おしゃれフードトレンドを追え! Vol.2

「グルテンフリー」は、ファッション!?

 

 

 

「これ、グルテンフリーなんですよ!」

 

というのが、最近のファッション業界のトレンドワードだ。展示会やパーティのお土産はグルテンフリーが大集合! 撮影時の食事もおにぎり&オーガニック野菜で完全にグルテンフリーだ。2017秋冬シーズンの展示会では、さまざまなブランドやショップでグルテンフリーのクッキーをもらったが、なかでも「Dr’s Natural recipe」が人気で、同じ日に2カ所でここのクッキーをもらった。同じメーカーのパスタもどこかのセレクトショップでお土産にもらった記憶がある。Dr’s Natural recipeのクッキーはおからやゴマ、チアシードが入っていてほんのり甘い素朴な味。グルテンフリーと言われなくても健康的でおいしいクッキーだ。いただく時は必ず「このクッキー、グルテンフリーなんです!」という推薦コメント付き。「おからのクッキーなんですよ」の方が分かりやすいのだが。

グルテンフリー人気の火付け役はジョコビッチ!?

そもそも、どうして小麦アレルギーでもないのにグルテンを抜くことにみんな躍起になっているのか? 昨今のグルテンフリーブームの発端になったのは、テニス選手のジョコビッチのようだ。成績が振るわなかったジョコビッチがグルテンを抜いたら飛躍的に強くなり、今やテニス界の絶対王者に君臨。そんな彼の成功ストーリーが話題になり、さらに海外セレブやモデルたちの影響でファッション業界にもグルテンフリーの波が一気に押し寄せたのだ。14日間グルテンを抜けば肌の調子が良くなる、痩せる、疲れにくくなる…なんて神話とともに。それが2016年の終わり頃だろうか。

 

ヘルシー系といえば、2015年のジュースクレンズブーム、2016年の酵素ジュースに代表される控えめな発酵ブームに飽きていたファッショニスタ達を虜にしたのがこのグルテンフリーだ。かつて流行っていた“コールドプレスジュースだけで3日間過ごす”などというファスティングをインスタに上げている人は、いない。流行りフードは刻々と変化しているのだから!

 

出典:代々木乃助ククルさん

 

もちろん、オシャレカフェやレストランにはグルテンフリー対応しているところが多い。サザビーリーグが手がける「キッピーズココクリーム」のアイスはグルテンはおろか乳製品・砂糖も不使用。

 

 

 

写真:お店から

 

コスメブランドTHREEが手がける「リバイブキッチン」では、グルテンフリーのモチモチパンケーキやマフィンが食べられる。

 

 

 

人気ブランド「スナイデル」などを手がけるマッシュホールディングスが運営する「コスメキッチン アダプテーション」でも、グルテンフリーのケーキが評判。私はグルテンフリーのキャロットケーキを食べたのだが、食べ応えもあって味わい深いボリューミーなケーキに、グルテンフリーの“体に良かろうマズかろう”の先入観が覆された。

 

 

出典:みすきすさん

 

そしてなんといっても今年話題を独占したのは、ベイクルーズが運営する「シティーショップヌードル」ではないだろうか。ファッショニスタ御用達デリ「PARIYA」の吉井雄一さんがプロデュースする新感覚のヌードルショップで、鎌倉にある邦栄堂製麺所と共同開発したオリジナルのケール麺、玄米や大豆、こんにゃくを主原料にしたグルテンフリー麺がウリだ。そこにデュカ醤油やハーブソルト、アンチエイジングオイルなどのかえし/オイルを好みで合わせた汁なし麺が好評だ。和と洋の野菜たっぷりお惣菜が2〜3品選べるので、体が喜ぶヘルシー麺を求めて平日ランチタイムも近隣の人々とわざわざ食べにきた人々で行列ができている。ランチタイムはドリンクも付いて惣菜2品付きが1400円+税という、青山らしいまあまあの価格だ。

 

 

グルテンはそんなに悪者なのか?

展示会でもらったグルテンフリーのクッキーを食べ、豆腐麺を愛する私だが、普段は朝食にパン&コーヒー、昼はパスタランチ、夜は和食という食生活を送っている。おやつはどら焼きやたい焼きが好きで、家で飲むお酒はビール…グルテンだ。たこ焼きもお好み焼きも、もちろんうどんもラーメンも好き。よく作る料理は餃子にコロッケ、ハンバーグ(もちろんパン粉のつなぎ入り)。「小麦粉が体に悪いかも」なんて1ミリも思わず生活している。

 

そんななか、「これいいよね、グルテンフリーだから罪悪感がないしね!」とか言われても個人的には全く共感できない。だって、もともと誰かに対して悪いことしてないし、小麦を食べることに罪悪感を感じる必要がないのだから(ちょっと怒り気味)。でも「罪悪感ないよね」って言われると「えっ、食べたら罪なの?」と自分の食生活を振り返るのもファッションピーポーの性(さが)。トレンドにある程度乗っていないと不安なことも事実だ。そんなこんなでひねくれ者の私は、挑戦してみたいのに“グルテンフリー”というトレンド単語をズバリ使うのが恥ずかしいので、シティショップヌードルで注文する時には「小麦粉ではない麺はどれですか?」という聞き方で逃げてしまった。全く勇気がない。とはいえグルテンフリーの食べ物は嫌いじゃないので、トレンドとともになくなったら実は困る。細く長く、グルテンフリーの食材が市場に定着してほしい。でもまだグルテンフリーというワードを口にするのは気恥ずかしいので、他の言葉が出てきてくれることを期待している。