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提供:JR東日本 東京感動線/TOKYO MOVING ROUND
食への意識を変えてくれる街・原宿
毎日、多くの観光客や買い物客が降り立つ原宿駅。この街は、昔から”新しいフードスタイルの発信地”でもあります。絵本や玩具などと一緒にオーガニック食材を扱う「クレヨンハウス」、オーガニック食材スーパーの草分け的存在「ナチュラルハウス」などが存在したことから、自然派志向の店が数多く集まるようになった原宿〜青山周辺。しかし近年は、動物性の食物を一切摂取しない”ヴィーガニズム”を提唱する店や、フードロス削減のために新たな取組みに参加している店など、流行とはまた違う形で”食とライフスタイル”を提案してくれる店が数多く存在します。
“食のチカラ”で、体と心を整えていく「くれは食堂」
「お野菜や本当の発酵食品を中心に、良質なたんぱく質も摂る。体を整えるためには、そういったバランスが必要だと思っています」。そう語るのは、店主の堤由起子さん。「くれは食堂」では、季節の自然栽培野菜や飼育環境・思い入れのある産地の肉・魚、自家製の発酵調味料、昔ながらの手法の発酵食品などを使ったお料理をいただけます。「本日の定食」1,800円(税込)は、肉・魚・ヴィーガンメニューの3種類からメインディッシュをチョイスでき、発酵食品をたっぷり使った種類豊富なおかずとともに食べられる人気メニュー。おかずは動物性のものを一切使っておらず、どれも”本物の発酵食品”ならではの奥深い味わいです。十六穀米のごはんといただけば、体の中がじんわり喜びだすような美味しさを味わえます。
味噌や梅醤油、梅干し、醤油麹など、手作りできるものは自家製でつくる本物志向。てんさい糖の優しい甘さと、梅の酸味が体をしゃきっとさせてくれる「梅ジュース」600円(税込)をはじめ、酵素ジュースや生姜ジュースなど自家製のジュースも。取り寄せる食材もきちんと生産者の顔が見える、信頼できるものを選んでいるとか。もともと、ご自身が体に不調を覚えたとき”食”を徹底して見直すことでそれらが解消されていったそう。
「ヴィーガンの方はもちろん、そうでない人もたとえば『ちょっと胃が重いから今日は野菜中心にしておこうかな』といったときに、気軽に選んでもらえれば」と堤さん。また、この店はフードロス削減のため、料理が余りそうで困っている飲食店と希望するユーザーをつなぐフードシェアリングサービス「TABETE」にも登録されています。参加した理由について「無農薬、有機野菜を作っている農家さんを尊敬していますし、応援したいと思ってます。だからこそ、自分たちの作るお料理を無駄にしたくないんです」と語る堤さん。日本古来の素材や発酵食の奥深さに驚かされながら、日々の”食”を見直すきっかけになれる一軒かもしれません。
“食の楽しさ”を広げてくれる「コスメキッチン アダプテーション」
表参道ヒルズ内にある「コスメキッチン アダプテーション」は、オーガニックコスメの人気ブランド「コスメキッチン」が手がける「おいしく食べて、心も体も美しくなる」をコンセプトに掲げたカフェレストラン。人気は、厳選した栄養たっぷりの野菜やフルーツ、オリジナルデリなどを、目的別に選べるドレッシングとスーパーフードのトッピングで好きなだけ楽しめる「CLEAN EATING BUFFET」1,980円(税別)。また、大豆で作られたパティがまるで魚のようで、食べごたえ抜群の「ノンフィッシュ ヴィーガン アボカドタルタルバーガー」1,580円(税別)や炙り梅の風味で豚肉の旨味がより引き立つ「炙り梅と六白黒豚の塩鍋」1,980円(税別)など、バラエティに富んだメニューが揃っています。
こちらでは、マクロビオティックやローフード、ヴィーガン、グルテンフリーなど様々な食事のスタイルを選択することができるのが特徴。例えば食べられるものが違う人同士でも、気兼ねなく食事をすることができます。”何を”食べるかだけではなく、”誰と”食べるかも、大切な食事の要素の一つ。「VEGANベイクドチーズケーキ」880円(税別)などギルトフリーデザートも充実しているので時間帯を問わず利用しやすいことも、この店で食べる楽しみを増やしてくれます。
ブランドのディレクターやシェフたちが生産地を訪れ見つけてくるという素材は、どれも厳選されたものばかり。「旬により変化する野菜には、珍しいものもたくさん。『どう調理したら美味しいだろう』と、考えるのも面白いですね」とシェフの小林智さん。また、西日本豪雨で被災した愛媛県・宇和島の柑橘類など、生産地とコラボレーションした限定メニューが今後登場する予定だそう。美味しく食べることで、生産者や私達を取り巻く環境のことを少し知ったり、思いを馳せることができる。それもまた、この店の魅力なのです。
フルーツがもっと身近になった世界を「ヨツバー」で
キャットストリートを少し逸れた場所にある、ビルの2階。隠れ家めいた店のカウンターで味わえるのは、生のフルーツがふんだんに入ったなんとも贅沢なカクテル! 左から冷凍イチゴが丸のままゴロゴロと入った「冷凍イチゴサワー」1,000円、生のパイナップルがフレッシュな「パイナップルサワー」800円、自家製シロップに漬け込んだキウイを潰しながら飲む「キウイサワー」800円(すべて税込)。しかもこれらのフルーツはすべて、創業75年以上のフルーツの老舗「フタバフルーツ」がチョイスしたもの。美味しいフルーツがしっかり入った”食べて飲める”カクテルなのです。
