〈噂の新店〉
2023年12月、大阪・北新地に誕生した焼きたてフィナンシェ専門店「ポアール・ル・ボン・ブール」。大阪・帝塚山の名パティスリー「ポアール」の新展開だけあり、“攻め”の逸品ぞろいです! 大阪在住のフードライター船井香緒里が実食レポートします。
教えてくれる人
船井香緒里
福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸製造メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・ライター。「あまから手帖」「dancyu」「BRUTUS」などでの食にまつわる執筆をはじめ、「dancyu.jp」で連載「大阪呑める食堂」を担当。食の取り寄せサイトや、飲食店舗などのキュレーションもおこなう。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。
大阪・帝塚山の名店「ポアール」がフィナンシェに特化したワケ
大阪・北新地本通に誕生した「ポアール・ル・ボン ブール」。多くの芸能人や著名人からも愛され続けている、帝塚山の老舗洋菓子店「ポアール」が新たに展開する、焼きたてフィナンシェ専門店です。
手がけるのは、グランシェフであり代表取締役社長の辻井良樹さん。「フィナンシェは元々、本店などでご提供していたのですが、“もっとおいしく、もっとブラッシュアップさせたい”という思いが膨らみました。スタッフと一緒にとことん突き詰め、見えてきた新しいカタチを、この専門店で表現します」(辻井シェフ)
小さな店内に足を踏み入れると、ふわっと漂うバターのリッチな香り! それだけで幸せな気分に浸れる中、ショーケースには、しっかり焼き込んだ定番のフィナンシェをはじめ、刻んだピスタチオに覆われたフィナンシェや、華やかな季節限定のフィナンシェに至るまでアイテム数は約10種。
「数え切れないくらいの試作を重ねて、最終的に残った精鋭のフィナンシェ、といったところでしょうか。ずばり原価よりも味を最優先、僕たちの自信作です!」と、辻井シェフは目を輝かせます。
素材への飽くなき探究はもちろん“形”にもこだわる
そもそもフィナンシェとは、フランス語で「お金持ち」を意味する言葉。だから「金塊」をイメージした台が特徴なのですが、「ポアール・ル・ボン ブール」のフィナンシェは貝形!
“金塊形じゃないとフィナンシェじゃない!”という方もいらっしゃるかもしれませんが、この貝の形が実に優れもの! フチの薄い所は香ばしくてカリサクッ。こんもりと厚みのある所は、しっとりふんわり。食感のコントラストが心地よく、そこに広がるのは焼きたてならではの高貴な香り……。だから、もう 個……とついつい手が伸びるのです。
素材への飽くなき探究が、辻井シェフならでは。生地の要となるアーモンドは、スペイン産の高級品種・マルコナ種を使用。なんと、その日に使う分だけ、毎朝自家びきにするところから始めるのだとか。皮ごとひいて香りを立たせるだけでなく、口当たりが良くなるよう、ひき具合を徐々に細かくするなど、味づくりの追求は細部に至るまで見て取れます。
さらに国産発酵バターやフランス産小麦を用い、「シンプルに、いい素材だけを生かしてフィナンシェを焼き上げています」とのこと。