人類初の“ハルマキスト”

 

誰もが人生で一度は聞かれるであろう質問「死ぬ前に食べるとしたら、何を食べたい?」

 

僕の答えは“春巻き”だった。

 

「抱き枕にする最適な食べ物といえば?」

そう、春巻き。

 

「人生で一度だけ何かに巻かれるとしたら?」

もちろん、“春巻きの皮”と答えていた。昔は迷いもなく、そう答えていた。

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しかし、大人になるにつれ春巻きのことを考える時間は日に日に減っていき、せいぜい中華料理屋に行ったとき、メニューで春巻きがあったら一秒遅れて「食べようかな。」と思うぐらいに成り下がってしまった。

 

だが、2カ月前……、新橋を歩いているとき、中華料理屋さんのショーケースに飾られている“春巻き定食”というメニューを見て衝撃を受けたのだ。

 

「春巻き定食か。確かに、春巻きってごはんのおかずになるよな。子どもの頃、春巻きでごはんバクバク食べてたし」

 

なんだか大人になるにつれて、巻かれていた。春巻きにではなく「春巻きはサイドメニューだという世間の価値観」、そう、いわゆる長いものに。子どもの頃の「今日、春巻きなの? やったー!」という情熱を忘れていたのだ。

 

それは社会もそうで、今、周りを見渡しても、定食屋に春巻き定食は皆無。中華料理屋でさえあまり見かけることはない。ネットで検索しても、春巻きレシピ本は見つかるが、春巻きの名店を紹介した専門的な本はない。

 

なんだか、春巻きはあってもなくてもいい存在に押しやられている気がする。

現在、35歳でどこにも所属せず、フリーの職業をしている自分と重ねてみたら、切なくなってくると同時にとてつもない愛着が湧いてきた。

 

世間に押しやられている“春巻き”とボク……。このままではいけない! 絶対に!

春巻きってもっとごはんのおかずになる、メインストリームのおかずになるべき存在だと世の中にもっと訴えなければいけない。

 

 

というわけで、自称“ハルマキスト”のライター久松が、あらゆる“春巻き”の名店を探し出す本企画。その記念すべき第1店舗目は日本初(!?)の春巻き専門店「東京はるまき」だ。

都内にある唯一無二の春巻き専門店

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春巻き専門店「東京はるまき」新小岩本店

こちらは揚げ春巻きから生春巻きなどさまざまな種類があり、店内のショーケースはさすが専門店、“春巻き”だらけ。

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この眺めは春巻き好きでなくとも携帯の待ち受けにしたいぐらいほれぼれする絶景。そして、こんな絶景を作り出す揚げ春巻き、焼き春巻き、生春巻き、全ての春巻きの生みの親が、この方。「東京はるまき」店主の清宮さんだ。

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18歳から母親に教わりながら、手作りの春巻きを作っていたという強者。早速、清宮さんイチ押しの(店の看板メニューである)、東京はるまきをいただくことに。

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わぁ~!
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よしよし
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あむっ!

揚げたての春巻きをかみしめた瞬間、皮はカリッと、餡はジュワーととろけ出す

口の中ではバランスの取れた食材たちがはしゃいでいて楽しい。なかでも太麺のようなモチモチの春雨が「オレ、ここにいるよー?」というような無邪気さで語りかけてくる。まるで、女兄弟がいる末っ子男子のような無邪気さ。

 

全体のバランスはあっさりしていて余計な雑味がなく、毎日起きたてに一本は食べたくなる味だ。いや、起きたては言い過ぎだが、毎日食卓に並べたい味であることは確か。

 

清宮さんが、この絶品春巻きの誕生秘話を教えてくれた。

引き算から生まれた美味

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「“東京はるまき”の具は豚ひき肉、ニンジン、ニラ、シイタケ、春雨、モヤシの6種類です。雑味がないと感じるのは“タケノコ”をなくしたからじゃないですかね」

 

そう、この春巻きには定番の具である“タケノコ”が入っていないのだ。

 

僕はけっこう春巻きに“タケノコ”はあってほしい派、ていうか“タケノコ”が入っていない春巻きなんて、「春巻きじゃない!」と思うぐらい当然の存在だった。

 

春雨を女兄弟がいる無邪気な末っ子男子とするならば、タケノコは「あんた、もうあんな電車のつり革も握れないような女のことなんか忘れなさいよ。ほら、アップルパイごちそうしたげるから元気だしな。」と励ましてくれるハッキリした性格の長女的存在。

 

そんな魅力的なタケノコ姉さんがいないなんて……。

 

でも、意外となくてもいける。いけるのである!

 

実は、「東京はるまき」開店当初、タケノコは入っていて、春巻きの具は7種類だった。しかし、清宮さんいわく、「食感を失うことにはなるが、タケノコを入れると雑味やエグみがどうしても出てしまうので抜いた」とのこと。

 

具を抜くことがマイナスでなく、プラスになる。この思い切りには頭が下がる。春巻きには“タケノコ”という先入観が見事に覆された。

 

確かに、タケノコがあったら、国産だというこだわりの春雨もあれほど存在感を感じず、むしろ各々の食感と風味がぼやけていたかもしれない。

 

そして、この香ばしい皮は“春巻きの皮”専門店の物を使用。ちょっと塩っ気が付いていて、具としっかり絡む物を選びぬいたという。

食卓のおかずに春巻きが並ぶ日を夢見て……

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でも、なぜテイクアウトにしたのだろうか? お酒好きな僕としてはこの春巻きとビールで一杯行きたい衝動にかられるのだが……。

 

「僕がお酒を飲まないっていうのもあるんですが、やはり春巻きを食卓のおかずにしてもらいたいという気持ちがあったので、総菜屋というスタイルにしたんです」

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なるほど。

 

確かに、マンガなどでコロッケやとんかつが食卓のおかずとして描かれることはあるが、春巻きは見たことがない。もしかすると、清宮さんのこのアツい思いから生まれた惣菜屋スタイルの春巻き専門店から、マンガなどで春巻きが家庭の食卓の真ん中に置いてあるシーンが登場するかもしれない。

 

「ちなみに、今まで他の印象に残っている春巻きとかありましたか?」という質問に、しばらく考えた後、「僕は春巻きを見かければ、必ず食べるけど印象的な店はそれほど多くないんですよね。」と答えた。

 

今回の清宮さんへの取材で最も共感したことが、この回答だった。

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ホントにそうなのだ! 春巻き好きは意外に多くいるのだが、気合いを入れて春巻きを作っている飲食店は少ない。需要と供給が釣り合っていないのだ。だから、清宮さんも春巻き専門店を造るに至ったのだろう。

 

清宮さんのアツい思いに続くべく、この企画でも春巻き界のパイオニアになるしかない。

 

春巻きの名店探しには苦労するかもしれないが、全国のハルマキストの協力を得て、まずは東京で食べるべき伝説の10本を発見したい。

 

次回、乞うご期待あれ!

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春巻き専門店「東京はるまき」大島店

【メニュー紹介】

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東京はるまき(¥180)
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東京はるまきチーズ(¥210)
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ひき肉とニラの焼き春巻き(¥150)
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アスパラとベーコンの春巻き(¥210)
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東京はるまきエビ~プレミアム商品~(¥260)
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つぶあんと白玉だんごの春巻き(¥150)
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蒸し鶏と梅肉ソースの生春巻き(¥310)
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エビとアボカドの春巻き(¥310)
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冷しゃぶとキムチマヨネーズの生春巻き(¥310)
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スモークサーモンとアボカドの生春巻き(¥310)