【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

連載4回目となる今回は、囲炉裏を使った焼肉店。バック・トゥ・ベーシックな火入れスタイルを取り入れることで、肉はどう変化するのか? 肉と火の関係とともに、そこから生まれる新たな旨さに迫る。

vol.4 美味しい肉はじっくり育てるべし!肉と火編

肉の美味しさを左右する一番のポイントは言うまでもなく“火入れ”である。どんなに上質な肉でも火の入れ方次第で台無しになることもあるし、逆に言えばスーパーで気軽に買える肉でも丁寧に火を入れれば抜群に美味しくなる。そういう意味では肉と火は切っても切れない密接な関係にあると言っていい。

 

肉人気がすっかり定着した昨今は、自宅でステーキを焼くという人も多いと思うが、外食のセルフ焼きの定番といえば焼肉だろう。塊肉や厚切り肉を売りにする店が増えている最近は、スタッフが焼いてくれる場合も多いが、自分で“肉を育てる”のも焼肉店の楽しみのひとつ。

これまで、肉は網(もしくはロースター)にのせたら極力、触らないことが常識とされてきたが、部位によっては何度も返したほうが美味しくなるなど新説も浮上。奥深い焼肉の世界を楽しませてくれる店がどんどん増えているなか、焼肉店としては斬新なスタイルで注目を集めているのが、2017年4月にオープンした『囲炉裏焼肉芝浦』だ。

『芝浦』といえば、焼肉ラバーのあいだではよく知られた存在だが、囲炉裏スタイルを取り入れたのはこの店が初めて。古くから日本人の暮らしとともにあった囲炉裏は、調理はもちろん、家人が集い語らう“だんらんの場”としての役目もあったと聞けば、これまで導入する焼肉店が多くなかったのも不思議だが、体験してみると、これが想像以上に楽しい。

あいもり4種盛り合わせ3,200円

 

卓上を掘り下げ、灰を敷き詰めた囲炉裏に炭をくべ、そのうえに網を置くという原始的なスタイル。炭はガスと違い火力が安定しないぶん、あつかうのが難しいと言われるが、その利点は肉の仕上がりにある。

芝浦ロース1,200円

 

遠赤外線効果でじんわり火が入るため、ふっくらと焼き上がるのがポイント。『囲炉裏焼肉芝浦』のマネージャー、祐島さんは「ガスに比べると焼き上がるのに多少時間はかかるけれど肉を食べればそのジューシィさに驚くはず。囲炉裏を囲みながら和気あいあいと焼肉を楽しんでもらえたら嬉しい」と話す。

芝浦ごはん1,000円

 

『芝浦』は肉の部位も豊富だが、塩ものは1回、タレものは複数回返して、肉が焦げないようにするのも美味しく焼く秘訣だという。多店舗同様、濃厚なコムタンスープにはじまり、和牛のなめろうやホルモン煮込みといった前菜盛り合わせ、タンの食べ比べに特選部位やホルモンの盛り合わせ、締めのご飯ものまで含まれるおまかせコースは4,800円から用意。もちろん、アラカルトメニューも充実している。

 

火入れの奥深さ、楽しさを実感できる焼肉店でセルフ焼きの醍醐味を堪能してほしい。

 

撮影:石渡 朋
取材・文:小寺慶子