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伊藤淳史の知られざる大好物とは
映画『ねこあつめの家』で伊藤淳史さんが演じた佐久本 勝は幼少期のあるモノをきっかけに人生が好転する。伊藤さんご自身が小さい頃の好物を無理矢理聞いてみると……。
伊藤、以下・伊 焼きそばですね。小さい頃、母が結構な頻度で作ってくれていたんです。もうひとつの好物は、お好み焼き。家族全員で食卓を囲んで、父親が焼いてくれていました。
内埜、以下・内 千葉県ご出身なのに、お好み焼き?
伊 そうです。あまり“千葉感”がありませんけど(笑)、思い出の味です。
家族で食卓を囲むのがすごく楽しかったっていうのは覚えているんですけど、お好み焼きって裏返すのが難しいじゃないですか。僕がやるとちょこちょこ失敗した記憶があります。
内 お気に入りの具は?
伊 僕、昔からイカが好きで、いまでも大好物です。うちの母親も「世界で一番イカが好き。」って言うほど大好物なんです。
内 「世界で一番」と断言するとは(笑)。好きなイカの食べ方は。
伊 さくで売っているイカを最初は刺し身で食べて、残りは表面を軽~く炙って食べるのが定番です。おでんの具ならゲソ巻きとか。イカなら部位はどこでも大好物です。
今回のインタビュー時間は20分強とごくわずか。マストの質問をどんどんぶつけていかなければならない状況なのに、伊藤さんの言葉に♪肴はあぶった イカでいいぃ~♪という歌詞が脳内リピートされてしまいます。
思わず「お酒に合いそうですね。」とつぶやくと、伊藤さんも「合いますよ。」と即答。最近はハイボールがお好きなのだとか。
お酒の話になったら、酔うとどう変化するのか気になるところです。
伊 酔うとテンションが高くなって、いつもの1.5倍ぐらいに話す量が増えます。
僕、普段からしゃべる方なんです。控え室で共演者の方と衣装さんがいる中でしゃべり倒していたら、ヘアメイクさんに「ひとりでしゃべっているよね。」とツッコミを入れられたこともあります(笑)。
基本、酔うと楽しくなるから、さらにトーク量が増えてしまうんでしょうね。
スミマセン、私は寡黙な方だと勝手にイメージしていました。
ですが初めて取材させていただき、その気さくなお人柄と現場を盛り上げてくださる誠実な姿に感動。伊藤さん、素敵過ぎます!
本当は犬派なのですが……。
もちろん、映画の話もお伺いしますよ。伊藤さんが演じた佐久本は猫の魅力に開眼し溺れた結果、飼育する野良猫の数が増えて自宅が猫まみれになります。
元ネタであるスマホゲーム『ねこあつめ』と同じ環境になるわけですが、「ゲームをどうやって映画にするのか。」と感じた人もいるのではないでしょうか。同じ疑問を伊藤さんにも聞きました。
伊 僕もお話を頂いた時点では、どういう作品に仕上がるのか想像できなかったんです。でも台本を読んだらしっかりとした人間ドラマが描かれている上で、猫も重要な存在を担っているのが、この作品の肝だと感じました。
佐久本を含めた登場人物の人生もゲーム的に描かれているのではなく、人間味あふれる物語として成立しているのが魅力なんですよね。
映画をご覧になるとわかりますが、まさに伊藤さんのおっしゃるとおりなのです。登場人物たちの歩む人生は、紆余曲折あれど濃く豊か。
個人的な意見ですが途中ふと、元はゲームアプリだったことを忘れてしまうほど。とお伝えすると、伊藤さんは笑顔で「ありがとうございます。」と言い、言葉を続けます。
伊 ハウスデラックスとか鯉のぼりトンネルとか、ゲームそのままのアイテムを忠実に再現していたりもしますから、ゲームファンの皆さんも「おおっ、あのアイテムが!」と喜んでいただけると思います。
集まってきた猫の写真を撮ってアルバムを作るシーンもあって、巧みにゲームを取り入れてあるんですよね。
と、映画では“ちゃはちさん”を演じたシナモン君に頬ずりしながら答える伊藤さん。ご自身は犬派でしょうか。それとも猫派?
