「魚介には白ワイン」という定説を覆す提案も、オーナーソムリエの話を聞けば納得の組み合わせ

〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、ユーモア溢れる楽曲で数々のヒットを飛ばしてきたシンガーソングライターの嘉門タツオさんが「月に1回以上は足を運ぶ」というワインバーを紹介!

教えてくれる人

嘉門タツオ
1959年3月25日大阪府茨木市生まれ。1983年「ヤンキーの兄ちゃんのうた」でデビュー。「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」「小市民」「鼻から牛乳」「替え唄メドレーシリーズ」「アホが見るブタのケツ」などヒット曲多数。CDリリース、ライブ、TV・ラジオ出演、執筆、SNS発信と幅広く活躍中。

ソムリエ界の重鎮ながら軽妙なトークでワインの魅力を伝授

白を基調とした洗練された空間が広がる店内

大阪を代表する繁華街・心斎橋のど真ん中のビルの3階にある「ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭」。ワイン好きで知られる嘉門さんだけに、以前からこちらのオーナーソムリエとは親交があり、お店にも足繁く通っていたという。

「オーナーソムリエの樋口誠さんは、日本ソムリエ協会の元副会長。私と同じ歳ということもあって親しくしていると、私をソムリエ・ドヌール(名誉ソムリエ)に推薦してくださいました」

大きく分厚いステンレス製の扉が印象的な入り口

現在も同協会の監事を務める樋口さんは「2019年、厚生労働省による卓越した技能者(現代の名工)に選ばれた時、嘉門さんが私へのオリジナルソングを作ってくれたのですよ」と二人の関係性が分かるエピソードを語る。一方で嘉門さんは「樋口さんの流ちょうな説明はユーモアたっぷりでファンも多いで!」と樋口さんを評する。

樋口さんは日本を代表するソムリエでありながら、時にジョークを飛ばし笑いも誘う

お店を始めたのは2008年。2018年には現店舗に移転したものの、コロナ禍により営業スタイルを再考する必要があった。以前はアラカルトでメニュー提供していたが、現在はコースのみを基本に、若干のアラカルトを揃えたスタイルとなっている。

食べログ点数は3.06。3年前に移転したばかりというのが原因なのかもしれない。今回は嘉門さん絶賛のワインとコースで提供される料理の一例を紹介して、その魅力に迫りたい。

※点数は2022年5月時点のものです。

定説に囚われず、本当の相性の良さで楽しませる提案を

季節に応じた旬の素材で提供される魚料理。この日は「鰹魚醤漬けハーブとナッツを添えて」

現在は12,000円のコースのみでの提供だが、内容を聞けばこのコースが非常にお得なことに気付く。アミューズ1品、料理5品、デザート1品になんとグラスワインが6杯付いてくるというのだから驚きだ。もちろんそれぞれの料理に合わせたワインを提供してくれる。

その料理の中で嘉門さんがイチオシするのが魚料理。季節に応じた魚が登場するため今回は「鰹魚醤漬けハーブとナッツを添えて」を味わうことにしよう。

しっかりと魚醤の下味が付いた鰹はもっちりとして旨みも濃く、さらにナッツの香ばしさも楽しい

ここで樋口さんが取り出したのが、なんと赤ワインの「クローズ・エルミタージュ」。ワインをかじった人なら「魚介には白ワイン」と言いたくなるところだが、樋口さんは違う。「若々しくスパイシーなこの赤ワインが、鉄分の多い鰹の生臭さをマスクし、逆に旨みを引き立てるのです」

 

嘉門さん

時期によって鯖やサンマが登場します。魚には白ワインと思っていましたが、樋口さんが提案する赤ワインがぴったりだということに驚きました! ワインとの口腔内調理を楽しんで!

樋口さんの説明を聞けば赤ワインとの相性の良さにも納得

実際に味わってみると、確かに樋口さんの言うとおり。赤ワインが鰹にこれほどフィットするとは!「本当の相性の良さを実際に体験してもらうと、定説がいかにデタラメかということが分かるはずです」と言う樋口さんの言葉に納得してしまう。