本場中国も顔負けな中華料理を創る店

 

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あっという間に予約が取れなくなるはず! とオープンしてすぐに取材申し込みをしたのがここ、「ミモザ」。南 俊郎シェフはまだ32歳。しかし既にシェフとして4年半の経歴を持ち2016年7月に「ミモザ」のオーナーシェフとなった。

 

さらっとシェフの経歴をご紹介しておこう。大学を卒業してから調理師専門学校に通い始め、大阪の予約困難で有名な「空心」で修業。すぐに2番手として腕を振るうことに。その後、東京に出て日本における上海料理の概念を変えた伝説の店「シェフス」へ移る。オーナーシェフ王 恵仁氏は既に他界しており、味を引き継いだのは現「レンゲ」の西岡英俊シェフ。

 

しかし西岡氏も既に自身の店をオープンしており、南氏は初めからシェフになるための修業を余儀なくされた。そして2年という短い期間で店を任されたのである。

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王シェフの創った“素材の持ち味を120%引き出したシンプルな料理”はそのままに、「ミモザ」では南シェフの遊びゴコロがプラスされて新しい世界を創り出している。

 

例えば「中国干し梅入り酢豚」。王氏のレシピに上海で出逢った「話梅(ワーメイ)」という中国の梅干しを使うことで香りが華やかになるだけでなく、甘み、酸味、うま味が口の中で幾重にも交錯する。それはそれは、もう信じがたい夢のような美味しさだ。

 

砂糖のカリカリとした食感と甘みのとりこになってしまった「クラゲ大根」や、熱々の大根と金華ハムがあふれる「金華ハムの中国パイ包み」にも感動!

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でも何よりも体が喜んでいるのがわかる。南シェフの人柄のような優しくて穏やかで、でも時折ハッとする刺激があるひと口。喉が乾かない中国料理って素晴らしい!

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本当にここではハズレがないので、これから店に行かれる皆さまにはメニューを上から順番に制覇していただきたいところだが、私が毎回食べたいと思うのはコチラ、「甘鯛の白濁スープと豆腐干」である。

 

白濁スープは修業先の「空心」ではメニューに存在していたので作っていたが、「シェフス」ではクリアなスープがほとんどだったのでしばらく離れていた。

 

ところが最近行った上海で豚と鶏や魚と貝を合わせて白濁させるのが流行っており、久しぶりに乳化させた脂とタンパク質のスープにトキめいて作ってみたそう。トキめいてしまったのは私の方で、初めていただいたときは「なんて美味しいの!」と脳に激震が走ったほど。聞けば材料は尾頭付きの鯛とネギとショウガと水だけというではないか。ということで私の「この店のこの逸品」に加えさせていただき、ここでご紹介。

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作り方をちょっと解説すると、ネギとショウガを炒めて香りを出し、半分にぶつ切りした鯛を投入。

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ざっくり炒めたあと、水を入れて強火でグツグツ煮る。

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鯛から十分だしが出たころにはスープが白濁してくる。鯛はこれでお役御免。申し訳ないけれどサヨナラ。ぜいたくだぁ。鯛さまさま、美味しくしてくれてありがとう。

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丁寧に漉したスープに4cmくらいに切っておいた万能ネギと豆腐干を入れ、ひと煮立ちさせてから盛り付ければ口福のひと皿のできあがり。

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今日も本当に美味しい! レベルの高い“美味しい”を通常営業で提供し続ける凄さがここにある。

 

100%大豆で作った豆腐に圧を掛け水分をなくし、麺のように千切りした「豆腐干」はつるんと滑らかでキュッキュッとした食感がクセになる。脂が一切ないのにコクとうま味がある白濁スープにピッタリ。まさに南シェフの真骨頂である“シンプルだが奥深い味わい”を表現した料理といえるだろう。だってまさかこの見た目で鯛を丸ごとだしだけに使っているなんて想像できない。しかもこんなにヘルシーだから、夜に食べても罪悪感なしでいられる。

 

「中国料理は茶色が多くて地味だけど、食べたら美味しいというギャップを楽しんでもらいたい。」とシェフ。だから華美な盛り付けはせず、あえてそのまま出しているそう。こんなうれしいギャップならいくらでもお願いしたいものだ。

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表参道の交差点から徒歩5~6分、青山通りを少し路地に入ったとても素敵な建物の2Fに「ミモザ」はある。香港のタワーマンションのキッチンをイメージしたという内装はとてもくつろげて、でもちょっぴりお洒落して訪れたい感じ。

 

ちなみに、お店の名前はかなり悩んだそう。「祖母がお花屋さんを営んでいたからお花の名前にしようと思っていたんですよね。ミモザは好きだったんです。あとミモザサラダの黄色っていいなと思ったんですよ。」とシェフ。ところが最初は誰もが大反対したそう。へえ、そうなのか。可愛らしくて覚えやすいし、何より明るいイメージが南シェフらしいので良いと思うが。師匠の店も「レンゲ」だし。

 

さてインタビュー終盤で、シェフが一番感動した料理は何かと聞いてみた。すると広州で食べた「トンポーロー」だと。どこにでもありそうだけど、どう違うのか?と続けると、とにかく違うとのこと。材料はもちろんわかっているがどうしても同じような味にならないそう。

 

「中国のシェフって、絶妙な味付けに秀でているんです。日本よりさらにシンプルだけど、なんだかかっこいいんですよ。」とシェフ。日本にいると何でも手に入るからどんなことでも可能にしてしまう。だからこそ上海料理の神髄からブレずに中国の人が食べても美味しいと思ってもらえる味を追求し続けていくのだと決意を新たにされていた。

 

今年も上海に行っていろいろ吸収してくると意気込んでいた南シェフ。「トンポーロー」がお目見えする日も近いかもしれない。どうやら2017年「ミモザ」に通うことになりそうである。

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今日のお品書き

甘鯛の白濁スープと豆腐干/2,800円