伊 4~5年前から自宅で犬を飼っているから犬派です。実家でも9年ほど飼っていて、飼育歴は結構長いんです。
だから元々は断然、犬派だったんですけど、この作品の撮影で猫も飼ってみたいなと思いました。思ったんですけど……。
内 ですけど……?
伊 僕は今、家族はもちろん、犬2匹のことを全力で大切に思っています。
だから「猫も飼っちゃおうか!」と、簡単な気持ちで家に招き入れるわけにはいかない、というのが正直な気持ちですね。
猫と犬の両方を飼っている役者さんから、その2匹が仲良く生活しているなんて話を聞くと「バランスがいいんだろうな。」とは思います。犬は人間に寄り添い、猫は人間とある程度の距離感を保ちますから。
だから、もっと物理的な余裕ができたら飼ってみるのもアリかな、と。
内 ところで撮影中、愛犬たちは猫のにおいに感づいたのではないでしょうか。
伊 そうなんです。家に帰ると必ず2匹とも、僕のにおいをクンクン嗅いでました。「ああ、やっぱりわかるんだな。」と。
あのネット情報はガセネタだった!?
大スランプに陥る佐久本を演じた伊藤さん。ご自身が役者人生でスランプに陥った経験はあるのでしょうか。そう聞くと「う~ん……。」と長考後、こう答えます。
伊 作家さんはゼロから創り上げていく作業が仕事だから、「書けない」「思い浮かばない」ことがスランプに直結するかもしれませんが。でも役者って、何がスランプなのかがわからない職業なんですよね。
頂いた台本の中に役の人物像が描かれていますし、今まで頂いた役に対して「できない」と感じたこともなかったですし。
一度お引き受けしたら“やるしかない状況”にもなりますから、特にスランプを感じた時期は今まで経験していません。常に悩んだり迷ったりはしますけど、監督や先輩俳優といった相談相手もいますから、打開策は見つけられます。
えっ、では仲村トオルさんに役者として悩みを相談したというネット情報はうそ!? というわけで、聞いてみると。
内 では『チーム・バチスタ』のとき、役者人生について仲村トオルさんに相談したという……。
伊 何かの間違いですね(笑)。
トオルさんは大先輩ですし、何より生き方が素敵な方なので、人間としても役者としても尊敬しています。僕の人生で大切な時期に常に隣にいてくださった方なので、プライベートな相談はしたことはありますけど(笑)。
最近インタビューで「これはネット情報なので確認したいのですが。」と前置きすると、先の伊藤さんのようなケースがあります。今回は編集長と「聞いてみるものですね~。」とうなずき合いました。
役者生活を支える食生活は“ゆるストイック”な糖質制限
次は、伊藤さんの役者生活を支える食生活にアプローチ!
