おしゃれフードトレンドを追え! Vol.1

アパレル経営ファストフード戦国時代の表参道ピザバトル!

食への興味が深い皆さんなら、グルメバーガーと呼ばれる高級バーガー屋が最近やたらオシャレになっていることにお気づきのことだろう。それもそのはず、ほとんどのオシャレバーガーショップはアパレル企業が経営しているのだ。

 

例えば『ベアバーガー』はトゥモローランド、『シェイクシャック』はサザビーリーグ(ロン・ハーマン、アメリカンラグシーなど)、『ウマミバーガー』は「トム・フォード」などのアパレル小物を日本展開するメディロスホールディングスとアパレル企業がズラリ。それらに先駆け2000年から『J.S.BURGERS CAFE.』を運営しているベイクルーズ(ジャーナルスタンダード、イエナなど)のことも忘れてはいけない。

 

現在ベイクルーズの飲食事業は拡大し続け、オリジナルショップ9業態、ライセンス9業態のトータル18業態、55店舗を運営している。ハンバーガーにとどまらず、しゃぶしゃぶ、鉄板焼き、ラーメン、パンケーキ、コーヒーと広範囲に飲食事業を展開している。2018年8月期には100億円突破を目標にしているのだとか! とにかく、食をお洒落に演出することでうまくいっているようだ。

 

アパレル企業がファストフードを手がける理由

元々は洋服を通じてオシャレな世界観を表現してきたアパレル企業だが、今は洋服だけでは売れない時代。よほどのネームバリューや希少性(シュプリーム×ルイ・ヴィトンのような)や話題性(有名人のインスタグラムで流行っていたり)がない限り、ファッションを売るのは厳しい。そこで今は「ライフスタイル提案」というトータルな見せ方で洋服の価値観をぐっとアップさせる演出方法が主流になっている。そんなライフスタイル提案の一環でもあり新しい収益源として、飲食事業を手がける企業が増えてきているわけだ。

 

1980年代DCブランドブームまで遡れば、アパレル企業が飲食を始めるケースは多かった。しかしそれはオーナー達のバブリーなステイタスの象徴でもあった。今とは全然違う高級路線のレストランやカフェを経営し、うちはこんなに儲かってまっせという証でもあった。今のアパレル系フードとは全く違ったスタイルだったわけだ。そんな状況下でアパレル企業が手がけるお手軽オシャレフードが増えているわけだが、最近の状況はどうなっている?ということで、表参道・青山界隈を改めて食べ歩き調査した。

 

写真:お店から

 

まずはベイクルーズ経営のロブスターロール『LUKE’S』表参道店の前はいつでも大行列なので、ファッション関係者はロブスターロールの存在をもちろん知っているが食べたことがない人がほとんどだと思う。実は私も初めて行列に並んでみたが、その価格に衝撃! ロブスターロール1580円、ドリンク付きで税込2000円超え。テイクアウトのファストフードでこの値段は、なかなかだ。価格に恐れをなして、1580円よりも小さめレギュラーサイズ980円とコーヒーをオーダー。出てきたのは手のひらサイズの小さなパン。中のロブスターの量は寂しげ。香ばしくトーストした絶品のパンに柔らかく甘いロブスターが美味で、バターの風味たっぷりでガーリックやハーブの味付けも深みがあって絶妙! しかし、3口でペロリと平らげたため、お腹はぺこぺこだ。ロブスターは原価が高い食材だから、仕方ないのだろうと思いながらも「コスパが…」と釈然としない気持ちだ。オシャレな看板、マリン(ハーバー)感溢れるパラソル、HPもパッケージもオシャレなのだが。個人的にはドトールのミラノサンド「ごろっとアボカドとぷりっとエビ」とコーヒーセット700円でお腹いっぱいになった方が気楽だな、と思った。話題性がある店なので一度食べてみても損はないが、大きめサイズをおすすめする。中国系観光客の熱気に負けず、並ぼう。

 

この冬の注目は南青山ピザ対決!

出典:エノキングさん

 

出典:taityo2009さん

 

今、特にメンズの間で人気なのがユナイテッドアローズのH BEAUTY&YOUTH地下に併設された『PIZZA SLICE2』。これぞアメリカン!なコカコーラがよく似合うピザは、直径50センチの巨大ピザをカットして1スライス390円~というリーズナブルな価格で提供されている。ピザの器は紙皿、ドリンクはプラカップで、食べ終わったらセルフサービスで店内のゴミ箱に入れる現地スタイル。体に優しすぎるオーガニックフードに飽きてジャンクを求める体にぴったり!のこってり&間違いないピザには好感が持てる。上階にはスタイリッシュで高額な服や靴が並んでいるのに、地下では400円のピザ! その落差に萌えるのは特に男子なのだろう。メンズファッションの職歴が長い私としては、このコスパ、気取らなさ、店内の無機質な内装にはぐっとくるものがある。1切れでお腹いっぱい、グルメを気取らない若い男子に優しいコスパ感だ。アパレル系のパーティや撮影時のケータリングにも重宝されているらしい。

 

 

出典:ハットリくん!さん

 

出展:えもやん★スイーツハンターさん

 

同じく南青山に商業施設ルミネが初の直営店舗事業として経営するピザ店『800°DEGREES NEAPOLITAN PIZZERIA』の2号店がオープンする。ロサンゼルス発のピザは、本格的な窯焼きナポリピザ。トッピングが自分で選べて、焼きたてのパリッともっちり感が味わえる。オペレーションも良く、流れるように具材を選んで800℃の高熱で90秒で一気に焼き上げたフレッシュさは他では味わえない。新宿NeWoManの1号店は女性客を中心に連日大行列。南青山店は予約もできるとあって、ヘルシー本物志向の女性たちは一気にこちらに流れそうだ。

 

無骨で安価なアメリカンピザか、お高め(トッピング含め平均1600円)だがフレッシュな味わいの本格ナポリピッツァか? 相手と予算で使い分けよう。

 

 

ファッション業界人はアパレル系オシャレフードを食べない

庶民派B級グルメなのにこんなにオシャレ!という特別感が喜ばれているからこそアパレル系飲食が成功しているわけだが、ファッション業界の人はアパレル企業が手がけたお洒落フードを食べていない。ファッション誌編集者やプレスやスタイリストたちのランチはというと、昔ながらの街のラーメン屋だったり、渋い蕎麦屋の出前だったり、バーガーキングにクーポン片手に走ったり。ファストフードにお金はかけないし、オシャレさも求めていないわけだ。そこでこんな図式が見えてきた。

ファッション業界人=B級グルメをカッコつけていない店やチェーン店×カッコつけた格好で食べる
非ファッション業界人=B級グルメをオシャレな店やインスタ映えする場所×流行りの格好で食べる

 

そうです、カッコつけずにカッコよくない食べ物(ピザ、たこ焼き、焼きそば、ラーメン)を食べる。そんな自然体な俺(私)っていいでしょ?親しみやすいでしょ?というカッコつけ方をするのがファッション人なのだ。「カッコつけるのはダサい」はファッション業界の鉄則。カジュアルなこなれ感をもって食べたいわけだ。しかし、カッコつけてることを絶対に悟られまいとするファッション業界人は、やっぱり結果的には一番カッコつけな訳だ。全くややこしい人種ですね。