新たな都市伝説、誕生

Tokyo
それはよく晴れたある日のこと

 

まことしやかにささやかれている都市伝説、皆さんもいくつかはきっとお聞きになったことがあるでしょう。有名どころでいえば、アポロ計画の陰謀説や、松本人志さんは政府の重要人物だとか、カラスは異次元に消えるとか。ちなみに私が10歳のときに生まれて初めて自分のお小遣いで買った本は「カラスの死骸はなぜ見あたらないのか」(矢追純一著)です。トンデモ―!

 

私がそのおそば屋さんを知ったのは、毎夜毎夜開催されているパーティーや食事会に必ずタグづけされるグルマン・パリピ(グルメなパーティーピーポー)のひと言がきっかけでした。

 

「ヘリでしか行けないそば屋って行ったことある?」

 

無論、その話題を出した当人でさえも未踏の地だということで、今となっては彼女がなぜその話を私にしたのかは藪の中。それでも彼女から聞くところによると、それはセレブ御用達のおそば屋さんで、エアロスミスのスティーヴン・タイラーやLADY GAGAもヘリで行ったという、世にも恐ろしい場所のようなのです。

 

それからというもの、私は「ヘリでしか行けないそば屋に行きたい。」という念に駆られていきました。そしてそのまだ見ぬ秘境への好奇心は日々増幅しながら垂れ流されることになりました。

 

“ノミの息も天に上がる”という古人の言葉をひたすら信じて、ヘリで行くおそば屋さん情報を四方八方で収集して歩いていました。

「ヘリでそばを食べに行きたいな~」

「ヘリそば行きたいな」

「ヘリに乗りたいな~」

「ヘリ乗りたいな~、肉食べたいな~」

「ヘリ乗りたいな~、酒飲みたいな~」

「ヘリ乗りたいな~、眠いな~帰りたいな~」

「ヘリでもう帰りたいな~」

へぎそばを食べながら「ヘリそば食べたいな~。」と、その純度の高い好奇心と底なしの食い意地、そして持ち前の厚顔さと図々しさで吹聴して生きておりました。

 

……。

 

東京って本当にすごいところですね。

 

自分のことノミだシラミだと思っていたけど、本当に天に通じるなんて……。

 

「あ、乗ってく?」

 

え? うそでしょ。高須院長?

 

いや、違うんです。そんなクリーミーな話じゃない。

 

高須院長ではなかったけど、いたんですよ。

 

その方は“ヘリでゴルフに行って、帰りにおそばを食べて帰る”というスケジュールらしいので、

 

できる人限定w

 

「ゴルフも一緒に、おいでよ」

 

ここでちょっと一言いいですか。一旦、ちょっと立ち止まりますね。あのう、説明を求められてもうまく説明ができないことってありますよね。

 

だから「宗教上の理由で(すまなそうな表情)。」と言っていれば、通常、人はそれ以上深追いして追及してきません。ゴルフが私にとってのそれに当たります。

 

今まで、いろんな人に聞かれてきたんです。

 

「ゴルフしないの?」

「いや、しないんです」

「もったいない~! 楽しいよ」

「いや、宗教上の理由でちょっと……(すまなそうな表情)」

 

すると、人はそれ以上追及してきません。やはり社交の場においては、宗教と政治の話は御法度ですからね。でもトランプ反対! カルタ、プリーズ!

 

とまあ、どうしてそこまでゴルフをしないのか。

 

しないのではなく、できないのです。もっと言うと、球的アクティビティーが笑えるほどできない。バレーボールではあの組み手をして見事にかする。バスケはドリブルが一回以上できない(つまり、はたくだけ)、テニスはタイミングが全く合わず空振り。

 

ビリヤードは玉に当たらない。ドッヂボールではボールを受け止めようとして受け止められず一番先に当てられて、万年外野プレーヤー。球技という球技が、無理なのです。動体視力ゼロ。ボール怖い。

 

でも、そばが食べたい(ヘリに乗りたい)。ヘリに乗りたい。空を鳥のように飛んでみたい! 飛行機よりも低い高度で街をつぶさに見つめたい!

 

 

……。

 

 

 

 

そこから私のゴルフ特訓が始まりました。来る日も来る日もドライバーと7番アイアンと3番ユーティリティーの3本だけを握り締め、明治神宮外苑のゴルフ練習場へ通う毎日。

 

そこで重要な課題にぶち当たりました。動体視力がゼロ、というよりも、止まっている球にも当たらない。スカる。カスる。ワザとじゃないのに、ワザと過ぎるほどスカる。せっかく頼んだコーチも困り顔です。「なんかヤベエの来ちまったな。」みたいな感情が彼の瞳の奥にそっと見えましたが、そこはさすがプロ。

 

ドライバーを振り上げたときにガブリと左腕をかむようなイメージを持ち、左手の肘を曲げない(頭を動かさないのがポイント)とか、左目で球を見る、などひとつひとつの課題(チェック)項目をじっくりあぶり出し、私はそれを身体に叩き込んで叩きつけて刻み込んで、地道に努力しま……。というかなんの記事なのかわからなくなってきましたね、ウフフ。

 

で、その間、12日間。

 

先ほどの会話をプレイバック。

 