伊 普段の食生活では炭水化物を極力(体内に)入れないようにしています。特に糖質の摂取にはかなり気を付けてるつもりです。
「30歳を過ぎたら太りやすくなる。」「体質が変わる。」という話を20代後半ぐらいから聞いていましたが、当時の自分は無縁だと思っていました。暴飲暴食をしても太る兆しさえなかったから、「そんなことないだろう。」と高をくくっていたんです。
でも30歳を過ぎた辺りから太りやすくなって、「あ、ホントだ!」と(笑)。その頃ぐらいからですね、普段は糖質を取らないようにして、タンパク質を多く取り入れるようにしたのは。
毎食ごとに必ず、食事の最初にキャベツをたくさん食べることも徹底しています。キャベツ自体は食物繊維がものすごく多く含まれた野菜ではないらしいんですけど、かみごたえがあって意外と食べづらいじゃないですか。
食べる労力が掛かるから、「いっぱい食べた!」という感覚が味わえます。糖質を取るとしても最後に食べるので、糖質にたどり着く前にキャベツでおなかいっぱいになることもあります。
キャベツは水溶性だから加熱し過ぎると栄養素が消失してしまうんです。スープに入れたら栄養分を丸ごと摂取できますけど、それも手間が掛かるから極力、生で食べています。キャベツをごま油と塩昆布であえたりして。
「食材に関してお詳しいんですね。」と言うと、「いや、詳しいのはキャベツだけですよ。“詳しく知りたいスイッチ”が入ると、とことん調べてしまうこともありますけど。」と照れ笑いしながら話を続けてくれました。
伊 でも、完全に糖質制限をしているわけではないんです。みんなで飲みに行ったときに我慢をしたくないから、楽しいイベントに備えて日常では意識しているだけ。
お酒を飲んでみんなで気持ちよく酔って、「〆のラーメンでも食べに行こうか。」となったときに、日頃から糖質制限をしていると心の底から「行こう! 行こう!」と思えるんですよね。罪悪感を持たずに(笑)。
生涯最期の日に食べたい一品は?
内 人生最期の日に食べたいメニューは何ですか? 予算1万円以内で。
伊 う~ん(と数秒考えてから)お寿司! 絶対にイカは食べるとして、最後はトロも食べたいです。あとは芽ネギ。
今は営業していないんですけど、近所にあったお寿司屋さんでは、必ず芽ネギで〆てました。
内 粋ですね!
伊 そうですか? 芽ネギってちょっと鼻にくるじゃないですか。あの味が最後に口内をさっぱりとさせて終わらせてくれるから好きなんですよね。
内 その近所のお寿司屋さんは現在、営業していないとのことですが、お店の目の前で倒れたら這ってでも行きますか?
伊 這ってでも行きますね。いや、到着してみせますよ、僕は(笑)。
先ほどイカが大好物と言いましたけど、僕が世界で一番好きなのはお肉です。中でも一番の大好物が、牛のモモ肉。
ブロック肉に塩とこしょうとガーリックのみの味付けで焼いて食べたりします。お肉はそうやって近所のスーパーで買って、自分で調理できるから身近に食べられますよね。
でも、職人さんが握ってくれるお寿司は自宅では食べられないし、僕にとってはごちそう。
頻繁に食べないからこそ、人生最期となったらごちそうでフィニッシュしたい(笑)。だからやっぱり、お寿司ですね。
身近にいる大切な人にもっと甘えたり頼ったりしていい
最期の一品はお寿司でしたが、記事の〆は映画の魅力でお願いしました。
伊 猫たちの可愛らしさはスクリーンに存分に発揮されています。だけどこの作品はそれだけを描いているわけではなくて、しっかりとした人間ドラマであり、ハートフルなお話になっています。
佐久本が猫に救われたように、人間がひとりで生きていくのはすごく難しい。ひとりだと、どうしても、悩みや苦しみを抱え込みがちになるものです。僕も当然、悩み苦しむことがあります。
そういう時期にぶち当たっていたり、過去を思い出しながら映画をご覧になると、身近にいる大切な人に「ちょっと甘えてみようかな、頼ってみようかな。」と感じてもらえると思います。ぜひ劇場で、ほっとひと息ついてください。
【編集後記】
取材後、キャベツを半玉買って帰りました。
冷蔵庫には常に温野菜をストックしているのですが、
どの野菜たちもキャベツのかみごたえには勝てませんでした。
昔飼っていたウサギの、キャベツを食べる可愛過ぎる口元を
思い出しつつ食べていたら、危うくキャベツのみで満腹になるところでした……。
伊藤淳史さん主演『ねこあつめの家』は、2017年4月8日(土)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!
写真/Hiro Kimura@W