ヨツバーの隣にある和の文化を発信するレンタルスペースの「ミチヲシル」と、フタバフルーツの社長が意気投合したことで生まれたというこの店。あえてフルーツの銘柄を明記しないのは、”その日に美味しいもの”をチョイスするから。果物の目利きのプロだからこそ、美味しいフルーツをリーズナブルにいただけるというわけです。「茄子のミニラザニア」800円(税込)など、フルーツカクテルに合うおつまみもあり、ランチタイムにはフルーツを使用したサンドイッチも提供。またこの店も、フードシェアリングサービスの「TABETE」に参加しています。
フルーツは身近なもののようでいて「普段なかなか買わないかも」という人は意外と多いのではないでしょうか? 「ストリートカルチャーが身近なこの店で”何か新しいこと、楽しいこと”が生まれたとき、そこにフルーツがあってほしい。そしていつかは、例えば『朝食がフルーツ』というのが当たり前になったり、もっと日常の中でフルーツの位置が向上していければ」。そう語るのは店長の田中ジェームスさん。美味しいカクテルの中には、”フルーツの可能性”が詰まっています。
和食を世界に発信。「ブラウンライス バイ ニールズヤード レメディーズ」
ロンドン発の老舗オーガニックコスメブランド「ニールズヤード レメディーズ」が手がける店。表参道から一歩入った「ロハス通り」から小道を入っていくと現れる、まさに隠れ家。ランチの人気メニュー「一汁三菜」1,700円(土日祝は前菜付で2,200円。共に税込)は、週替りの主菜1品と、伝統的な製法で作られた調味料を使用して作るお惣菜が、玄米ごはんとともに提供されます。この店で食べられる料理には、動物性のものは一切使われていませんが、主菜「大豆ミートとテンペの香味揚げ」をはじめ、どれもしっかりと満足感のある味わいです。
アロマオイルやハーブなどで知られる「ニールズヤードレメディーズ」ですが、こちらの店で食べられるのは”和食”中心。その理由は「目に見える美しさ以上に、表には表れない身体の健康が大切である」というブランドのコンセプトと、伝統的な和食の持つ魅力、それらが一致したから。野菜の皮や根など「食材本来の旨味と栄養をまるごといただく」ことを目的とした「ホールフード」で作られた料理は、食べることでなんだか食材のパワーをもらえるよう。こちらの「豆腐のレモンケーキ」750円(税込)をはじめ、デザートも和風のものを多く取り揃えています。
例えば玄米は富山県産のコシヒカリ。さらに、埼玉県産の大豆を使った「もぎ豆腐」、お酢は京都の「飯尾醸造」……使われるものは製法も含め、調味料や素材をしっかりと選んでおり、スタッフが生産現場を訪れることも多いそう。美味しく食べながら、そんな”作り手の顔”を想像してみるのもまた楽しいもの。「海外から来られたヴィーガン、ベジタリアンの方が『和食が食べたい』と思っていても、出汁に動物性のものが使われていることで諦める人が多い。でもここでは、そんな方でも和食を楽しんでいただけるので、とても好評なんです。また、身体に気を使われているプロアスリートのお客様も多いですよ」と語るのはマネージャー・阿部梓さん。”和”の食が持つ力は、インクルーシブな日常づくりにも一役買っているようです。
ヴィーガン料理の可能性が楽しい「エイタブリッシュ」
表参道交差点からほど近い場所にあるヴィーガンレストラン。こちらの店舗は2015年にオープンしたものですが、もともとは2000年に南青山にオープンした「カフェエイト」が源流となっています。2000年といえば、まだまだ菜食主義を指す”ヴィーガニズム”という言葉が日本には浸透する前。そんなヴィーガンレストランの草分け的存在でのは、多国籍なフュージョン料理。例えば「プチランチコース」2,300円(税別)のメインは、スブラキというギリシャの伝統的な串焼きをヴィーガンアレンジしたもの。肉の代わりに使われているのは豆腐とテンペです。
オーナーである女性2人がデザイナーということもあるのか、店内もお料理もすべてとてもスタイリッシュ! また、一般的にイメージするヴィーガン料理のイメージをいい意味で裏切ってくれるものが多いのではないでしょうか。写真はディナーのコースメニューの一部で、塩麹漬け豆腐のステーキにアーモンドハーブソースが絶妙にマッチ。ソイヨーグルトを使った「季節のレアチーズケーキ ヴィーガンアイスクリーム添え」は、食べた外国人のお客様が「今まで食べたヴィーガンのチーズケーキで一番美味しい!」と絶賛したというもの。一皿ごとに「え、これがヴィーガン料理なの?」という新鮮な驚きを得ることができるはず。
ディナーコースは4,500円(税別)と6,000円(税別)の2種類。このコストパフォーマンスの良さも人気の理由の1つ。「ヴィーガン料理というと”制約が多いのでは”と思うかもしれませんが、多分みなさんが思うよりもいろいろなことができるんです」と、店長の板原亜矢子さん。店内で売られているお菓子やテイクアウトできるデザートもこちらの人気商品ですが、どれも日常的に選びたくなる美味しさ。店の「無意識に健康と幸せを手に入れられる場所」というコンセプト通り、気負わず楽しみながら、ヴィーガニズムを日常に取り入れられる場所なのです。
ライフスタイルが多様化するにつれ、食生活の選択肢も数多くなってきています。新しい食の形を知ったり、自分とは異なるスタイルを受け入れることはまた、私たちの日常を少し広げ、豊かにしてくれるはず。流行の発信地である原宿を訪れると、私たちを少し変えてくれる素敵な体験が待っています。
取材・文・写真:株式会社フリート