「ゴルフも一緒に、おいでよ」

「え……と。私、ゴルフ宗教上のりゆ……」

「いつだったけな、えっと、あ、○日! (その日から12日後)だね」

 

12日間で仕上げなきゃいけない、なんて、心が折れる暇がなかったんですよ。

 

そしてその12日間で、なんと、ドライバーが2本折れました。「アイアン? ウッド? 適当にブレンドしてください」と間抜け面して訪れたばかりのお店に、「折れないドライバー下さい」とノコノコ再訪した世にも迷惑な客がこの私です(キエサレー)。

 

ここで以前取材させていただいた藤田寛之プロのひと言。

 

「ゴルフはいかに力を抜くか、がポイントですよね」

 

渾身の力を込めて、親の仇を討つように、振りまくっているんですね。力も抜けないし、チェック項目もなかなか……しょっぱい感じでしたが……、そして……、ついに、12日後ハズカム……。

 

 

なんだかもう前戯が長すぎて、疲れちゃいましたよね。ということで、写真ドゥーーーーーン!(興奮のあまり、行きは撮影し忘れたので、帰りのものが主です)

 

ヘリそばハズカム!

img_1696

私は子どものころから、ジオラマにときめきが止まらず、小さくなってジオラマの上を飛び回りたいと心底思っていたのですが、ついにその夢が叶いました。情景用クレイをこねていた昔の私にこの感動を伝えてあげたい。

 

東京ヘリポートから箱根までなんと1時間! ゴルフはスコアも付けられないほど惨憺たるもので、「ボールを持って走れ!」と叱咤叱咤(激励なし)されながらでしたが、飛ぶとうれしいし楽しいし天気も良かったです(ゴルフ78文字で終了)。

img_1976
今回のかませ犬会場。ごめんなさい

そしてそこから念願のヘリそば屋さんへ! いくつもの野を越え山を越え谷を越えると、千曲川(ちくまがわ)が見えてきました。

 

そして無事にヘリで到着したのが「菖蒲庵」です。

店内は広々。個室はふた部屋アリ
店内は広々。個室は2部屋アリ

 

奥の座敷に座れば、眺望はヘリ。畳とヘリ。タタミトヘリ。なんだかメメント・モリといわれているような気になってきますね。

 

この異次元感、不協和音、まるでカンディンスキーの絵画を観ているようです。いや、和の不毛感としては、作曲家・武満 徹の世界観でしょうか。ヘリでそばを食べに来るということは、武満 徹っているのではないか。こうして無事に武満 徹先生が動詞化したところで、今日のハイライト、そばです! そばです! そばです!

 

 

img_0908
「おしぼりそば」(¥1,030)

こちらが白樺辛味大根のおろしを搾った汁に、信州のこうじみそを混ぜながらいただく、という信州ならではのそば。私、そば好きを公言しておきながら、この“おしぼりそば”の存在は存じ上げておらず、無類の大根おろし汁好きとしてはですね、ようやく私の【汁人生】が始まったのかなと思う邂逅であります、合掌。

 

かつお節、ネギ、みそ、というマイ溺愛アイテムがフルスロットル装備なんて、興奮で打ち震えます。

「山菜ぶっかけ」(¥1,030)
「山菜ぶっかけ」(¥1,030)

そしてこちらは、ぬめり系の山菜たちがこれでもかとぶっ掛けられています。私はなんでも“トゥーマッチ好物☆美味しさ過剰状態”が好きなので「きのこおろし」(¥310)を追い茸。

 

写真右上、そばの実、くるみなどを西京みそで練って焼いた「そば焼きみそ」(¥510)をフライング勇み足でガッツリ食べ終わっているさまが見て取れますね。

 

「天ぷらせいろ」(¥1,750)
「天ぷらせいろ」(¥1,750)

何もかも無視して、いつもの「天ぷらせいろ」。ただ、ヘリが背景という画がおかしいだけ。

 

そばリエールとしましては、いつもの評価基準である「1,000円以下」、「無料・有料含めトッピングの豊富さ」、「冷たい十割そば」には当てはまらないものの、“劇場型そば屋”として深く胸に刻まれるそば屋となりました。

 

実際、私はそばを手繰る行為が好きなので、そばを“まずい”と思った記憶がほとんどないのです。ものすごくぬるくて伸び切っているか、くっつきまくっていて小麦粉の味しかしないというものでない限り、すべてのそばが好きなのです。なので、香りが!とか豊潤なうま味!みたいな話はそばについてはしない系(デキナイ派)。

 

冷たいツルツルしたものを喉に流し込みたい、その一点だけなので「そばでもビールでもいいのか。」、「オマエはそれで……、オマエは本当にそれだけで満足なのか……!」といわれれば「ははは、そうかもしれませんね。」とビールジョッキでそばを飲むような輩なのです。

 

そしてちなみに、今日の「菖蒲庵」は満席でした。満席?みんながヘリで押し寄せているのかな?と思いきや、完全に駐車場完備。全然車で行けるやつ。ヘリじゃなくても良かったやつ。

 

img_1715

 

ちなみにエアロスミスのスティーヴン・タイラーもLADY GAGAも来ていないそうです。完全な都市伝説でした。ということで、今日はこれからチャリに乗って「恵み屋」へ行ってきます。