沢尽くしの体験

扉を開け、隣の部屋へ進むと、畳の空間が広がる。障子越しに自然光が差し込む空間は、時間帯によって異なる雰囲気を演出。シンプルな空間のなかで目を惹く生け花は、華道家の中村俊月さんによるもので、毎週替わり、日本ならではの美しい季節の移ろいを感じることができる。

席に着くと、こちらの写真のようにお酒に合わせた肴と、5つの酒器、和らぎ水、おしぼり、メニューなどが並ぶ。美しく整えられたお膳は、目でも日本の美を楽しませてくれる。1種類ずつ日本酒を注ぎながら、丁寧な解説をしてくれるので、日本酒について学ぶこともできるのも楽しい。海外のゲストを連れて行くのにも最適だ。

試飲体験では、全5種類の日本酒を精米歩合の高いものから低いものへと順に味わっていく。酒器の形状と味わいの組み合わせ、肴とのペアリングなど、リアルに体験することができる。飲み比べることで、「長谷川栄雅」の1本1本の個性が見えてくるので、お好みの1本を見つけ、帰りに購入するのもいいだろう。

 

予約制の日本酒体験(5,000円)は、1回4名までで、1日5組限定。常に貸し切りの状態で、丁寧なおもてなしを受けることができる。所要時間は、1回およそ40分。ウェブサイトにて予約を受け付けている。

「été」の庄司シェフが「長谷川栄雅」のために作る優美な肴

4月から6月末まで、日本酒体験の肴のプロデュースをするのは、「été(エテ)」オーナーシェフの庄司夏子さん。「ル・ジュー・ドゥ・ラシエット(現・レクテ)」、「フロリレージュ」でパティシエおよびスーシェフを務め、24歳で独立。完全予約制・数量限定販売のプレミアムスイーツ「Fleur d’été(フルール・ド・エテ)」で話題を呼ぶ。2015年に所在地・電話番号非公開の完全紹介制のレストラン「été」をオープン。国内外で活躍する注目の女性シェフだ。

 

「今回こういった機会をいただけて大変光栄に思います。私のお店も4名までお客様をお迎えできる空間ですので、『長谷川栄雅』の日本酒体験でお迎えするお客様の人数と同じです。少人数だからこそ提供可能なスペシャルなアテをつくれたらと思い、メニューから器にまで考え抜きました」(庄司さん)

庄司さんがプロデュースするお品書きはこちら。春らしく心躍るような内容だ。

 

・ホワイトアスパラガスのお浸し、季節の柑橘
・ウドのピクルス、春の香り
・塩漬け卵黄の酒粕漬け
・菜の花と蕗の薹のタルト
・酒香るガナシュ、求肥

スタートは、アンティークのバカラに入ったホワイトアスパラガスと「栄雅 純米大吟醸」。極細の麺状にしたホワイトアスパラガスには、柚子など季節の柑橘が添えられた爽やかな仕上がり。山田錦を30%まで磨いた「栄雅 純米大吟醸」の洗練された飲み口と非常によく合う。解説と共に一杯ずつ飲み進めて行き、最後は「été」のロゴ入りの紙に包まれた求肥のデザート。いずれも春らしい表現がされた肴で、目で楽しみ、口に運ぶと驚きが待っている。

 

希少な日本酒「長谷川栄雅」5種類と、予約困難店「été」の肴5種類。日本の伝統や文化を存分に感じることができる日本酒体験をぜひ予約してみていただきたい。

 

https://hasegawaeiga.com/

※日本酒体験の予約はウェブサイトから受付。予約は前日20:00まで、キャンセルは前日18:00まで

※価格は税抜

取材・文/外川ゆい

撮影/sono(bean)