総工費2億3000万円!? 勢いに乗る焼肉店は、生肉にも脂がのっていた!

幼いころ牛肉は特別なごちそうだった。焼肉ともなれば、特に。「牛肉に恋い焦がれていた」という方も多いのではないだろうか? 大人になってからは、その気になればいつでも手が届く存在となった。長年連れ添ったパートナーのように。しかし、思い出してほしい。9年前の規制強化によって、手が届きにくい存在となった生肉のことを。

生肉寿司2種(「牛赤身握り」2貫1,078円、「牛トロ握り」2貫1,408円)

ここ数年ブームが続いている肉寿司も、都内ではバーナーなどで軽く炙ったものがほとんど。それもそのはず、生肉を提供するためには厳格な規格基準に則らねばならず、コストの面から実現が難しいのだ。生食用の牛肉を扱う専門業者から仕入れるのはもちろん、店舗内においても生食用の調理スペースを別途設けなければならない。調理器具なども全て衛生管理を徹底した専用のものが必要だ。

店内の壁に掲げられた書からも勢いを感じる

そんな生肉提供の設備を整え、累積総工費2億3000万円をかけて誕生したのが「牛恋 渋谷店」。神田、新宿、中目黒、恵比寿、五反田など、都内を中心に勢力を広げる人気焼肉グループの旗艦店だ。渋谷駅からわずか徒歩1分と好立地にあり、しかも100席という規模。テーブルの間隔も十分な広さが確保され、感染症対策をかねた高性能の換気システムも揃える。プライベート感のあるソファ席、一人焼肉向けのテーブルまで完備。「毎日食べれる焼肉」のコンセプト通り、幅広いシーンでの利用が想定されているようだ。

生肉だけじゃない! 普段使いから記念日まで多彩なメニューを用意

リブロースを使用した牛トロ握り

この日、生肉に使用されていたのは、温暖な気候でのびのびと育てられた薩摩牛。牛トロは、その名の通りトロけるような口当たり。美しい霜降り肉であるが、しつこさはまるでない。甘ダレしょうゆ、山葵、シソの実でさっぱりといただける。試行錯誤を重ねたというシャリは、一般的な寿司に比べモチモチとした食感。リンゴ酢などを加えたオリジナルブレンド酢の穏やかな酸味も相まって、一体感のある握りになっている。

「恋ユッケ」1,518円

渋谷の旗艦店限定となる生肉のなかでも、印象的だったのが「恋ユッケ」。ハート形に盛り付けられた愛らしい見た目は、食べるのがもったいないと思えるほど。ロースやモモ肉などが店内の専用ミートチョッパーで絶妙な細長さに切り分けられており、ほんの切れ端を食べただけでも確かな肉感を楽しめる。ベースの塩ダレだけでも大満足だが、レモン、カイワレ大根、韓国海苔などで味変をしても良いだろう。

赤身刺しでネギとシソの実を巻き、甘ダレしょうゆをつけ贅沢にいただく

「肉のアミューズメントパーク」と自称するだけあり、調理法や付け合わせは多彩。寿司、刺身、ユッケと、生肉の魅力を余すところなく堪能できた。ちなみに生肉は渋谷店のみの提供だが、軽く炙った牛肉であれば全店共通で味わえる。

「炙りロース」638円。特製タマゴダレ、ライスボール付き

「炙りロース」はリブロースの中心部分、きめ細かな肉質が特徴のリブ芯を使用。裏表を軽く炙るように焼けば、和牛特有の香ばしさが立ち上がる。生肉を満喫した後だからこそ、より強く実感できるのかもしれないが、やはり炙った牛肉も格別だ。うっすらと肉汁をまとっており、生肉よりもダイレクトに旨味が口の中に広がる。

セットで付く薬味や黄身に絡め、ライスボールを巻いて召し上がれ

ほかにも「赤身のカリスマ」といった異名を持つ牛恋。低カロリー、高タンパクを売りにした「ピースビーフ」も人気メニューだ。

写真手前「ピースビーフ」858円、奥「ネギンチュ」528円

ピリ辛のネギンチュを巻いて、ゴマ油に絡めてからいただくのが定番。霜降り肉を散々いただいた後に味わうと、なんだか心が温まる牧歌的なおいしさが、身に染み入る。のどかな南国の風景が目の前に広がるような……たしかに平和的な気持ちに浸れる、ピースビーフというネーミングセンスにも脱帽だ。

渋谷店はランチでも、ここでしか味わえない限定メニューが登場!

「『極』牛トロ丼セット」2,500円。サラダ、スープ付き

渋谷店は旗艦店だけあり、限定ランチメニューにも力を入れている。ちょっと贅沢をするなら、たっぷりと牛トロを使用した丼セットがおすすめ。ただでさえ牛の旨味が凝縮された味わいだが、卵黄を崩せばより濃厚に。意外とマグロのネギトロ丼よりさっぱりとしており、それでいて旨味が強いのが面白い。

「牛タンチーズメンチセット」1,200円(平日なら1,000円) 写真:お店から

コストパフォーマンスに優れているのが「牛タンチーズメンチセット」。カリッと揚げられた衣の中には、適度なサイズの牛タンがたっぷり。サクサクとした特有の歯切れの良さがたまらない。ひき肉のつなぎは最低限で、95%は牛タンという豪快さ。中心部はもっちり伸びるモッツァレラチーズ入り。味付けは特製ソース、おろしポン酢、サルサソースから選べるという、これだけで「肉のアミューズメントパーク」を体現するような一皿だ。

久々に食べた生肉も最高だが、焼いても、炙っても、揚げても、やはり牛肉はおいしい! 牛恋に訪れたおかげで、身近にありすぎて忘れかけていた牛肉への恋心が、もう一度燃え上がるかのようだ。ふと、店のトングに刻まれていた文字が目に入る。「牛(ぎゅう)っとして…。恋ノ輔」この言葉の意味は理解しきれないが、牛肉を抱きしめたくなるほど、胸が熱くなるのだった。

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※本記事は公開日(2021年11月25日)時点の情報をもとに作成しています。

文・写真:佐藤潮