出世ごはん
デキるビジネスパーソンはこんなお店で食べている! 元銀座のホステス&開運アドバイザーの藤島佑雪が、かつての同伴その他の経験から見極めた「出世する店」を「おいしい理由」とともにご紹介!
No.16 まるで高級割烹のよう! 神楽坂のラーメン屋さん
澄まし麺 ふくぼく
「クリエイティブな職業」。そんな言い方がありますが、わたくし、そもそもクリエイティブじゃないお仕事ってないと思うんです。お客さまに納得してもらうよう、説明をする工夫。ムダをつくらず、効率化して物事を進める工夫。営業でも事務でもなんでも、工夫があるものはすべてクリエイティブだと思いません? ホステスだって「いいなぁ、座って飲んでるだけで金もらえるんだから」とか言われますが、お客さまを褒める、話を盛り上げる、色仕掛けで攻める、などなど、売上を上げるためにいろんな工夫をしている、クリエイティブな職業なわけです。どんな仕事にもクリエイティブさは必要というか、そこを磨いていった先にこそ、ビジネスパーソンの未来があるんじゃないかしら。
最近、その“クリエイティブさ”に圧倒されたラーメン屋さんがあります。人気のラーメン屋さんなら、どこでも光る工夫があるものですが、「澄まし麺 ふくぼく」さんは従来のラーメン屋さんとは、力を発揮する方向性が全然違うんです。チャーシューや麺に工夫があるとか、そういうことじゃなく、お店全体の世界観、ひいてはラーメン屋さんという概念からして、まったく違うんです。これは新しい!すごいなと思いました。
だってまず、外観が京都の高級割烹みたいでしょ。情緒ある神楽坂のイメージにぴったり。植え込みがあって、作家ものの花入れに飾った野の花がお出迎え。行列ができるお店なんですが、待つひとたちへの心遣いを感じますよね。さらにお客さまを迎え入れるオペレーションにもびっくり。わたくし、オープン前から並んでいたのですが、定刻になったら席数分は入れると思うじゃないですか。ところが、そうじゃない。なんと、ひと組ずつしか入れていかないんです。えっ、どうして?と思いながら自分の番で理由がわかりました。中に入ってすぐの券売機でチケットを買う方式なんですが、ここでひと組ずつ、ゆっくり選べるようにという配慮だったんですよね。で、いざ席に着けば、そこはモダンに数寄屋を表現した和の空間。卓上に調味料とポットがなければ、高級日本料理店のようなインテリア。ここ、接待できるよね?くらいな格があるんです。
メニューも同じく。つまみがちょこちょこあるラーメン屋さんってあるじゃないですか。ここもそうなんですが、「海老すり身 蒸し揚げ」なんてのが出てくるんですよ。これ、いただきましたが、懐石に出てくる煮物椀(懐石のメイン、華!と呼ばれています)によく使われる、しんじょうがベースじゃないですか。これまた作家ものの小皿に盛られてくるわけですから。高級感がハンパないです。
ラーメンは、夏場は「涼し麺」も含めて3種類。並、増し盛り、半というサイズがあって、半サイズで2、3種類頼む方も結構いらっしゃるようでしたが、わたくしは「名物 鴨だしご飯」をとることにして、「醤油かけ麺」を断念。「澄まし麺」を半サイズでいただきました。
これまた「澄まし麺」にもびっくり。なんと具なし! よく見るとちっちゃな青柚子が浮かんでいるだけ。透明なスープをそっと口に運べば、完璧に和のおすまし! 昆布、鰹、いりこを使った一番出汁に塩を加えただけとのこと。シンプルながら、極上。細麺が浮かぶ姿は洗練された日本料理です。青海苔とねぎが別に添えられてくるのですが、具なしのままが異様においしいので、最後の最後に入れるのが正解かな。調味料も凝ったものばかりで昆布酢、特製醤油、山椒醤、胡麻油、黒胡椒と興味をそそられるものの、なにも足さずにそれだけで味わいたいような麺とスープなんです。
とろけそうなチャーシューとか煮卵とかなくても、あれこれ煮出した特殊なスープじゃなくても、ひとの心は掴める。クオリティを高めれば、最小限のもので勝負はできるんだと。そこにクリエイティブのなんたるかを感じた次第です。
こちら、夜は「蒼穹」さんという和食と日本酒のお店に変身するようです。噂では同じく神楽坂で世界的に評価される割烹が手がけているとか。なーる。得意技を武器に、ある分野の既成概念を変えるという戦略、ぜひ見習いたいものですね。
と、書かせていただいたわけですが、残念ながら昼の部は8月いっぱいで終了ということでわたくしの大好きな澄まし麺がいただけなくなるとか。ただ、お店自体は9月13日に六本木に移転しリニューアルされるそうなので、そちらを楽しみにしたいと思います。
澄まし麺 ふくぼく
東京都新宿区神楽坂5-7
※2018年9月13日より、六本木ヒルズ5階にて新たにオープン