【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#43】「カレー&オリエンタルバル 桃の実」

日本一のカレー激戦区、東京・神保町。数々の名店がひしめきあうエリアなのですが、2021年はさらなる名店がいくつかこの地で誕生しました。その中のひとつ「カレー&オリエンタルバル 桃の実」は、住所で言えば神田小川町に10月に開店。神保町駅からも徒歩5分圏内の場所です。こちらは本郷三丁目にあった本店と、水道橋にあった姉妹店が統合して、神保町エリアに移転してきたという形。

本店の本郷店は南インド・ケララのリゾートホテルのレストランのような、南インド料理がベースでありながら観光客を楽しませるべく生まれた独自の料理を展開するビストロであり、水道橋店はインドカレーをベースにしつつ日本人が好むカレーライスのスタイルに寄せて進化させたカレーライスがメインのバルでした。

つまり同じ店名でありながらもメニューの内容は違っていたわけです。それが統合移転して、どちらの料理も味わえるということになりました。開店からしばらくは水道橋店スタイルのカレーライスをメインに営業していたのですが、遂に待望の夜営業もスタート。夜は本郷店スタイルの料理かと思いきや、それを含めつつもまた違う進化を見せていました。

実は移転にあたって厨房にはタンドールが入り、インド現地で腕を振るっていた外国人シェフも招聘していたのです。だからこその新メニューの数々です。

新「桃の実」をじっくり味わうなら「桃の実ディナーセット」4,180円がおすすめ。前菜盛り、タンドール料理、カレーという組み立てのプチコース。

前菜盛りはパニプリ(インドの定番料理で、サクサクのプリに酸味のあるソースを入れて食べるスナック)、ダヒベイガン(ダヒはヨーグルト、ベイガンは茄子)、フルーツトマトのラッサムマリネ(ラッサムとは南インドの酸っぱ辛いスープ)、フレッシュマッシュルームとコリアンダーのサラダの4品盛り合わせでした。

「前菜盛り」

構成する味の要素としては酸味と苦味が根幹にあるのですが、それでいてどれも食べやすいというのが桃の実の凄さ。インド料理の奥深い世界の扉を開くような感覚にさせてくれる前菜です。

続いてタンドール料理。こちらはいくつかある中からひとつ選べるのですが、今回は「ハリヤリチキンティッカ」をセレクト。

「ハリヤリチキンティッカ」

わかりやすく言えばほうれん草ソースの骨なしタンドリーチキンです。これがまた凄かった! まずはそのまま食べてみると、あえての皮付きチキン。インドでは皮を取ってしまうことが多いのですが、こちらは皮付きだからこそパリッとした食感が生まれています。

チキンがまとうほうれん草ソースのおいしさはもちろんなのですが、写真左上の白とピンクの可愛らしい添え物。これに驚きました。柚子胡椒のチャトニなのです。インドには無いもので、桃の実オリジナル。ハリヤリチキンのおいしさをさらに跳ね上げさせる絶妙な薬味となっていました。このあたりのセンスは本郷店を思い出させます。

「マトンコルマ」と「ロティ」

カレーと合わせる主食も選べます。マトンコルマにロティを合わせて注文しました。マトンコルマは濃厚で贅沢な味わいのマトンカレーですが、ヨーグルトのコクと爽やかな酸味が隠し味となり、口当たりはむしろ軽やかで上品。ロティは全粒粉のパン。こちらも粉の良い香りが立っており、ふんわりとした食感で日本人にも食べやすい仕上がり。カレーとの相性も抜群です。

このカレーは今までの桃の実には無かったスタイルであり、かつインド現地の味ともまた少し違う着地点となっており、新たに招聘したインド料理シェフと、桃の実のシェフが手を組んだことによって生まれた進化系インドカレーと言えるでしょう。素晴らしい!

「ラスマライ」

デザートに「ラスマライ」660円も。ラスマライとは、パニールというインドのカッテージチーズと甘いミルクを合わせたもの。インドスイーツの中でも特に日本人受けすると言えるもので、それをさらに桃の実らしくゴージャスにしたスタイルで満足度の高いデザートでした。ちなみに今までの桃の実にあった「ヴァタラッパン」も引き続きメニューにあるので、ファンの方はご安心ください。

「マトンカレーセット」1,330円

ランチタイムはカレーのメニューがガラッと変わります。インドスタイルをベースとしながらも手間暇かけまくったオリジナルの「チキンカレー」880円(単品)は、+150円で豆カレーとピクルスが付く「カレーセット」にするのがおすすめです。

カレーの量はやや少なめで、サラダが付く「サラダ&ミニカレーセット」(料金は各カレーと同じ)という新たなメニューも加わり、楽しみ方も増えました。

キーマカレーの「サラダ&ミニカレーセット」

チキンがおすすめと言いつつ、僕が一番好きなのはマトンだったりします。でもキーマも捨てがたい。つまりはすべてが個性ある絶品カレーなのです。そして以前本郷店のランチで楽しめたビリヤニを食べたいという方はディナーメニューにあるのでご心配なく!

新店舗は明るくて爽やかな内装ということもあり、女性一人でも入りやすいお店です。気軽にランチカレーを楽しむも良し、ちょっと豪華にディナーを楽しむも良し。ディナーメニューに関してはさらに色々な料理を楽しめるように計画中とのことで、今後にますます期待が高まります。

激戦区神保町エリアの新店舗でありながら、既にトップクラスの名店と言って差し支えないでしょう。クリスマスのディナーにハリヤリチキンを選んだディナーセット。めちゃめちゃおすすめですよ!

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2021年12月20日)時点の情報をもとに作成しています。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/