朝ごはんを食べに京都へ。極上の正しい朝食をいただく贅沢

 

“朝ごはん”は、日本人が古来食べてきた食事の、基本の基本。だからこそ、朝食に情熱を注ぐ「喜心」。米、野菜、うるめいわし、卵……、素材を厳選することで、美味しい朝ご飯には何が大切なのかが、はっきりと見えてきます。そんな、心と身体が喜ぶ「喜心」の朝ごはんを、京都まで食べに行く贅沢を、ときには楽しんでみたいもの。

朝食を柱に据えた食の発信基地「喜心」

祇園花見小路を入って、二つ目の角を右へ折れた左側、花とうろホテルの1階に隣接して、瀟洒なスペース「喜心」はあります。店名は、作ることも食べることも修業、食事は、喜ぶべき行いであるという「禅」の教えから名付けられたものだそう。その根底には、日本の古きよきものを残し、その素晴らしさを広く世界へ発信したいという願いがあるのだとか。「喜心」は、そんな高い志を持つ若者が集まって今年、2017年4月に立ち上がった食の発信基地なのです。

 

 

 

 

 

その一つの柱に据えたのが、朝食です。なぜ、朝食なのでしょう? と聞けば、「日本の食の原風景が詰まっているから」の答えに納得。確かに炊き立ての白ごはんに、熱々の汁ものという、一汁一菜の献立は、日本料理の原点というにふさわしい。それを最もストレートに表現できるのが、朝ごはんというわけです。しかも京都という土地の朝の清々しさはまた格別。夜の賑わいが嘘のように、ピンと張り詰めた空気の中でいただく朝食の美味しさは、何ものにも代えられません。

料理は中東篤志さんが、器は祥見知生さんがプロデュース

スペースが決まり、朝ごはんというコンセプトが決まり、料理の監修は?という段になり、白羽の矢が立ったのが、中東篤志さん。実は、自然とともにある料理のスタイルがあまりにも有名な「草喰なかひがし」中東久雄さんの息子さん。代々料理に携わる家に生まれ、幼い頃から久雄さんの手ほどきで料理を学んだそう。現在は、NYを拠点にポップアップイベントや飲食店のプロデュースなど、京都との間を行き来しながら、幅広く活動しています。

器は、鎌倉で器店を営み、様々な企画展を手掛けるなど、和の器の魅力を国内外に広く発信している「うつわ祥見」の祥見知生さんがセレクト。席についたのちに、お盆にのせられた飯碗の中から好みで1碗を選べるというパフォーマンスも。その時点で、喜心の世界観にぐっと引き込まれてしまいます。

 

注目の朝食の中身やいかに・・・?

さて、朝食ですが、まず初めに出されるのがとろとろの汲み上げ湯葉。厳選した大豆を使用した「半升」の品を、オリーブオイルと塩、わさびで。

続いて、土鍋で炊いた米がごはんに変わる瞬間の、まだ芯のあるアルデンテの状態を一口いただきます。古来、稲作を基盤に暮らしてきた日本人の、お米への感謝の気持ちが思い出される瞬間です。

そして、具だくさんの汁ものが大振りの椀でたっぷり供され、続いて、炭火でこんがり焼いたうるめいわしの丸干し、季節の漬物が運ばれます。汁はこの時期は「京白味噌の豚汁」、「野菜のポトフ風」、「海鮮和風トマト」の3種からチョイス。今回ご紹介するのは、中東さんのご親戚である「しま村」の白味噌をたっぷり溶いた、なんとも雅な味わいの豚汁。だしは昆布だしに大根の皮を加えて煮出し、風味をつけたもの。ほっくり煮えた大根や九条ねぎと豚肉にたっぷりの水菜で元気がわいてきます。そして、なんといっても、お客様の顔を見てから土鍋でご飯を炊き上げることこそがおもてなし。米は何通りも試作した結果、山形県のツヤヒメを使用。シャキッと米粒の立った炊き上がりは、湖東焼の土鍋との相性も抜群です。

そのほかの+αのお楽しみとして、揚げじゃがいも、古都の無添加ソーセージなども選べます。驚くほど黄身が濃厚な山田農園の卵もその一つ。炊き立てご飯にのせて、醤油をたら~りで、たまりません。

 

シンプルな献立に託した中東篤志さんの想い

こうしたシンプルで心に響くメニュー構成の意図を聞けば、「日本人として身体が欲するものを集めただけです。自然に献立は決まりました」と中東さん。「野菜はできる限り、京野菜の農家・田鶴さんからと、大原の農家から仕入れています。同じ土地で育った季節の出盛りの野菜を身体に取り込むのが、栄養的にもいちばんですから」とも。

中東篤志さんは、年数回、NYから帰って腕を振るいます。「素材の持ち味を最大限に引き出すために、最小限に手をかける。それがいつも大切にしていることです」と中東さん。見た目のシンプルさに比して、口の中に入れたときの、弾けるようなインパクトのある味わいはそのあたりに理由があるのでしょう。

喜心の夜の時間帯は、他店とのコラボレーションなど、さまざまな企画が行われることも。食のトレンドを知るにも、ぜひ、訪ねてみたい「喜心」。2018年へ向けて、ますますその動きも活発になりそうで、楽しみです。

 

撮影:久保田狐庵