ゆったりとしたスタイリッシュな空間で、大人の和食を楽しむ

コンクリートの打ちっぱなしを活かした洗練された店内。

代官山駅から渋谷方面に5分ほど歩いた閑静なエリアに、2022年2月にオープンした「nami.nami(ナミナミ)」。店の奥に大胆に生けられた花木が出迎える洗練されたインテリアの中で、うまい酒と旬の和食を味わえる店だ。

nami.namiは、波をモチーフにしたロゴが描かれた小さな木の看板が目印。店名はオーナーシェフの笠波氏の名前がもとになっている。

ドアを開けるとまず目に飛び込んでくるのは、天井まで枝を伸ばす季節の緑だ。おおらかに生けられた雲竜柳を囲むように、上質な木材を使ったL字形のカウンターが広がる。グレーを基調としたシックで開放的なインテリアに、昼間は壁面の大きなガラスから陽光が差し込む。

定食ではなくサンドイッチ。和食屋が供する「らしくない」ランチ

そんなモダンな雰囲気の中で味わうnami.namiのランチは、肉、魚、野菜を使った5種類のサンドイッチ。和食店のランチといえば定食が一般的だが、笠波氏を含め2人しかいない店内で、たくさんの食器を使う定食は負担が大きい。調理に集中したいと考えた笠波氏が行きついたのが、サンドイッチだったという。

レアに仕上げた牛ヒレのうまみが際立つ、濃厚な牛ヒレカツサンド

一番人気の「牛ヒレカツサンド」2,500円。

「牛ヒレカツサンド」は、まずその断面に目を奪われる。余熱で内部をレアに仕上げたカツは、厚みがあってボリューム満点。手に取るとずっしりと重く、ひと口嚙むとやわらかい牛ヒレの食感と、赤身の深いうまみが口いっぱいに広がる。

揚げたてのカツをくぐらせるのは、ソースではなく特製の醤油ダレだ。パンに塗られているのは、タスマニアマスタード。プチプチとした食感とリンゴ酢の香りが、パンとカツを繋ぐ軽快なアクセントになっている。和風の味付けでまとめられたカツサンドは、最後まで飽きずにその味わいを楽しめる。

醤油や味醂などを加えて作る特製の醤油ダレを潜らせる。

横に添えられているのは、からし菜、クレソン、カブなど6種の有機野菜をふんだんに使ったサラダ。前職時代の師が考案したオリジナルを受け継いだ、風味豊かな調味料にオリーブオイルを加えたスパイシーなドレッシングが、野菜本来の滋味を引き出す。横におかれた季節のスープのそら豆と新玉ねぎが、春の味覚を告げる。和風出汁で丁寧にのばしたポタージュは口当たり滑らかで、どこかほっとする優しい味わいに仕上がっている。

白身魚の上品さとコクを衣に閉じ込めた、スズキカツサンド

意外なほどサンドイッチに合う、スズキカツ。

初めて食べた客が驚きの表情を見せるのが、「スズキカツサンド」(1,500円)だ。こちらも綺麗な断面に食欲がそそられる。魚のカツといえば揚げたサバのサンドイッチがポピュラーで、スズキは珍しいかもしれない。ひと口かじるとカリカリとした衣の中に、白身ならではの上品な味わいがひろがる。さらに食べ進めると皮に近い部分は食感が変わり、脂のうまみも味わえる。一切れで味わいの変化が楽しめるのは新鮮だ。

スズキのカツも牛ヒレカツと同様に、揚げたてを特製醤油ダレにくぐらせてから挟む。パンにたっぷりと塗られたタルタルソースは、大きめに刻まれたゆで卵の食感がワイルドで食べ応えがある。ソースには寿司屋でお馴染みのガリが混ぜられており、その爽やかさがスズキの味を引き締めている。

笠波氏によれば、具材に肉だけでなく魚のカツサンドも提供したいと考え、ヒラメなど様々な白身魚を試したが、その中でスズキが一番しっくりきたとのこと。癖がなく一年を通じて手に入りやすく、季節による味の変化が少ないところもランチに向いていたという。

注文ごとに焼き上げる、ふんわりやさしい和のタマゴ焼きサンド

出汁巻のサンドイッチはどこかホッとする味わい。「和食屋のタマゴサンド」1,200円。

最後に紹介するのは真ん中に厚い出汁巻卵がたっぷりと挟まれている「和食屋のタマゴサンド」。こちらも手に取るとうれしい重み。鰹節の香りが立ち上る出汁巻は、注文を受ける度に小さな卵焼き器で丁寧に焼き上げている。卵液の味付けは出汁と薄口醤油で、サンドイッチに合うように通常より甘さを控えてある。

タマゴサンドは具材の食感とのバランスをとるために、パンは焼かずふわふわのまま使う。たっぷりと塗られた有精卵のマヨネーズとタスマニアマスタードが、パンと出汁巻卵を絶妙に取り持ち、味わいをまろやかに一体化させている。

2、3人で訪れ、分け合って異なる味を楽しむのもおすすめ。テイクアウトも可能だ。