【映画のあの味が食べたい】
『プラダを着た悪魔』のステーキブランチ
大学で学生新聞の編集長を務め、賞を受賞するほど成績優秀なアンディことアンドレアは、ジャーナリストになる夢を叶える第一歩としてニューヨークの大手出版社が出す雑誌のアシスタントに応募する。仕事をすることになったのは「ランウェイ」というファッション誌だ。しかも、有名デザイナーもひれ伏すほどファッション界に影響力のある鬼編集長ミランダ・プリーストリーの第二アシスタント。
ファッションにはまったく無知で、スキニーなファッショニスタとはほど遠いぽっちゃり体型。場違いな雰囲気に圧倒されるが、なぜか合格。だが、そこからアンディの怒濤のような日々が始まる。
電話は24時間必ず出る。コーヒーは冷めたら何度でも買いに行く。ハリケーンで民間機が全便欠航になってもなんとかしろ、と電話で怒鳴りつける。とにかく、任務の遂行あるのみ。言い訳は一切聞かないという、絶対君主制が、まかり通っている世界なのである。
ある日の朝のミッションは、15分後にステーキを用意すること。「ハリー・ポッター」の最新刊を午後3時までに双子の愛娘のために用意すること。ステーキハウスは開店前。発売前の人気小説のゲラを手に入れることなんて、神様だって不可能だ。
とにかく、全速力でニューヨークの街へ飛び出し、ステーキハウス『スミス&ウォレンスキー』に飛び込んで、ステーキを特急で焼いてもらいオフィスに戻ると、席に戻ったミランダからひと言。
「なに、それ? 会長とランチだから出かけるわ」
「それから、もし『ハリー・ポッター』が手に入らなかったら、もう戻ってこなくていいわ」
ついにキレてアンディは、いかにも高級そうなサーロインステーキのお皿を放り投げるが、そこへ朗報が……。
原作の小説は、ファッション界のカリスマである米国版ヴォーグの編集長アナ・ウィンターの元アシスタントが書いたもの。なので、ファッション界の「あるある」がいっぱいで、それが面白い。まだ入り立てのアンディが社内のカフェテリア(いわゆる社食ですね!)でコーンスープをトレイに載せれば、ファッション担当のゲイのナイジェルからキツイアドバイス。「あら、コーンスープは、太ももが太くなるわよ!」
だが、このナイジェル。口は悪いがなかなかいいヤツなのだ。
「努力しているのに認めてもらえない」とミランダに褒めてもらえず、愚痴を言っているアンディに「なら、辞めちゃえ。彼女は仕事をしているだけだ」
腰掛け気分で甘えているアンディに、働くことの責任と厳しさをそっと教える。
鬼のように厳しいのは意地悪だからじゃない。一流の仕事を日々こなし、維持し続けるためなのだ。
トップブランドを日替わりで着こなすスレンダーなミランダが、午前中からステーキを注文するなんてちょっと驚いたが、それくらいのプレッシャーとハードワークならば、ブランチから肉くらい食べてないと体も心も持たないでしょうね。“肉食”は、出来る女の証なのかも。
ということで、“サイズ6”(日本でいうところの11号くらい)のアンディも、「食欲がなくなってきた……」なんてサラダやジュースばっかり飲んでないで、プロフェッショナル目指して、ブランチにステーキでも食べて欲しい。日本の方には六本木にある「マーサーブランチ」がおすすめ。“ニューヨークスタイル”を謳っているだけあって、パンケーキやフレンチトーストなどの朝食メニューに「モーニングステーキ」が定番でならぶレストラン。オシャレな空間だから、ファッショニスタも様になります!
■作品紹介
大学を卒業し、ジャーナリストを目指してNYにやってきたアンディ。オシャレにまったく興味の無い彼女がひょんなことから、世界的なファッション誌『RUNWAY』のカリスマ編集長ミランダ・プリーストリーのアシスタントに就くことに。ミランダの要求は悪魔的にハイレベル。朝から晩まで携帯は鳴りっぱなし、ミランダの横暴ともいえるようなリクエストにアシスタントは応えなければならず、何人もの歴代アシスタントがそのポストを辞めていった。アンディも過酷な毎日を過ごし、センスもダメだしされる始末。私生活もめちゃめちゃ。仕事ももともとやりたかったものではない……。そんな彼女が見つけた答えは?
『プラダを着た悪魔』
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20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン