【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレー】2021年1月を振り返る

今回の緊急事態宣言は飲食店のダメージが大きいといわれていますが、そんな苦境の中でも頑張っているお店を応援したいと思っています。今月のカレーは、年末にオープンしたものの、すぐに緊急事態宣言に突入してしまったお店。協力金が少ないといわれる食材の生産者のために、テイクアウト営業に切り替えて営業しているお店。テイクアウトメニューを充実させ、おうちで家族と食べる食事の楽しさを考え、提示しているお店。間借りという特殊な業態のために協力金が得られるかわからない中、奮闘しているお店。そんな4店舗です。

もちろんすべておいしいお店であることはいつも通りなのですが、この時期だからこそ色々と考えさせられることが多いです。様々な工夫で乗り越えようとするお店の姿からは、おいしさのみならず得るものが多いと感じています。

【第1週のカレー】東京にカレー新派到来! 大阪から創作カレーの実力店がやってきた「Japanese Spice Curry wacca」

外出自粛によるテイクアウト需要、冷凍カレーやレトルトカレーの増加と充実、自宅でスパイスを調合してカレーを作る人の急増など、総合的に考えるとカレーの需要がますます高まった2020年。飲食店は厳しい状況が続いていますが、プロの作るおいしいカレーを食べてこそ、先述したカレーに対する理解と楽しさが深まると思います。そんな、飲食店にとっては苦難だった昨年末に大注目のお店がオープンしました。

スパイスカレー流行の発信地とも言える大阪において、カレーマニアやメディアでも高い評価を得た大阪・関目「wacca」が、東京・八丁堀に「Japanese Spice Curry wacca」(ジャパニーズ スパイス カリー ワッカ)として移転してきたのです!

元々大阪ではイタリアンのお店として人気だったwacca。曜日限定で出す創作カレーの突出した個性と確かなおいしさで人気となっていたのですが、大阪時代は「うちはカレー屋じゃないんで」と遠慮気味に語っていたのが印象的でした。そんなwaccaが「Curry」の文字を店名に冠してやってきたということは、腹を決めてカレーで勝負するんだという意気込みも感じてワクワクします。

ランチはカレーライス、夜はカレーとスパイス料理をアテにしてお酒を飲むお店というスタイル。店内は広くて清潔感があり、様々なニーズに対応できそうです。検温や消毒、パーテーションもしっかりと設置してあって感染対策も入念でした。

ランチメニューは日替わりなのですが、僕が食べたのは、「大阪出汁カレー 鯖節伊吹いりこ追い鰹と赤鶏キーマ」1,200円に、「鬼辛和牛のマルチョウデビル」300円をトッピングしたもの。

「大阪出汁カレー 鯖節伊吹いりこ追い鰹と赤鶏キーマ」に、「鬼辛和牛のマルチョウデビル」をトッピング

店名にもスパイスカレーという言葉が入っているのですが、スパイスカレーとはスパイスが利いたカレーのことではなく、カレールウを使用せずスパイスを合わせて作ったカレーのことであり、waccaのカレーもスパイスが利いたカレーというよりはだしの旨味がスパイスで引き立てられた出汁カレーであり、出汁カレーは大阪の大きな潮流のひとつなのです。

品名にもある通り、とにかくだしにこだわったカレー。そしてそのこだわりはだしのみならず、細部に渡っています。赤鶏を使用したキーマは出汁カレーのグレイビーと挽肉が混ざり合ったものと、そぼろのようにドライな状態でそのままご飯にのったものの二種類あることによって、その食感や風味のグラデーションを楽しめるという趣向。

ミニカップで付いてくる「下克上ダール」は、通常主役を張るはずのフォアグラをだしとして使用し、通常は脇役であることの多い豆を主役にした主従逆転のダール。通常ダールはカレーとあいがけにして混ぜながら食べることが多いのですが、あえてミニカップで別盛りなのは、そのコンセプトのしっかりしたダールの風味をしっかりと味わってほしいからこそ。混ぜるのがもったいない主役級のダールなのです。

トッピングしたマルチョウデビルもまた素晴らしい。マルチョウのようないわゆるホルモンを使用するのが大阪的ですし、スリランカ料理のデビルをもとにしつつも、単体でカレーとして成立するような仕上げであり、しっかりとした辛さがあるからこそ甘味とうま味の凝縮した出汁カレーに無い部分を完全に補い、すべてのおいしさが一皿で完成するというもの。凄い。とにかく凄いです。

「イクラとマサラ酒盗のムラコアチャール風いぶりがっこ」

昼も凄いのですが夜はまたさらに凄いです。「おまかせコース」3,900円で出てきたものから一部抜粋します。「イクラとマサラ酒盗のムラコアチャール風いぶりがっこ」は和の食材をインド亜大陸のスパイス使いと調理法でおいしさを引き上げる、waccaの真骨頂。

「前菜盛り合わせ」

前菜盛り合わせは、炙りサンマのボッタ、無水チキン、キャベツのポリヤルの3品。ボッタはバングラデシュ料理であり、無水チキンはパキスタンカレーを源流とするものであり、ポリヤルは南インド料理です。インドのみならずその周辺諸国の料理も取り入れて行く貪欲なスタイルがたまりません。

「ラムコフタ」

そしてそして、大注目なのが「ラムコフタ」です。コフタというのはインド料理の肉団子のこと。しかしこれ、どう見てもハンバーグですよね。大阪時代のwaccaの名物料理でもあったハンバーグを進化させたものなのですが、あえてコフタと呼ぶあたりにもやはりカレーやスパイス料理に対する気持ちが感じられてうれしくなります。とにかくジューシーと言いますか、ジューシーを超えたジューシーなので、カレー好きのみならずハンバーグ好きにも是非食べてほしい逸品です。

ほかにも凄い部分はいくらでもあるのですが、文字数の都合もありますからこの辺で。後はご自分で食べに行ってその凄さとおいしさを体感してください。大阪カレーの「今」を東京にわかりやすく提示するために再構築された料理の数々。大阪カレーを知る人には大きな満足を、知らない人には驚きを与えてくれることでしょう。2021年の東京カレーのひとつの潮流を担うお店になることは間違いありません!

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年1月4日)時点の情報をもとに作成しています。