【じっくり食べたいハンバーガー】第29回「WAVES」(ウェーブス)

いい季節になりました。ちょっとお出かけしておいしいものを食べるには、5月はちょうどいい季節です。今回はそんな季節にぴったりのハンバーガー店をご紹介します。場所は東京・国立。郊外の店ならではの魅力をたっぷりお伝えしましょう。

国立駅前から真っ直ぐ伸びる「大学通り」という大通りがあります。その通り沿いにある人気のハンバーガーショップが「ウェーブス」です。見てください、つい立ち止まらずにはいられない、この反則的な可愛さを! ただし……場所は駅前に非ず。JR中央線・国立駅から約1km。もうひとつの最寄り駅、JR南武線・谷保駅からも約1.1km。どっちから行っても1kmのちょうど中間に店はあります。ですが、土地が平らなのと、沿道の建物が低くて、空も視界も開けているので、なかなか気持ちのいい散策が楽しめます。都心の1kmとは全然違いますね。

一軒屋のハンバーガーショップは都内では稀少

地元の人なら誰もが知るこの黄色い建物。ここは以前、結婚式ができるフレンチレストランでした。今も2階にはチャペルがそのまま残っているそうです。その1階部分を店主・佐藤雄さんたちが借りたのは2019年秋のこと。しかし、いい物件を見つけたものです。ヴィクトリアン調のクラシカルな建物にハンバーガーショップのリノベーションが見事にハマって、秀逸なるポップセンス!

席もゆったり広々。南に向いた窓から日が差して、店内は常に明るくさわやか

都内の有名カフェでマネージャーをしていた佐藤さん。ここで店を始めるに当たり、タコライス、ロコモコ、ランチパスタなど、最初はバーガー以外のメニューも出して様子をうかがっていましたが、フタを開けてみれば、ハンバーガーばかりに注文が集中。そこで2、3カ月で方針転換。一気にハンバーガー屋に“寄せて”、バーガーの品数を増やしたところ、それを「全制覇」する客が続出。中にはポイントカードが10枚以上溜まっているという熱烈な常連さんもいらっしゃるそうです。彼らをそこまで熱狂させるものは何か……その秘密を探って参りましょう。

バーガーメニューは全13品あります。まずは「ザ・シンプルバーガー」から。

「ザ・シンプルバーガー」968円。サイドのポテトは本来は皮付き。品不足につき、今はシューストリングで提供中

パティはUSビーフ120g。チャックアイロールとブリスケット、2カ所の部位に国産牛の脂をミックス。ステーキ的なごっついパティを目指した時期もありましたが、不評につき、現在のほどよい粗挽きに落ち着いています。グリルは鉄板で。バンズは全粒粉。チーズはチェダー。かぶりつけば、強めの粗挽きコショウに焦げたチーズの味。バーガー中央付近に甘味を感じるマヨネーズ。このマヨネーズがアツアツで、バーガー全体もアツアツです。コショウ強め&野菜なしのチーズバーガー、すなわち、ロッテリアの「絶品チーズバーガー」的バーガーということで、ビールとともに楽しみたい一品です。

「ベーコンエッグバーガー」1,463円にチェダーチーズとハラペーニョ(各110円)をトッピング

店主・佐藤さんのお気に入りは「ベーコンエッグバーガー」にチェダーチーズとハラペーニョのトッピング。よその店へ行くとき、佐藤さんはいつもこの組み合わせで食べるそうです。私も頼んでみました。中身の「圧」がすごいバーガーです。挟まる具材から弾けるばかりの強い「出力」が感じられます。その調整役がバンズ。直径12cmのちょっと大きめサイズの全粒粉バンズですが、オーブンでしっかりトーストして表皮がシャリシャリ。レタスのサクサクとともに、上下から食感を利かせて「カチッ」とした輪郭をハンバーガーに与えています。

この輪郭がなければ、制御が利かずにグチャグチャになってしまいそうなところを、カチッとまとめ上げるバンズの役割は極めて重要。パティは結着やや硬めのコショウ強め。甘いのはグリルしたオニオン。ハラペーニョもよく利いています。冷たいコーラで一気に流し込むと気持ちいいバーガーです。

「アボカドサルサバーガー」1,518円。白いソースはタルタル。クラウン(上バンズ)の裏にマヨネーズ、ヒール(下バンズ)にはグレイビーソースが塗られている

もう一丁、派手なヤツを。夏も近いので「アボカドサルサバーガー」を行ってみましょう。スライスしたアボカド4分の1個、トマトサルサ、ハラペーニョがのる一品です。かぶりつけば、やはりバンズがパリパリ。そこへ、向こうから飛び込んで来るようなサルサとハラペーニョの辛味。コショウもヒリリと利いて、打ち上げ花火のようにパンパンと辛味が決まる華やかさ。派手で陽気でにぎやか。パクチーもさわやかに利いています。そんな中、ビーフパティはしっかりと“噛ませる”存在感。ウェーブスのバーガーは、トッピングをいろいろのせて楽しいバーガーだと思います。

過去のマンスリーバーガーより。歴代人気作は、アイオリソースを使った「ハングリーバップ」、カレーのバーガー「ドライグリーンキーマ」など

その楽しさの極みが「マンスリーバーガー」。月替わりの限定バーガーです。趣向を凝らした変わり種のバーガーを毎月売り出していますが、これまた大人気で「コンプリート」している常連さんが多数いらっしゃるそう。味もさることながら、注目は差し込みメニュー。こんなに楽しく作ったら、そりゃあ皆さん頼みますよ。ウェーブスのハンバーガーには楽しさがあります。ハンバーガーという食べ物が持つ楽しい一面を、上手く視覚化・具体化できているお店に思いますね。

「シュリンプアボカドサンド」1,155円。もう一品のサンド「アメリカンルーベンサンド」もボリューム満点で好評

ボリューミーなサンドイッチも人気です。「シュリンプアボカドサンド」はイギリスパンの間にサニーレタス、紫キャベツのマリネ、トマト、アボカド、そしてボイルした海老が8〜9尾。ポイントは「サウザンドソース」。これが実にキャッチーなソースで、魅惑のサンドイッチの世界に巧みに誘ってくれます。ハバネロソースもよく利いて、パンチがあってパワフル。イギリスパンは耳が芳ばしく、ザラッとドライな質感もすごくいいです。非常に味わいどころの多いサンドイッチに思います。

「フィッシュ&チップス」825円

最後は8品あるサイドメニューから「フィッシュ&チップス」。自家製です。大きく切ったスケソウダラの切り身にビアバッターを付けてフライに。ふんわり揚がった白身にガーリックが芳ばしく絡んで、スナック感満点! しかもアツアツ! 食べごたえのある一皿です。フィッシュが3つなので、2人で頼むとちょっと取り合いになるかも。

それとコーヒーが非常に美味! 国分寺のロースタリーカフェ「ライフサイズクライブ」の豆を使用。ローストの苦味がしっかり利いたカフェラテが、ハンバーガーとセットだと、たった330円で飲めちゃうという……これは安過ぎですよ。

明るい日差しと空気に満ち満ちたハンバーガーショップです。大学通りは桜の名所なので、花見の時季もおすすめ。テイクアウトして、通りのベンチで食べるのもいいんじゃないでしょうか。ぜひお試しを!

※価格はすべて税込

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

取材・撮影・文:松原好秀