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朝ごはんを食べに京都へ。知る人ぞ知る、おじゃこやさんの朝がゆ
何度でも通いたくなる街、京都。訪れるたびに行きたい場所が増えるのがこの街の奥深さを物語っています。いま、京都好きの間で話題になっているのは「朝ごはんをどこで食べるか」ということ。老舗はもちろん、質の高い朝食を食べられる場所が増えているのです。そこで、年に数度となく京都を訪れるというフードジャーナリストの小松宏子さんに、いまおすすめの京都の朝ごはんを紹介してもらいました。今回は、じゃこで有名な店の知る人ぞ知る、限定の朝ごはん。
京都旅は、朝ごはんも充実が、今どき。「やよいのカフェ」でじゃこ三昧
京都の旅の目的といえば、なんといっても美味しいもの。ランチと夜ごはんの充実はもちろん、最近では、朝ごはんも京都ならではの美味を求めて目的の店へ、というスタイルがぐっと増えています。行列ができる有名店もあちらこちらに。そんな中で知られざる穴場といえるのがこの1軒。場所は京都、東山のシンボルでもある、八坂の塔の近く。風雅な割烹などが並ぶ、下河原の通り沿いにあるおじゃこの「やよい」です。
おじゃこ専門店の奥には北欧風のカフェが
「え? 『やよい』って、じゃこのお土産をよく買うところでしょ?」
そうなんです。町家を改装した数寄屋造りがなんとも風雅な店舗。じゃこの名店であることは、よく知られるところですが、町家のどんつきの先、坪庭を横に見て奥に入ったところに、コージーなカフェはあるのです。数寄屋の店舗とはうって変わった、木の質感を生かした北欧スタイルの粋なスペースは、「コージー=こじんまりと居心地のよい」という言葉がまさにぴったり。お茶が飲めるところが少ないエリアにあって、カフェとしての使い勝手も覚えておきたいところですが、ここで、朝食が食べられるというのだから、なんとも素敵。
メニューは2種、「じゃこ粥」と「お茶漬け膳」
朝ごはんのメニューは2種類。前日までの要予約で、10時~11時に食べられる「じゃこ粥」¥620と、11時~平日10食、土・日・祝日は20食限定の「お茶漬け膳」1,390円(いずれも税込み)。じゃこ粥はさらりと炊いた白米のおかゆにたっぷりのおじゃこ、そして、ひりょうずと野菜の炊き合わせや根菜の煮物など、体に優しい日替わりのおばんざい。さらに、生姜あんの汁ものと自家製の香の物がつく、心温まる献立。ぴーんと張り詰めた朝の空気の中で、熱々、とろとろのおかゆにたっぷりのじゃこをのせて、ふーふーと吹きながらいただくのは、なんとも幸せな時間です。
もう一つの、お茶漬け膳は、おじゃこをはじめ、やよいのつくだ煮類が勢ぞろい。季節によって変わりますが、真昆布と実山椒を含め煮にした「おこぶさん」、小粒のどんこ椎茸のつくだ煮「しいたけ」、川海老、大豆、ちりめんじゃこを品のいい甘口に仕上げた「えびじゃこまめ」、小指ほどの小さな鰯を醤油ベースで煮て、花かつおの粉をまぶした「いわし美人」など、7種ほど。そして、こちらにも、季節の野菜の小鉢がつき、さらにたっぷりだしを含んだだし巻卵と香の物。ご飯は、近江米を一人一人、土鍋で炊き上げるという贅沢な仕立てです。たっぷり2膳分はありますから、まず最初の一膳は、佃煮を少しずつご飯にのせて。2膳めはほうじ茶をかけてさらさらといただけば、味替わりで二度楽しめます。デザートも寒天寄せと焼き菓子など一口サイズの甘味が2種がつくという、至れり尽くせり。これでこのお値段は、なかなかのお値打ちです。また、こちらのメニューは、やよいの秘伝の味がもれなく試食できますから、帰りがけに店頭でお土産を購入する際の参考にも。お茶漬け膳は朝だけではありませんが、限定数が少ないので、早めの来店が必須。付近には、八坂の塔のほかにも、石塀小路沿いに名園や名家などが連なり、朝のお散歩をかねての朝食にもうってつけです。
じゃこの美味しさの秘密は丁寧な手作り
最後に、看板商品であるおじゃこについてを少し。原料であるじゃこ(いわしの稚魚)は、九州、四国産をメインに、すべて国内産。さらに、大きさや色、香りなどを手作業で厳選。兵庫丹波地方でとれる、柔らかい実山椒と炊き合わせます。厨房にはずらりと小さな鍋が並び、それぞれ、京都の地酒、みりん、醤油、家伝のたれを沸かした中に選別したちりめんと山椒を入れ、大きさなどのちりめんの規格ごとに、鍋ごとに火加減を調節しながら煮上げていきます。専門店とはいっても、昔から、家庭で大切に作られてきた手作りのスタイルがしっかり守られているのです。そんな京の手仕事を大切にした昔ながらの美味しさが堪能できる「やよいのカフェ」の朝ごはん、ぜひ、次の京都への旅でお試しあれ。
写真:久保田康夫