2【日本式ステーキ】「横浜うかい亭」

東急田園都市線つきみ野駅近くの住宅街にある「横浜うかい亭」

続いては日本の鉄板焼きの代表。「うかい亭」は国内6店。うち5店までが「食べログ ステーキ 百名店 2021」に選ばれていますが、今回は「横浜うかい亭」をご紹介します。

横浜と付いていますが、場所は神奈川県大和市。私鉄沿線の閑静な住宅街にあります。敷地面積約1,500坪。都心のビルイン型店舗には表現できない、広々と贅沢な、堂々たる空間です。

店内には鉄板が備え付けられた個室と半個室が合計14部屋

門をくぐれば、庭があり、池があり、鯉が泳ぐその向こうに大きなお屋敷。北陸・加賀の豪商の屋敷を移築したというその館内は、呑み込まれるような豪華さで、華やかなりし昭和の時代の映画セットにでも紛れ込んだかのような、夢見心地の空間です。個室・半個室合わせて全130席。さらに100席を擁する別館もあります。

「旬の味覚とうかい特選牛コース」16,500円からの一品「太刀魚のナージュ」。この日の太刀魚は佐島で取れた“ドラゴン級”の大物

うかい亭が謳う「鉄板料理」を堪能すべく全7品のコースを選びました。4品目の「太刀魚のナージュ」から目の前の鉄板で調理します。この日の太刀魚は横須賀・佐島産。セモリナ粉をまぶし、ハーブとともに蒸し焼きにしたものを、万願寺とうがらしを使ったスープに浮かべた一品です。これが、実山椒がピリリと利いて美味! と、舌鼓を打ったところで、次はいよいよステーキ……。

右がサーロインの脂身。余計な油を絞り、カリカリに焼いていただく。皿は京焼の窯元・陶あん作

全国から選び抜いた黒毛和牛、うかい特選牛。この日は北海道産でした。部位はサーロイン。2人前で200g。脂身40gはカリカリに焼いていただきます。シェフ曰く、牛肉は、色は「あずき色」、サシの多過ぎない「小ジモ」が良いと――皆さん、覚えておいてください。

鉄板は厚さ25mm。温度は250℃前後。電熱のグリルです。焼肉と違い、そこまでジュージュー音はしません。表面に焼き色を付けた後はむしろ音もなく、中までじっくり、静かに火を入れていきます。

「うかい特選牛サーロインステーキ」。自家製ぽん酢、火を入れた生醤油、薬味4点とともに賞味

皿は有田焼の窯元・源右衛門作。自家製ぽん酢につけたり、揚げたニンニクをのせたり、いろいろやって食べるのですが、塩漬けの生胡椒……これが美味! 量は少しですが、USビーフとはまた違う甘くて丸い味わいを、和風の味付けで楽しむ――そんなステーキでした。

食後のコーヒーとともに出されたお茶請けの焼き菓子までおいしかったのにはビックリ。聞けば「食べログ スイーツ EAST 百名店」にも選ばれている「アトリエうかい たまプラーザ」のプティフールとのこと。おいしいワケです。「ステーキを」と言うより、鉄板を使った一連の料理すべてを味わい楽しむ――それが鉄板料理・鉄板焼きの醍醐味です。その時間ごと、空間ごと、まるごとすべてご堪能ください!

※価格は税込・サービス料別

3【お手頃価格ステーキ】「ビモン 東京駅キッチンストリート店」

最後は気軽に行ける便利なお店をご紹介します。東京駅の真下のお店です。改札外、北自由通路沿いの食堂街・キッチンストリートの店「ビモン」です。平日は丸の内・八重洲界隈で働くビジネスパーソンたちのランチの場として、コロナ以前の週末は行楽客や旅行客で賑わう、連日大人気のお店です(現在は土日休業)。

店内はカウンター16席+テーブル32席。調理の様子がカウンター越しに見られる

扱う肉は黒毛和牛のみ。お得なメニューが色々あります。現在あるのは、2種類の部位がセットになった「破格のステーキランチ」1,980円、「そともも」のランチセット2,140円など。そして、「ビモンと言えばコレ」というぐらい大人気なのが「すねバーグ」です。170gのランチセットが1,480円。

ビモンの圧倒的人気メニュー「すねバーグ」170g。写真は単品注文で焼き野菜付き。255gと340gもあり

黒毛和牛のすね肉のみを使ったビーフハンバーグです。「牛100」のハンバーグが流行るずっと以前から出し続けています。8mm挽きの粗挽き肉に細挽きを合わせたコリコリ食感。つなぎのタマネギが風味強く、コショウもピリッと利いて、メリハリのある一品です。添えられた大根おろしと好相性。

「ビモン」とは、牛の個体識別に使う鼻の紋様「鼻紋」のこと

ステーキは「そとひら(そともも)」「うちひら(うちもも)」「くらした(リブロース)」「へれした(サーロイン)」「へれ(フィレ)」の5つの部位があり、A3とA4~A5の2つのランクに分かれています。山形牛のメニューなどもありますが、本日は「サーロイン」130gのランチセットにしました。横幅2mはあろうかという鉄板でグリル。カウンター右側の数席は、調理の様子が目の前で観られる特等席です。

「サーロイン」130g 3,160円。ライス・スープ・サラダ+大根おろし付き

コロナによる需要減の影響か、昨今、サーロインの肉質が良くなっているそうで、この日のサーロインはサシ多めのぷりぷり食感。しっかり強めに振ったモンゴル産岩塩の塩味だけで十分おいしく、白いご飯と一緒に食べると、もぉ~最高! 米は茨城県産コシヒカリ。このお米がまたいい香り!

「特製ジャンボプリン」700円

そして、意外な人気メニューが「特製ジャンボプリン」。ちょっと硬めのオーソドックスなプリンですが、これも昨今のブーム前からあるメニューで、店内のオーブンで焼いた自家製です。にしても、このサイズをステーキの後に食べるとは……とか言いながら、プリン1個独り占めはちょっと快感!

そんなビモンですが、なんと! 8月末で閉店します。キッチンストリートのエリア全体が改装工事に入るそうで、あと約半月ばかりの営業となりました。2004年の開業以来、長年通い続けるご常連さま、そして、テレワークで最近行けていない皆さま。どうぞ「密にならない程度」に、最後に食べにいらしてください。

※価格はすべて税込。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

※本記事は取材日(2021年8月9日)時点の情報をもとに作成しています。

撮影:松原好秀

文:松原好秀、食べログマガジン編集部